2024年 5月 5日 (日)

高収入でも子育て世代は増税対象外? 所得税 「控除見直し」めぐる論点

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   2018年度税制改正の作業が大詰めに差し掛かってきた。自民党税制調査会(宮沢洋一会長)が、17年12月14日に予定する18年度税制改正大綱決定に向け、とりまとめ議論を本格化している。いくつかあるテーマの中で、所得税の見直しが最大の焦点だ。

   宮沢会長は11月22日の総会で、最優先の検討項目として「基礎控除、給与控除などを含めた所得税の改革」を挙げた。具体的には、すべての納税者に適用される「基礎控除」を引き上げ、会社員らに適用する「給与所得控除」を下げる。後者は、特に高収入の会社員の控除を減らして増税し、それで得られた財源を基礎控除引き上げに充てるということだ。

  • 所得税を巡る議論が大詰めを迎えている(画像はイメージ)
    所得税を巡る議論が大詰めを迎えている(画像はイメージ)
  • 所得税を巡る議論が大詰めを迎えている(画像はイメージ)

会社員以外に不公平感

   こうした見直しの大義名分が、働き方の多様化への対応、働き方による税制格差の是正だ。会社に所属せずフリーランスや請負で働く人が増えており、所得税の課税で不利になっているのを改めようというのだ。

   控除の仕組みは次のようなものだ。所得税を計算する際、収入の中から一定額を差し引いた額に税率をかける。「差し引く」のが控除で、控除額が増えれば減税、減れば増税になる。かかった医療費の一定部分を控除できる医療費控除などがある。

   収入があるすべての人に適用されるのが基礎控除で、1947年に創設された当時は、生活に最低限必要な食費などを基に設定され、徐々に増額されて現在は一律38万円になっている。給与所得控除は、給与をもらう会社員に適用され、いわば、サラリーマンの必要経費という位置づけだ。給与収入に応じて増え、年収1000万円で220万円になる。ここで打ち止めになり、年収が増えてもそれ以上の控除はない。

   例えばインターネットで仕事を請け負い、代金を受け取るようなフリーランスの人は基礎控除だけ受け、給与所得控除は受けられない。もちろん、「必要経費」は控除できるが、給与所得控除は「サラリーマン減税」といった名目で増えてきたのでかなり手厚く、会社員以外には不公平感が強い。

   これまでに検討されているのは、基礎控除を50万円程度に増額する一方、給与所得控除の上限の年収を800万~900万円に下げ、控除額の上限も180万~190万円程度まで引き下げるといったもの。ただ、線引きについては与党内にも年収1000万円超を対象とすべきだという主張があり、負担増になる人が少なければその分、基礎控除を手厚くする財源が減ることになる。子育てや介護の負担がある世帯は高収入でも増税対象外とすべきだとの意見もある。

税金の「再配分機能」

   高所得者については、基礎控除も年収が増えるにつれ徐々に減額し、年収2500万~3000万円以上はゼロにすることも検討されている。

   所得税改革ではこのほか、公的年金等控除についても高所得者の控除縮小が検討されている。現在は65歳以上で年金収入が330万円以下の人の控除額は年120万円で、年金が多いほど控除額が増え、上限はなく、会社から給与を同時に受け取っている人は、給与所得控除も二重で受けられる。これを、年金収入が1000万円超や年金以外の収入が1000万円超の人に対しては控除に上限を設ける案が取り沙汰される。

   こうした改革は、税金の「再配分機能」、つまり、高所得者から多く税金を取り、所得格差を緩和するという税金の本来の役割を機能させる意味で、方向性としては妥当との受け止めが多い。ただ、高所得者への負担が重くなりすぎて、経済の活力を失う懸念が指摘される一方、再配分機能を十分発揮するためには、課税される所得を減らす所得控除でなく、所得に拘わらず同額の税金を減らす「税額控除」に切り替えるべきだとの意見がある。

   また、女性の社会進出を後押しするために、専業主婦世帯を優遇する配偶者控除の廃止を求める声が強まっているが、1年前の2017年度税制改正大綱で所得1000万円以上世帯に限定して廃止されたものの、今回は議論の俎上に乗っていない。

   さらに、高収入でも子育て世帯は増税対象外としようとの意見には、子どもがいない世帯だけ増税するのは不公平だという批判も強い。

   社会保障全般の見直しや消費税を含め、かつての「税と社会保障の一体改革」のように総合的に検討する必要があるとの声は多いが、今年の論議は中途半端に終わりそうだ。

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