大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕された元女優の高樹沙耶(本名・益戸育江)容疑者が訴えた「医療大麻の解禁」。高樹容疑者は、大麻が認知症予防やがんなど約250の疾患に有効だとして、合法化のうえ使用や研究を推進すべきなどと主張していた。
そもそも、病気の予防や治療に大麻を用いるとはどういうことなのか。ツイッターやネット掲示板には、「結局、医療用大麻って何なんだ」「『医療用』と『嗜好用』の区別なんてあるの?」といった声が相次いでいる。こうした疑問について、厚労省の見解を聞いた。
厚労省「医療用の大麻なんて存在しません」
医療目的での大麻使用は、アメリカの一部の州やカナダなどで許可されている。こうした事実から、医療大麻推進派のなかには「海外では当たり前に使われている」と主張する向きもある。実際、NPO法人「医療大麻を考える会」のウェブサイトには、
「大麻の医療使用を実質的に禁止しているのは、先進諸国のなかでは日本だけです」
との記述がみつかる。そのほか、サイト上では「(大麻は)依存性がほとんどなく実質的な致死量のない」治療薬にあたるとして、がんやうつ病などの難病にも効果があるとも主張していた。
だが、厚生労働省監視指導・麻薬対策課の担当者は2016年10月27日のJ-CASTニュースの取材に対し、「前提として、医療用大麻なんて存在しません」と話す。続けて、
「そうした名称は、大麻を医療に使用したいと主張している一部のグループの方が、独自に用いているものだと認識しています。医療のための大麻などなく、犯罪にかかわる大麻と全く同じ成分が含まれています」
と説明した。
担当者によれば、現時点では世界保健機関(WHO)も「大麻の有効性に科学的な根拠はない」と判断する一方で、精神毒性や依存性については「有害と評価している」という。そのため、厚労省としては、
「有毒性がはっきりしていて、有効性が認められていないものを、医療に使用することは認められない」
との見解だという。その上で、医療用に大麻が一部の州で許可されているアメリカであっても、連邦法や食品医薬品局(FDA)では使用を禁じている例を挙げ、
「(推進派は)一部の良い所だけを持ち出して主張しているのでしょう」
と指摘していた。
「代替薬あるいはそれ以上に良い薬剤があるというのが現状」
医療大麻に疑問を呈する声は、国内の医療現場からも出ている。医療用麻薬を用いた終末期医療を専門とする緩和医療医の大津秀一氏は26日に更新したブログで、
「医療用大麻も効能は種々言われていますが、がんの症状緩和に関しては代替薬あるいはそれ以上に良い薬剤があるというのが現状であると考えます」
と指摘。続けて、「現場の一専門家としての個人の見解」と断った上で、「医療用大麻は、がんの患者さんの鎮痛に対して、ぜひとも導入してほしいというくらい必要な薬剤ではありません」としていた。
また、元女子プロレスラーのジャガー横田さんの夫で医療博士の木下博勝氏も26日放送の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、
「(医療大麻について)こんなもの認める必要は全くありません」
と一蹴。国内での合法化については「絶対に必要ないですし、今後もないと思います」としていた。