2024年 5月 6日 (月)

多国籍企業の税の抜け穴は本当に塞げるのか アマゾンの「倉庫」も収益で課税される?

「節税で株主利益」の時代は過去に

   紛争処理では、本国と進出国の二重課税をめぐって国と企業が10年以上裁判などで争う例も少なくないが、今回、最長2年程度で問題を解決するルールを確認したことで、無駄な時間とコストかける必要がなくなる。

   さらに、多国籍企業に、進出先の国ごとの経済活動や納税計画を、各税務当局に提出することを義務づけることも盛り込んだ。

   これまで多国籍企業への課税は、各国の徴税権が尊重され、争いが生じた場合は2国間で協議することが多かった。今回の新ルールに強制力はなく、各国が今後どこまで税制を見直すかは未知数で、OECDに加盟していないタックスヘイブンはルールの対象外のため、抜け穴を完全に塞げるわけでもない。

   しかし、中国、インド、ブラジルなど新興8か国を含む統一ルールの策定は「画期的」(国税当局者)といえ、企業への影響は大きそうだ。

   例えば、英ボーダフォンは「英国政府に3億5500万ポンドの直接税を払った」という詳細な納税情報をネット上で開示。ネスレやカールスバーグなども毎年の納税額を公表しているほか、英石油大手BPは今後、国別の納税額も明らかにする方針と伝えられる。「節税を含め、利益を最大化して株主に還元する、という欧米企業も変わり始めた」(経済産業省関係者)というわけだ。

   日本企業の多くは、海外展開していても節税に積極的ではなかったとされ、国際ルールの統一は、「競争上の不利が減り、経営にプラスになりうる」(同)。ただし、海外子会社の情報を税務当局に報告することが義務付けられるなど、文書作成の事務負担が重くなることに不安を持つ企業もあるという。

   ただ、新ルールには加わる中国など新興国では、「グローバルスタンダードからかけ離れた独自の課税をされることがある」(同)という現状が、一朝一夕で改まるはずはないとみられている。

   各国がどれだけ足並みをそろえて税制を見直すか、今後も監視が必要で、OECDによる各国の制度整備の点検が重要になりそうだ。

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