2018年 11月 20日 (火)

盗む行為に依存する「クレプトマニア」
  虐待や厳しすぎる教育が一因に

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   【ハートネットTV】(Eテレ)2017年11月1日放送
「窃盗がやめられない"クレプトマニア"」

   お金に困っているわけでも、物が欲しいわけでもないのに万引きがやめられない―盗む行為そのものに依存する「クレプトマニア(窃盗症)」の人が、刑務所に繰り返し入る窃盗犯の中に1~2割いるとわかってきた。

   背景には生育歴など、様々な要因があるといわれている。再犯防止に必要なのは治療だが、クレプトマニアの人を受け入れる医療機関はごくわずかだ。番組では、治療に取り組む医療機関と当事者たちを追った。

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交友関係制限され、鉛筆で刺されたことも

   コータローさん(仮名、27)は、高校3年から万引きを繰り返し、窃盗で3回、計4年間服役した。17年8月に出所し、今は不動産関係の資格の勉強をしている。

   コータローさん「勉強は小さい頃から厳しく母にさせられてきたので、そんなに苦ではないですね」

   教育熱心な両親に育てられ、小学生の頃から時間があれば勉強するよう指導された。叩かれるのは日常茶飯事で、わからないと母から鉛筆で刺された。今も腕に痕が残っているという。

   高校生になっても友達付き合いや恋愛を制限された。期待に応えようと必死に勉強したが、大学受験を目前にし、思うような成績が出なくなる。

   ストレスを解消するために始めたのが過食だった。家族に隠れて家中の食品を食べ、吐くように。摂食障害を発症したのだ。

   コータローさん「唯一の楽しみが食べることしかなくて。吐いた時はすっきりするけどその後はよくない。でもそれが自分の中で刺激というか、現実逃避する手段だったから頼るしかなくて、ずっと繰り返し」

   過食に気付いた母に食べ物を隠されるようになると、貯金を崩して自分で買い込むように。しかしお金はすぐに底をつき、18歳の冬、ついに万引きに手を出した。

   コータローさん「とるのが悪いのはわかっていました。それよりもとにかく家に早く帰って食べて吐きたい気持ちしかなくて、罪悪感はそんなになかった。それからはお金があったとしても買わず、食べる、掃除する、歯を磨くのと一緒で、(万引きが)自分の生活の一部になっていました」

   スーパーで万引きしたある日、店内のベンチで盗んだものを食べていたら、「それはお金払ってないよね?」と声をかけられ、そのまま警察へ。初犯なので実刑は免れたが、その後も万引きを繰り返し、21歳で刑務所に入った。服役中は真面目に過ごしていたが、万引きをしたい気持ちは消えなかった。

   出所後は家族とも友人とも離れ更生保護施設へ。孤独感が強まる中、万引きは回数も量も増えていく。23歳で再び刑務所に入り、10か月服役したが、出所したその日には万引きしていた。

   コータローさん「刑務所を出てからの万引きは、欲しくない物でも手に取ったら何でも袋に入れて、袋いっぱいになるまで色んな店で繰り返した。更生保護施設でそんなにたくさんの物を抱えていたら明らかにおかしいので、とった物を捨てて帰っていたんです」

   1日を万引きに費やし、盗んだ物は捨てる。出所した6日後にはまた逮捕され、この時の精神鑑定でようやく「病的窃盗」と診断された。初めての万引きから8年経っていた。

   コータローさん「ほっとした。病気なら治療もできるから、それを知れただけでも大きな進歩だと感じました」

法務省は「どれくらいいるか認識していない」

   なぜ盗むのをやめられないのか。クレプトマニアの治療を行う数少ない医療機関のひとつ、赤城高原ホスピタル(群馬県)の竹村道夫院長によると、多くの患者が虐待や両親の不仲など問題家庭に育っていて、3割以上が摂食障害を合併しているという。

   竹村氏「『ありのままのあなたでいてもいい』というメッセージを親からもらっていないと、このままじゃいけないと思い、自分でコントロールできるダイエットから拒食になったり、そこから過食嘔吐になったり。あるいは自分が報われていない気持ちがあると、元々持っているむなしさを解消しようと、とる方向に集中しやすい」

   精神科医の松本俊彦氏「厳格な家庭で育ったり、今現在、例えば暴力をふるうパートナーとの関係に耐えざるを得なかったり、自分の力ではどうにも抵抗できない環境を生き延びる中で、一種の困った習慣として出てきてしまう人が多い」

   薬物依存症の回復施設「ダルク女性ハウス」の上岡陽江施設長「社会と距離ができればできるほどやめる理由がなくなる。親しい人、大切な人のものだと判断できれば万引きを止める理由もあるが、孤立していったらどんどんわからなくなっていく」

   番組でクレプトマニアの認識について法務省に聞いたところ、「窃盗の原因や問題は多様で個別に指導プログラムを行っている」「クレプトマニアがどれくらいいるか認識しておらず、特化したプログラムは行っていない」との回答だった。

   松本氏「まだまだ研究が進んでいない現状もあるが、依存症の一種なので、どのような状況で万引きしてしまうのか振り返るようなプログラムが必要だと思う」

   刑務所の中だけでなく、出所後の受け皿も不十分だ。

   松本氏「地域の医療機関で対応できる場所がどれくらいあるかというと、極めて厳しい状況。医療の側もクレプトマニアの認識が深まっていないし、対応できる体制を整えているところがほとんどない。医療関係者の中でも犯罪という見方が大勢」

派手な服装と透明のバッグで自分にブレーキ

   赤城高原ホスピタルでの治療は、専門職によるカウンセリングのほか、グループミーティングへの参加が義務付けられている。病院のスタッフは一人も立ち会わず、患者だけが誰にも言えなかった盗みたい気持ちや辛い体験を正直に打ち明ける。盗みをやめられないのは自分だけではないと知り、どんな話をしても責められず受け入れられる安心感も得られる。

   2年間入院したのち、3年前に退院したミユさん(仮名)は、今関西地方で暮らしている。

   外出の時はあえて派手な服装にする。周りの人の視線を集め、万引きをしづらい環境を作っているのだ。

   バッグは物を隠せないよう透明のビニール製に。買い物する時は必ず主治医に「今からコンビニに入ります」などとメールし、万引きにブレーキをかけている。

   5年間盗まない生活を送ってきたが、いまだに自分が回復したとは感じていない。

   ミユさん「まだまだ危ないと思っています。色んな所に落とし穴があって、スーパーなんかで他人の忘れ物をよく見ちゃう。カバンが忘れられていても、お店の人に『あそこに落ちていますよ』と伝えるまではやって、私は決して触らない。これをとっちゃったらまた一からだと思っているので、一日一日がすごく大変なんですけど」

   万引きしたい衝動は不意に襲ってくるが、医師からのアドバイスを受け、入院中に出会った当事者たちと文通している。

   ミユさん「あちらも頑張っている、私もこっちで頑張っていて、つながっているから(とらない)意識が深まります。お互いが支え合っている。仲間は私にとって一生の宝です。何があってもとらないのは仲間の支えがあるから」

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