2024年 4月 26日 (金)

「こどもの日」に「貧困」が社説の共通テーマになる日本 新聞から消えた「のんびり」論調

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   「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」(祝日法2条)。「こどもの日」は端午の節句の昔から、子どもの健やかな成長を願う日だ。

   この日を、新聞各紙は毎年、社説で必ず取り上げるが、2016年5月5日は、日本が現在抱える大きな課題を認識させることになった。全国紙各紙がほぼ共通して「子どもの貧困」を取り上げたのだ。

  • 2016年の「こどもの日」の社説は例年よりも切迫感が増した(写真はイメージ)
    2016年の「こどもの日」の社説は例年よりも切迫感が増した(写真はイメージ)
  • 2016年の「こどもの日」の社説は例年よりも切迫感が増した(写真はイメージ)

日本の子どもは6人に1人が貧困層

   基礎データとして確認しておくと、4月に国連児童基金(ユニセフ)が公表した報告書によると、経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)に加盟する41カ国で、0~17歳の子どものいる世帯について分析したところ、日本は所得が下から10%の最貧困層の所得が中央値(標準的な層)の39.8%にとどまり、41カ国の中で8番目に格差が大きく、学習到達度における同様の比較でも、OECD加盟37カ国中で下から11番目という結果になっている。所得が中央値の半分に満たない割合を示す「相対的貧困率」でも、日本の子どもは6人に1人が貧困層にあたり、先進国の中でも最低のグループにいる。

   こうした事実を踏まえて、「朝日」は「生活の苦しい家庭で育った子が、大きくなってもその状態から抜け出せず、世代を超えて続いてしまう『貧困の連鎖』をどう断ち切るか」がポイントとして、「カギとなるのは教育だ」と指摘。「教育分野では、経済規模と比べた公的支出が先進諸国の中で最低水準にとどまる。予算を思い切って増やすべきだ」と訴える。

   これに対し、「読売」は「子供は、成長しようとするパワーに満ちている」と、子どもの持つ可能性をいかに伸ばすかを論じたうえで、「夢を持ちにくい環境で育つ子供たちからも、目を背けてはならない」と、子どもを取り巻く課題に話を進めるが、「政府も、子供の貧困と児童虐待の対策強化プランをまとめた......改正児童扶養手当法が成立した。その他の施策についても、着実な実施が求められる」と、政府への注文より施策の着実な実行を求めているのが目立つ。

   「毎日」と「産経」は、虐待など、より深刻な状況に光を当てる。

   「毎日」は「親から虐待されている子、生活苦で子の養育ができない親たち......。貧困だけでなくアルコール依存や障害などさまざまな要因が複雑に絡み合って、子供たちを傷つけている」など「複合的困窮」を取り上げ、特に18歳で児童福祉法の適用年齢を超すと、児童養護施設や障害児入所施設が利用できなくなって寝るところ、食べるものにさえ困る子どもが少なくないなど、「自己責任を求めて解決できる状況ではない」として、「子供の困窮対策は国政の最優先課題に位置づけるべきである。財源や人材を確保し、福祉や教育の支援を厚くしないといけない」と説く。

   「産経」は「主張」で、虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子供が全国で年間約350人と、厚生労働省集計の数倍に上るとの日本小児科学会の推計を示し、「児童相談所などがもう一歩踏み込んでいたら助かった命もあったろうにと思われる例も目につくだけに、輝きを失い、救いを求めている子供を見つけ出す周囲のまなざしが欠かせない」と、行政への注文より社会の関心を高める必要を訴えている。

   経済紙の「日経」は、「若者や子どもがしっかりと教育を受け、定職に就く。かつては当たり前だったこのことが、難しくなっている世界の現実」を取り上げている。世界の15~24歳の若年層の失業率13%超、ギリシャやスペインの25歳未満の失業率40%超、中東・北アフリカ地域の若年失業率20~40%台、全米で約4千万人の学生と卒業生が抱える借金総額1兆ドル超など、世界全体の現状を踏まえ、「各国・地域の政治指導者は勇気を持って、若者受難の局面を変えてほしい」と訴える。少子化が進む日本については「社会保障の歳出を組み替え、子ども・子育て支援にもっと予算を振り向けるべきだ」としている。

「生まれ育った環境によって左右されることのないよう...」

   1年前の2015年5月5日の社説と比べると、「朝日」が「子どもの貧困――大人一人ひとりが動こう」と題し、子どもの貧困率が6人に1人といった数字を示し、政府の対応の不十分さや「支える連鎖」の必要を指摘しているだけで、他の主要4紙は、静岡市の山間部の寺で子どもたちが2泊3日を過ごす「修養会」を紹介(「毎日」)▽困難を抱える子供の学習や食事を支援するボランティア団体など地域の「おせっかい」の勧め(「読売」)▽子供の声を「騒音」と捉えるかのごとき風潮を嘆き、大人が知恵を絞るよう求める(「産経」)▽社会全体で子育てを支え、子どもが健やかに成長する環境を整えたい(「日経」)など、今年に比べれば、ややのんびりした内容だっただけに、今年の各紙社説の切迫感が際立つ。

   2014年に施行された子どもの貧困対策法を受け、政府は「子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図る」と謳った大綱を閣議決定した。この理念の実現に、この1年で少しでも近づいた、とはとても言えないようだ。

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