2024年 4月 26日 (金)

スポーツの世界ではもはや常識? 「短期集中」が学力アップの秘けつ

提供:ベネッセコーポレーション

   テスト対策や受験勉強、スポーツの練習など、限られた時間で最高の成果を発揮するには「集中力」が欠かせない。しかし、高い集中を維持できる時間には限りがあり、なかなか持続できないと「課題」に感じている人は多いだろう。

   この「課題」を解決するために、スポーツの世界では「短時間集中」スタイルが唱えられることが少なくない。プロ野球「読売ジャイアンツ」のエースとして活躍した桑田真澄さん(44)もその一人だ。

プロアスリートも太鼓判
プロアスリートも太鼓判

    桑田さんは著書『スポーツの品格』(集英社)の中で、

「僕は高校時代に二回も全国優勝することができましたが、『どこよりも厳しい練習』をしていたわけではありません。実際は、むしろ逆だったのですよ」

とつづっている。その理由を「試合でも練習でも、僕は常にベストな状態でいたいんです。そうじゃないと集中できませんから」と話す。

   現役を引退し、指導者になってからも「短時間集中型」の練習を取り入れ、スポーツ界にはびこる「長時間練習=善」という図式に一石を投じている。

   また、男子テニスの雄であるノバク・ジョコビッチ(29)も、「短時間集中」型の練習にこだわるプロフェッショナルの1人だ。「ある選手は何時間もコートで練習しているけど、自分はどれだけの時間で練習したかではなく、質の高い練習を短時間にするようにしている」とインタビューに答えている。

   このようなプロアスリートが実践する「短期集中型」メソッドが、教育分野でもにわかに注目を集めている。どんな効果があるのか――。

短時間集中のススメ

   通信教育大手「ベネッセコーポレーション」はこのほど、東京大学薬学部の池谷(いけがや)裕二教授が行った「学習時間と集中力に関する実証研究」に協力した。

   この研究では、中学1年生28名を対象に、学習時間を変えて英単語の学習をしてもらい、その後にテストを実施。その結果、長時間の学習(60分×1)よりも、適度な休憩をはさみつつ短時間集中を繰り返す「積み上げ型」学習(15分×3、7.5分休憩×2回)の方が、テストの点数が高く、集中力が一定のレベルを維持していたことがわかった(関連記事)

「積み上げ型」学習(15分×3、7.5分休憩×2回)の対象者の集中度(ガンマ波)の推移
「積み上げ型」学習(15分×3、7.5分休憩×2回)の対象者の集中度(ガンマ波)の推移

ベネッセ教育総合研究所の見解は?

   「1回15分」という短時間集中スタイルを30年以上も実践してきた「進研ゼミ」を研究面から支える「ベネッセ教育総合研究所」。その副所長・木村治生(はるお)氏に、さきの調査結果について話を聞いた。

ベネッセ教育総合研究所・木村治生氏
ベネッセ教育総合研究所・木村治生氏

   ――短時間集中学習のメリットは?

   学力を向上させるには、学習の「量」と「質」の両方を考える必要があります。長時間の学習を15分で区切ってその間に休憩をはさむという今回の研究は、学習の積み上げにより「量」を増やすだけでなく、1回の学習の集中力が高まるので「質」の改善も図れます。

   重要なのは、学習中にどれだけ集中できるかです。しかし、すべての子どもが長時間学習に集中できるわけではありません。そこで、集中が途切れやすい15分を1つの目安として学習し、休憩をはさんでリフレッシュし、ふたたび15分学習・・・というように繰り返せば、集中力が持続するのではないか。東京大学・池谷先生の研究は、まさに仮説通りの結果でした。

   ――休憩のポイントは?

   休憩の時間や方法は人それぞれなので、唯一の答えはありません。集中が続くうちは、無理に休憩をはさむ必要もないでしょう。休憩の目的は、集中力が落ちたときに、頭を切り替えて、次のパフォーマンスに集中するためです。うまく意識して活用することが大事です。

   とはいえ、意識して休憩をはさむには、自分の集中力の状態を客観的にとらえる力が必要です。それは、多くの子どもにとって、まだまだ難しい課題。そこで、教材の区切りごとに休憩をとるように決めてしまうのも、ひとつのやり方だと思います。

   また、自分の状況を客観的にとらえる力が十分に身に付いていないため、休憩から勉強に戻れないという悩みもよく聞きます。そのときは、保護者が「何時まで休憩する?」などとコミュニケーションをとり、子どもに今の状況を認識させたり振り返らせたりするサポートがとても効果的です。

   自分の状況を客観的にとらえる力を「メタ認知」といいます。このメタ認知は、学習を効率的に進めるうえで、とても重要な力です。保護者の役割は、「勉強しなさい」と指示するのではなく、子ども自身が学習をどのように進めればよいかを考え、メタ認知を高めることにあるのではないかと思います。

インタビュー時の木村氏
インタビュー時の木村氏

   ――「進研ゼミ」でも「メタ認知」の知見は生かされているのか

   中学生は、自分の状況を客観的に認識してコントロールする力(=メタ認知)が身についていく段階です。この時期にメタ認知を育て、自分で学習を組み立てられるようになれば、その力は将来大いに役に立つはずです。そうした力を育てるために、「進研ゼミ」では、勉強のスケジュールや目標を自ら設定し、定期的に見直しをさせる仕組みがあります。

   ただ指示されたことをやるのではなく、学習のプロセスを客観化・可視化し、全体の中で自分ができていることは何か、できていないことは何か、また、どういう順番で学習を進めるか、といったことを自己決定する。多くの子どもを見ていると、学習成果をあげているのは、そのような子どもたちであることがわかります。

   ――「進研ゼミ」は今後、どう変わっていくのか

   現在、学習専用タブレットを使ったサービスを進研ゼミ「小学講座」「中学講座」で展開しています(関連記事)。紙の教材の利点を残しながら、デジタル化ならではの良さを追求していきたいと考えています。

   たとえば、デジタル教材は学習記録を蓄積しやすいので、さきほど説明した「学習プロセスの客観化・可視化」が容易です。その中から、間違えた問題を集中的に学習する、といったこともやりやすくなります。教材を提供している側から見ると、子どもの学習の様子がデータで得られるので、その子に必要な働きかけができるのも利点です。

   今後は、そこで得られたデータも活用しながら、これまで同様に、学習に関する研究を深め、その成果を教材に生かしていきたいと思います。

進研ゼミ中学講座の教材一式
進研ゼミ中学講座の教材一式
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