2024年 4月 26日 (金)

民泊「解禁」の同床異夢 法案まとまるも課題山積

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   マンションなど一般住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」を本格解禁する住宅宿泊事業法案(民泊法案)がようやくまとまった。2017年3月10日に閣議決定し、開会中の通常国会に提出する。今国会で成立させ、年内の施行を目指す。無許可物件でトラブルなども起きていたため、一定ルール下で合法的民泊をきちんと制度化することで、観光立国に向けた普及を図る。ただ、ホテル・旅館業界には客を奪われる不安がある一方、過剰な規制で普及を妨げられるとの懸念もあるなど、運用面には課題も多い。

   民泊が注目される背景には、外国人観光客の急増がある。特に2020年東京五輪に向け、訪日客を現在の1.7倍の年4000万人に増やす計画だ。都市部でのホテル不足解消の切り札としても民泊に注目している。今国会で新法が成立すれば、17年度中に施行したい考えだ。

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「シェアエコノミー」の代表選手

   一段の増加が見込まれる中で、ホテルの絶対的な不足への対処として、民泊が不可欠な状況にある。受け入れ側にも、使っていない自宅の空き部屋や、所有する空き家の有効活用というメリットがあり、「シェアエコノミー」の代表選手と位置付けられる。

   具体的には、米国生まれの仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」などで予約を受け、多くの外国人が利用する。外国人旅行者の受け皿になっているが、本来は旅館業法の許可取得が必要だが、要件が厳しいため、多くが無許可の「違法営業」状態。国家戦略特区制度を活用した民泊制度もスタートしているが、東京都大田区と大阪府だけにとどまる。

   厚生労働省の2016年10~12月の調査では、仲介サイト掲載の全国1万5127物件のうち、自治体の許可を得ていたのは2505件(16.6%)、無許可4624件(30.6%)、残り7998件(52.9%)は住所が非公開など実態不明の物件で、無許可のものが多いとみられる。東京23区など大都市部の8200件では、許可を得ているのは150件(1.8%)にすぎなかった。

   新法案は、一定のルールで民泊を積極的に認めることで、こうした無法状態の解消を目指すもの。具体的には、民泊の営業を都道府県などへの届け出制とし、衛生対策、近隣トラブル防止のための苦情処理、民泊の標識掲示義務などを課す。

自治体の上乗せ規制

   最大の焦点として最後まで議論になった営業日数については、「あくまで住宅」との建前から、1年のほぼ半分の180日までとする。自治体が条例で営業を認める日数や区域を制限できることも盛り込むが、政府は「騒音など生活環境の悪化を防止する目的」に限って制限できるとして、日数をゼロにしたり、管内全域で営業禁止にしたりすることはできないとの見解を示している。詳細は政令で定める。

   また、Airbnbなどの仲介サイトも観光庁への登録制とし、宿泊料や仲介手数料の明示などを義務付け、違反業者には自治体や観光庁が業務停止や登録取り消しなどの処分ができる。

   民泊を届け出ない、あるいは旅館業法の許可も得ない「闇業者」の取り締まりも強化するとしており、旅館業法の無許可営業の罰金の上限を3万円から100万円に引き上げる同法改正案を国会に提出済みだ。

   ただ、法案はできても、運用上の課題は少なくない。最大の問題は、やはり自治体の上乗せ規制だ。例えば、日本を代表する別荘地の長野県軽井沢町は2016年春、環境を守るなどとして、町内全域で民泊を認めない方針を示していて、計画が出てきたら強力に説得する構え。京都市の門川大作市長は昨16年来、集合住宅での民泊は原則認めない考えを示しており、条例化も検討しているという。

具体的な線引きは曖昧

   上乗せ規制は「生活環境の悪化を防止」のためといっても、具体的な線引きは曖昧だ。例えば、「学校の周辺は夏休みの7~8月のみ営業可能」と、教育環境に配慮するようなケースのほか、「観光地は繁忙期の9~11月を除き営業禁止」といった旅館業界に配慮したものも考えられ、どこまでが可能かは、国、自治体間で意見が割れる可能性もある。

   新聞各紙も、民泊への関心の高まりを映して積極的に報じている。最近の社説では、毎日(3月14日)と日経(2月17日)が取り上げている。毎日は、家主が住みながら空き部屋を旅行者に提供する文字通りのホームステイ形式と、マンションの部屋を大量に確保して大々的に事業として営む事業者を一律に見ることに疑問を呈し、「ふれあいや相互理解を促し、地域と共生する民泊を目指すべきだ」と、人と人の交流を中心に育てるべきだと主張。

   一方、日経は「民泊への過度な規制は、地域の住民の資産活用や国際交流の道をせばめるという側面もある。......既存の業界を保護するために新サービスの芽を摘むとしたら、長い目でみて地域の活力をそぐことにつながりかねない」と、上乗せ規制の行き過ぎへの警告に力点を置いている。

   2紙の論調の違いに見られるように、民泊を巡っては残された論点も多く、法律が成立しても、慎重な議論を続けることが必要なようだ。

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