2024年 5月 6日 (月)

スーパーのポテトサラダからO157 感染源は「無症状」の保菌者か

   埼玉県のスーパー内にある惣菜店で販売されていたポテトサラダを食べた客のうち6人から、腸管出血性大腸菌O(オー)157が検出された。感染すると激しい腹痛や下痢を起こし、場合によっては命を奪われる。

   今回は、店内で大皿に盛られたサラダをセルフサービス形式で客が購入するスタイルだった。2日続けて患者が発生しており、感染ルートの特定が急がれる。

  • 感染予防の基本は手洗い(写真と本文は関係ありません)
    感染予防の基本は手洗い(写真と本文は関係ありません)
  • 感染予防の基本は手洗い(写真と本文は関係ありません)

堺市では1996年に3人が亡くなる惨事

   埼玉県の2017年8月21日の発表によると、8月7~8日の2日間に同県熊谷市のスーパー内惣菜店で加工販売されたハムポテトサラダとリンゴポテトサラダを購入し食べた14人のうち8人が腹痛や下痢を訴え、O157が検出されたのは6人、また3人が入院した。さらに、1人は腎臓の働きが低下する「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症した。県の発表ではないが、複数の報道によるとこの患者は5歳の女児で、意識不明の重体という。

   O157は感染力が非常に強い。1996年に大阪府堺市で発生した集団感染による患者数は、学校給食を介して小学校児童とその家族9523人に上り、うち3人が死亡する惨事となった。 8月22日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)は、経緯を詳しく報じた。ポテトサラダの製造工場の担当者によると、朝9時ごろにつくり賞味期限は24時間という。工場から惣菜店に運ばれたポテトサラダに、同店で切ったハム、リンゴを入れて大皿に盛りつけ、店内で販売する。客はセルフサービスで、客が売り場に置かれたスプーンやトングを使ってパックに詰めて購入する流れだ。

   調理場では、ポテトサラダを扱う担当者はゴム手袋の上に使い捨てビニール手袋を使用し、まな板は毎日消毒していたという。終業時には消毒を含めて清掃し、調理器具は煮沸するとのことだった。

   一方で、番組に招かれた東京医科大学兼任教授の中村明子氏は、客がサラダを取るためのスプーンの消毒回数が1日1回という点に着目した。

2日連続で患者が出た「謎」

   番組では、感染源として考えられるものとして(1)ポテトサラダ、(2)ハム・リンゴ、(3)スプーン、の3点を挙げた。中村氏が疑うのは、スプーンだ。調理時は衛生対応が徹底いるのに対して、販売時には不特定多数の客が触れるスプーンの消毒回数が1日1回では少なすぎる、というのだ。

   具体的な感染ルートについて、埼玉県食品安全課に取材したところ、8月22日時点では「調査中」との回答だった。

   もうひとつ注目すべきは、感染が2日間に渡っている点だ。セルフサービス形式で惣菜を購入する店は、それほど珍しくない。ではなぜこの店は、2日連続で患者を出したのか。可能性を考えてみた。

   東京都感染症情報センターのサイトによると、O157に感染すると潜伏期間が2~9日間ある。その後、激しい腹痛を伴う下痢や血便を起こす。O157に感染した人が、発症前の潜伏期間中に2日続けて店で何らかの形でポテトサラダや周辺器具に触れたかもしれない。

   またO157に感染しても、必ずしも発症するとは限らない。番組では中村氏が、「無症状の保菌者」がスプーンなどに触れていた可能性を挙げていた。

   J-CASTヘルスケアが東京都感染症情報センターに取材したところ、感染したら病気になるかどうかは個人差で、「する・しない」のはっきりした割合は分からない。ただし、高齢者と5歳未満の乳幼児は重症化しやすいので、より徹底した予防策を講じてほしいと担当者は話した。

   今回の埼玉県の事例が、無症状の保菌者によるものかは現時点では何とも言えない。いずれにしろ、広い店内でポテトサラダだけが原因となっていることから、感染ルートはかなり限定的とみられる。

   今回のように第三者が調理した食品から感染するケースは、なかなか防ぐのが難しい。だが、二次感染を防ぐために手洗いの徹底などできることはある。また調理の際は中心部の温度が75度で1分以上加熱すれば殺菌ができる。逆にマイナス15度以下なら増殖は抑えられるが死滅させられるわけではない。こうしたO157の性質を知っておくのも有益だ。厚生労働省はサイトで、食中毒予防の6つのポイントを紹介しているので、参考にするとよいだろう。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中