2024年 4月 27日 (土)

「18歳選挙権」を聞く(上)【参院選2016】
若者は投票に「不安」感じている
学生団体ivote東京代表・桑原稜さん

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   2016年夏の参院選は6月22日公示される。20歳から18歳へと、70年ぶりとなる選挙権年齢の引き下げを、「当事者」の若者たちはどう見ているのか。議員のソーシャルメディア活用など「ネット選挙」解禁から3年も経った。こうした変化は、若者の投票行動にどんな影響を与えるのか。全3回の連続インタビュー(随時掲載)で考える。

   初回は、若者と政治を近づける活動を行う学生団体「ivote東京」代表の桑原稜さん(22)に、18歳選挙権に向けた取り組みや有権者の「生の声」について聞いた。

  • 「若者と政治を近づける」ために活動するivote東京代表の桑原稜さん
    「若者と政治を近づける」ために活動するivote東京代表の桑原稜さん
  • 「若者と政治を近づける」ために活動するivote東京代表の桑原稜さん

高校の校内放送で選挙について呼びかける

――まず、ivoteの活動コンセプトについておうかがいします。

桑原: 基本的には「若い人と政治を近づける」活動をしています。最終的には、若者が日常的に政治の話ができる環境を作ることが目標です。そのために、政治や社会問題に興味を持つ入り口の1つとして、投票という手段を若者へ呼び掛けています。 具体的には、国会議員と大学生が居酒屋で語り合う「居酒屋ivote」と、参加者を女性に限定した「女子会ivote」を定期的に開催しています。また、小中学校や高校と連携し、授業の時間を頂いて模擬選挙を実施しています。対象となる学年にとって身近な話題から争点を決めたり、候補者の演説後にグループワークを行ったりするなど、形だけで終わらないように努めています。

――2016年6月19日に施行された改正公職選挙法で、選挙権は「18歳以上」に引き下げられました。選挙権年齢の引き下げ後初となる参院選を前に、ivoteの活動方針に何か変化は出ているのでしょうか。

桑原: 今回の選挙前に行う啓発運動では、なるべく高校生、とくに新たな有権者を含む高校3年生に焦点を当てていきたいとは考えています。具体的には、高校の放送部と協力して、校内放送で選挙について呼びかける企画を新たに実施します。なかなか模擬選挙のように授業時間を頂ける学校は少ないですが、放送ならば昼休みなどの時間で啓発することができます。第1弾として、6月21日と22日に都内のある高校で放送を行う予定です。

メディアが騒いでいるほど、関心を持っている若者は多くない

――選挙権年齢の引き下げで、選挙や政治活動が変わると思いますか。

桑原: 選挙の結果が大きく変化するとは思いません。ですが、選挙権が引き下げられることによって、若者の感性に合った政策への関心が高まることに期待しています。例えば、夫婦別姓や性的少数者(LGBT)の問題などが当てはまるでしょうか。

――ivoteの活動では、大学生や高校生といった世代と関わる機会が多いと思います。「18歳選挙権」当事者の18~19歳の世代からは、どんな声が聞かれますか。

桑原: 「望んでもないのに(選挙権年齢を)下げられて困っている」という声が1つ。また、18歳に限らず「分かっていない自分が投票していいのか」という声もよく聞かれます。あと、メディアが騒いでいるほど、「18歳選挙権」に関心を持っている若者は多くありませんよ。「行かなきゃいけないんだろうな」くらいの考え方がメインじゃないでしょうか。「投票に行きなさい」「あなたの一票が変える」といった呼びかけを受けて、「怖い」と感じてしまう若者も多いようです。投票を大きいイベントと捉え過ぎているのか、票を投じることに対して「不安」だという訴えはよく耳にします。

――そうした若者に対し、ivoteではどのように投票を啓発しているのでしょうか。

桑原:まず、投票には「行かなくてもいいです」と伝えています。その上で、行かなかった場合は「自分に不利な政策が決まってしまうかもしれない」とも伝えます。つまり、投票は義務ではなく「権利」だと強調するんです。私達としても、あくまで自分の意思で投票に行ってもらいたいと思っていますから。

「SEALDs」の登場が「若者の政治参加」に与えた影響

――国政選挙としては3度目のネット選挙を迎え、SNSなどで発信する政党や候補者も増えました。こうした動きが、若い有権者にどのような影響を与えていると感じますか。

桑原: ネット選挙の影響で、私たちが入手できる情報量は一気に増えました。一方で、多くの政党が様々な政策について発信しているので、情報の取捨選択は確実に難しくなりましたね。また、18歳未満はSNSで選挙情報を「拡散」することが公職選挙法で禁止されています。そうした点は高校の授業などでもよく注意されるので、学生はSNSで選挙について調べることを「敬遠している」とも聞きます。

――ネット選挙の影響で「情報の取捨選択が難しくなる」という点、何かアドバイスしていることはありますか。

桑原: 若者に対しては、安保法案など「自分に遠くて内容も難しい政策」について考え過ぎることはあまり勧めていません。それよりも、「アルバイトの時給が上がるのはどの政党だろう」「就職しやすくなるのはどこだろう」などと、自分に関係のある部分だけで比較するのも「立派な投票」だと伝えています。

――最後になりますが、15年夏に安保法案に反対するデモを続けた学生団体「SEALDs(シールズ)」など、デモという形で政治に参加する若者が注目を集めました。こうした動きが、ivoteの活動に何か影響を与えたと感じたことはありますか。

桑原: 「SEALDs」のような団体が登場したことで、政治自体に関する関心が高まったのは確かだと思います。ですが、「政治系の団体は危ない」という印象を持つ人が増えたとも感じます。実際、ivoteの入会者が目に見えて少なくなった時期もありました。ですが、あくまでivoteは不偏不党、中立な運営をモットーにしています。「SEALDs」の登場を受けて、私達としても「デモじゃない政治参加」を強く訴えるようになりましたね。



桑原稜さん プロフィール
くわはら・りょう 兵庫県生まれ。学習院大学経済学部在籍。高校時代に「アジアの民主化」について世界史教師から学び、選挙や投票率の問題に興味を持つ。ivote東京の活動には学習院に入学する前から参加しており、15年春から代表を務める。

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