2018年 7月 23日 (月)

「HIV感染は不治の病」今や昔の話 寿命は非感染者とほぼ同じに

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   2017年5月11日、BBCは「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」感染者の平均余命が感染していない人と変わらない状態になっているとする英ブリストル大学の研究結果を報道した。

   完治は困難で治療薬の服用を一生継続しなければいけないが生存率は改善され続けており、1981年にHIVが発見された当時の「高確率で死亡する不治の病」といったイメージは大きく変わりつつあるようだ。

  • もちろんまずは感染しない予防が重要(写真はイメージ)
    もちろんまずは感染しない予防が重要(写真はイメージ)

抗レトロウイルス療法の効果が年々向上

   HIVは免疫細胞を破壊して免疫不全を起こすウイルスで、感染することで「後天性免疫不全症候群」、いわゆるエイズを発症する。極端に免疫機能が低下するため、健康な時には発症しなかったような感染症になりやすくなってしまう。

   ブリストル大学が行った研究は1996年から2013年の間に、エイズの標準的な治療法である「抗レトロウイルス療法(ART)」を開始した患者の3年生存率および平均余命の変化を調べるというものだ。論文は世界トップクラスの評価を受けている医学誌「ランセット」のHIV専門誌「ランセットHIV」に掲載されている。

   ARTとは「抗レトロウイルス薬」という治療薬を3種類以上組み合わせて服用することで体内でのHIV増殖を抑制し、免疫機能を高めて感染症と戦う能力を再生する治療法だ。HIV感染を治癒するわけではないが、感染していても健常者と変わらない状態を維持することができる。

   世界保健機構が2015年に発表したガイドラインでは、HIVに感染した人は誰もが診断後には可能な限り速やかにARTを開始するよう強く推奨しているほどで、その効果は確かだと言えるだろう。

   論文によると、欧米で実施された18本の研究からARTを受け、3年以上経過を追跡した16歳以上の患者8万8504人分のデータを収集。年齢、性別といった生存率に影響を与える条件を均等に調整し、3年間の死亡率を元に平均余命を推定したという。

   治療開始時期ごとに「1996~1999年」「2000~2003年」「2004年~2007年」「2008年~2010年」の4グループに分けたところ、「2008年~2010年」グループの全死亡率(あらゆる死因を含めた死亡率)は他グループより約29%低下し、条件未調整の場合42%もの低下となった。治療を継続するほど低下は顕著になっている。

早期治療で余命は健常者と同等に

   最も死亡率が低くなっていた「2008年~2010年」グループの平均余命を推計したところ2008年に20歳だったと仮定した場合、欧州在住者では男性が67.6歳、女性が67.9歳、北米在住者では男性65.9歳、女性63.2歳となった。この年齢ではどちらもフランス(男性79歳、女性85歳)や米国(男性78歳、女性82歳)の平均寿命より低い数値で、余命が改善されているようには見えないが、治療3年目だけの死亡率を元に算出し直すと平均余命は10年以上延長されるという。さらに、感染初期のウイルス増殖が低値の状態でARTを開始した20歳の患者の場合、平均余命は78歳以上と欧米で一般的な寿命に達している。早期発見早期治療の成果とみられる。

   大幅な改善の理由について、研究者らは早期発見早期治療が浸透しつつあるというほかに、抗レトロウイルス治療薬の効果が高まったが副作用はなくなった、正しく服薬することで症状が抑えられるという理解が深まった、といった理由を推測している。

   BBCの取材に対し、英国医師会は「HIV感染者の余命が相当伸びたのは、素晴らしい医療の成果」とし、研究結果がHIVの悪いイメージを払拭するのに期待するとコメントした。

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