2018年 11月 21日 (水)

中国の金融危機は、なぜ起らないのか 欧米からは見えない経済の本質

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   ムーディーズが中国の格付けを一段階引き下げたのは、2017年5月24日のことだった。中国の長期本位貨幣と外貨発行者の格付けをAa3からA1に引き下げた。その後、しばらく「中国崩壊論」が少し勢いが付き、今回こそ中国経済は崩壊に向かうとも言われるようになった。

   たまに東京に行き、本屋を覗くと、「中国崩壊論」と「中国脅威論」の本は、中国人の私の注目を引く。もうかれこれ20年以上も叫ばれ、ここ10年は「シャドーバンキング危機論」、「地方債務危機論」、「金融危機論」が耳から離れない。それに反論するつもりはないが、欧米的な意味における本当の危機は、中国では一度も発生していない。

  • 中国経済が徐々に市場化に向かう中で、金融リスクは高まることになる(写真はイメージです)
    中国経済が徐々に市場化に向かう中で、金融リスクは高まることになる(写真はイメージです)

いまだ「計画経済」の影響

   金融危機や債務危機を語るとき、まずひとつの事実に気づかなければならない。それは、現今の中国経済は計画経済から派生してきたもので、計画経済下では金融危機もなければ債務危機も存在しないということである。理由はきわめて単純で、計画経済には金融などまったく必要ではなく、中国には長期にわたって銀行は1行、すなわち中国人民銀行しかなかった。計画経済下では債務危機も存在しない。いみじくも当時の中国首脳が語ったように、「内債もなければ外債もない」のであった。

   この視点からすれば、現在の中国が計画経済から市場経済に転換した国として、大規模な債務危機や金融危機が起ったことがないのはその制度と歴史的な源流にその要因が求められる。

   市場経済を施行して数百年になる先進国とは異なり、今日でも中国の銀行体系は相変わらず国営が主体で、預金者は銀行の背後に政府保証があることを信じ、それが現在の銀行体系に対する絶大な信用になっている。

   たとえば今世紀初め、当時の銀行が抱えていた債務の焦げ付きは預金残高の40%に達していたが、大規模な取り付け騒ぎは起こったことがなく、これは他の発展途上の市場経済国ではあり得ないことだった。最近の数年間、マーケットの銀行に対する焦げ付き率が悲観的な状況に陥ったときでも、国内預金者の銀行に対する信用は揺らぐことがなかった。

政府が金融に強力な制御能力

   銀行体系が国営を主としているため、政府は金融メカニズムに対して強力な制御能力を有している。中国の銀行業界には4000以上の法人が存在するが、トップに君臨する4大国営銀行(中国工商銀行、中国銀行、中国農業銀行、中国建設銀行)と国家開発銀行が銀行全体の総資産の約40%を保有している。これは政府が銀行間マーケットに柔軟性を持たせることに寄与し、そこに強力な制御メカニズムが生まれている。

   このことは、第1には、商業銀行が取り付け騒ぎに遭遇するリスクを大きく引き下げることに寄与し、第2は、通貨市場で金融機関同士が相互に取り付けを行うリスクを大きく減じることに役立っている。歴史上、大規模な金融危機は第1の取り付け騒ぎに起因し、記憶に新しいリーマン・ショックは第2の原因による。中国金融体系の過渡期における特殊性は、これら異なる2種類の取り付けリスクの低減に役立っていると思われる。

   欧米の市場経済国とは異なり、中国の債務総額は低くないが、純粋な民間部門の債務も多くはない。民間企業と家庭の債務の総和は債務全体の40%に満たない。言い換えれば、中国の債務の大半は広義の国営組織(政府と国営企業)内で発生し、政府に大きなやりくりの余裕を提供している。

   たとえば、数年前に調査組織が地方融資機関のキャッシュ・フローを分析すると利息の支払いがショートしていたため、地方債務危機が発生するのではないかと予想された。その後、中国政府は地方政府の債務を中央政府の債務に置き換えて危機を回避した。この過程で、政府のやりくり能力と銀行体系に対するコントロールが徹底されたのである。こうした事態は、欧米の先進市場経済国ではあまり起こりえないことである。

   上述のメカニズムは完全無欠とは言えず、資金効率も低下して浪費も目立つが、客観的に見れば危機の発生リスクを確かに低減させている。

高度成長による危機回避も

   経済体制の過渡期における特殊性以外に、経済発展そのものも危機回避に貢献している。中国は今世紀初頭の焦げ付きリスクを回避することができたが、その本当の理由はその後数年の経済の高度成長にあった。同時に、これほど長期に渡って不動産リスクの警告が耳元で鳴り響いていたにもかかわらず回避することができたのは、やはり経済成長と収入の増加にその理由を求めることができよう。

   当然、経済成長や収入の増加はかなりの部分で投資の増大に頼り、低成長でも投資に発展空間を提供してきた。過去数年、中国経済は「ハード・ランディング」を回避することができた。そのひとつの原因は、投資の増大を維持できたからだろう。2016年、中国の固定資産投資は2011年の2倍であった。それは過去の資本蓄積量が低かった故に、これほど早い投資速度を達成できたのだ。ただ、このように速い投資スピードは、永劫には続かない。

   上に述べた要因によって中国経済は危機を回避してきたが、これは、中国経済が今後も安泰だと言っているわけではない。ただ、悲観的な予測はこれまで一度も当たることがなかった。時代の背景にある特殊性を理解してはじめて、中国の経済現象を理解することが可能になるのだろう。過渡期における金融メカニズムの特徴、高度経済成長などには現在変化が生まれ始め、中国経済の市場化が深化し、発展レベルが高まるにつれて有利な要素は減少し、それにつれて金融リスクが高まってくる。改革の緊迫性はますます高まっているとも言える。

   (在北京ジャーナリスト 陳言)

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