2018年 8月 16日 (木)

【男と女の相談室】「ただの疲れ」と甘くみると寝たきりに 慢性疲労症候群は心の病気ではない

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   「休日にたっぷり寝ても疲れが抜けない」「もうグッタリ、何もする気になれない」......。原因不明の疲れが長期間続くことはないだろうか。ただの疲れとあなどってはいけない。「慢性疲労症候群」(CFS)と呼ばれる恐ろしい病気の心配がある。

   ストレスからくる「心の病気」と思われてきたが、脳ではなく腸に問題があることがわかった。米コーネル大学のチームが、腸内細菌の異常に原因があることを突きとめ、微生物学誌「マイクロバイオーム」(電子版)の2016年6月27日号に発表した。

  • ただの疲れと甘くみないで
    ただの疲れと甘くみないで

職場でも家庭でも「なまけ病」と侮られて...

   慢性疲労症候群は、特にハードな運動や労働をするわけではなく、普通に生活をしているのにヘトヘトに疲れ、休んでも回復しない病気だ。全身に痛みや脱力感があり、微熱や頭痛が続き、集中力や思考力がなくなり、何もする気になれないうつ症状になる。

   通常の慢性的な疲労だと、貧血や肝機能の低下、胃腸の不調など特定の原因があるが、慢性疲労症候群の場合は、医師に受診しても通常の検査では異常が見つからない。このため延々と検査が続く。外見上は健康に見えるため、職場や家庭では「やる気がない」「なまけている」と思われ、理解されないのがつらい。医師の認知度も低く、「よく睡眠をとり、栄養のあるものをしっかり食べることですね」といったおざなりのアドバイスですまされることが多い。

   2012年に厚生労働省の研究班が、慢性疲労症候群の診断基準を発表した。それによると、次のような特徴がある。

   (1)日常生活が困難なほどの疲れが6か月間以上続いたり、再発したりする。

   (2)内臓・神経・筋肉などに異常が認められないのに全身に倦怠感がある。

   (3)倦怠感は突然発症し、しかも発症した時期が明確である。

   (4)倦怠感は、現在の仕事や生活習慣のせいではなく、十分な休養をとっても解消しない。

   2015年の厚生労働省の調査では、国内の患者は推計で約30万人。そのうち3割が寝たきりや介助が必要な状態だ。しかし、「なまけ病」と呼ばれ、「難病」には指定されていないため、公的な福祉サービスが受けられない。「予備軍」の人はその10倍の300万人近くいるとみられている。

腸の壁に穴があき、恐ろしい菌が血流に乗り体中に

   コーネル大学の研究チームは、慢性疲労症候群の患者48人と健康な39人の血液と大便のサンプルを入手し、詳細にDNAの分析を行なった。その結果、次のことがわかった。

   (1)大便の検査では、慢性疲労症候群の患者は健康な人に比べ、腸内細菌の多様性が極端に低かった。腸内細菌とは、人間の腸の中に住む約3万種類、約1000兆個の細菌のことで、免疫機能に影響を与えており、種類が豊かなほど健康になるといわれる。

   (2)また、慢性疲労症候群の患者には、体内の炎症を抑える働きをする腸内細菌が非常に少なかった。この有用な細菌が欠乏している状態は、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者に似ていた。2つの病気は、ともに消化器官の壁に炎症性の潰瘍ができ、粘膜がただれる病気で、原因と治療法がわからないため難病に指定されている。

   (3)血液検査では、腸管壁浸潤(リーキー・ガット)を引き起こした時と同じ炎症物質が検出された。「リーキー・ガット」は腸の壁がただれて穴があく病気で、最近、体に良くない多くの症状の源として注目されている。

   (4)腸壁に穴があくと、本来、腸内細菌が駆除するはずの病原菌や有害物質が穴を通じて血液中に漏れだす。そして血流に乗って体中をめぐり、様々な病気を引き起こす。片頭痛、吐き気、下痢、食物アレルギー、うつ病、統合失調症、月経前症候群、更年期障害、喘息、アトピー性皮膚炎、ワキガ、加齢臭...などがそれで、「リーキー・ガット症候群」と呼ばれている。

   (5)リーキー・ガットの原因は、乱れた食生活や睡眠不足・喫煙・飲酒・運動不足などのよくない生活習慣によって腸内細菌の状態が悪くなることだ。

   (6)血液中の炎症物質を検査することで、83%の確率で慢性疲労症候群と診断することに成功した。

ヨーグルト、ブロッコリー、ハチミツ、ニンニクがいい

   これまでの研究では、慢性疲労症候群の患者は脳神経に炎症が起こっていることが確認されている。ストレスが続くと脳内が炎症を起こすため、慢性疲労症候群も脳の疲労、つまりストレスが原因の「心の病気」と思われてきた。しかし、今回の研究で、腸内細菌の状態が悪くなり、腸の壁が破れ炎症を引き起こす細菌が血流に乗って体内をめぐり、体中に炎症を起こす可能性が明らかになった。

   研究チームのモーリン・ハンソン教授は「今回の結果は、患者の腸内細菌の状態が正常ではないことによって発症することを示しています。心理的なものが原因とする従来の考え方は間違っています。腸内細菌の状態を良くするために食生活を変え、プロバイオティクスやプレバイオティクスを積極的にとることが大切です」とコメントしている。

   プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌のような生きた善玉菌を含む食品のことだ。ヨーグルトやチーズなどの乳製品や納豆、漬物などの発酵食品がよい。一方、プレバイオティクスとは、その善玉菌の栄養分となるオリゴ糖や食物繊維を豊富に含む食品のこと。大豆食品やブロッコリー、アスパラガス、ハチミツ、ニンニク、ゴボウなどだ。

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