2024年 5月 3日 (金)

中国「環境保護」という暴風 米系企業の「反抗」の受け止められ方

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   中国の環境保護法の執行方法を、ある外資系企業が公に批判したのは、中国においては型破りな出来事であった。

   塗料やインクなどの材料であるカーボンブラックを生産する米国キャボット社の総裁兼最高経営責任者(CEO)、ショーン・コヘイン氏は2017年11月上旬に、「中国石油及び化学工業連合会」の李寿生会長に次のような手紙を送った。

  • 11月13日の「中国化工報」1面
    11月13日の「中国化工報」1面
  • 11月13日の「中国化工報」1面

「多くの現地政府が政策を杓子定規に執行している」

「最近、中国において環境政策がますます厳しくなっていることは我々も留意しています。業界、ひいては中国が持続可能な発展のために講じるこれらの措置を当社も理解し、支持したいと考えています。しかし、多くの現地政府が政策を杓子定規に執行しているのを我々は目にしており、これは化学工業界の長期的な利益に資するものではありません。我々は貴殿がこれらの問題に注意を向け、より現実的で有効な措置を模索するように業界をサポートしてくれることを希望します」

   「中国石油及び化学工業連合会」が主管する『中国化工報』は11月13日、1面のトップ記事でこの出来事を取り上げた。

   キャボット社によると、彼らが所有する河北省の工場では、先進的な環境保護制御技術の導入により、大気汚染物質の排出制御はすでに業界最高レベルに達している。このため、生産能力を削減することなく、中国政府部門が定める大気への汚染物質排出の濃度と総量の基準を完全に満たしてきた。しかし、現地政府が検討中の2017年から2018年の排出制限案では、「キャボット社もまた暖房使用期には生産能力を50%に減らすように」と「杓子定規」に要求された、という。

   キャボット社は1882年に設立され、米国のボストンに本部を置く。世界21カ国に36の生産企業を有する。『中国化工報』の報道によると、キャボット社の中国工場は同連合会が実施する主要業界の「エネルギー効率のトップランナー」の評価において、「カーボンブラック業界のトップ」に選出されている。

行政任務を全うするための環境保護

   2016年から今日まで、中央環境保護監査はすでに4回行われている。公開データによると、前3回の監査で有罪が推定された段階での初期立件で処罰された企業は15586社で、罰金額は7億7500万元に上った。最終的な立件及び捜査の件数は1154件で、行政及び刑事拘留されたのは1075人だった。『中国化工報』によると、「一部の地方政府はただ任務を全うするために、環境保護問題を処理する上で、簡単かつ横暴な手段を取り、杓子定規な事例も目立っている」とその環境保護の実態を明らかにしている。

   『中国化工報』は11月16日にこの件に関して続報し、「化学工業界内及び関係者が次々と同紙に彼ら自身の見解を寄せている」と伝えているが、当然のことながら、その見解はいずれも「環境保護法の杓子定規な執行に関する恨み言」だ。

外資でなければ、相手にもされず

   杓子定規な行政的法執行は、中国では実にありあふれたことだ。それは環境保護や化学工業界だけに限ったものではない。企業が生産能力の制限を課せられるのは、暖房使用期だけではない。「重要」な国際会議の開催や「重要」なスポーツ大会の開催、ひいては「重要」な祝日、またはスモッグが深刻な時には、企業が排出基準に達していようがいまいが、すべて一律に生産制限または生産停止が科せられる可能性がある。このような現状は中国人なら誰もが知っており、別に驚きもしない。今回、李寿生会長に手紙を出したのが、このように規模が決して小さくはない外資系企業ではなく中国国内の小企業であったならば、全く相手にもされず、『中国化工報』も報道しなかったことだろう。ただ、今回の件が、地方政府が杓子定規に環境保護法を執行すると、必ず無辜の者を傷つけることになることを思い起こさせたことは小さくはない。すべての企業の合法的な権益はみな保障されるべきで、また政府の行政権力は法律によって制御されるべきものであり、やりたい放題にはできない。これこそが法治国家の意味するところだ。

   しかし、キャボット社が手紙を出したことは、メディアによって報道されたが、その効果は如何なるものだったのか?その答えは、「とりたてて何の意味もなさない」ということだ。中国という国においては、習近平総書記がひとたび「青い山にきれいな水こそ、金山や銀山のようなもの」と発言するだけで、間違いなく中央政府は「環境保護の暴風」を巻き起こし、地方政府は必ず企業に対して生産制限及び排出削減を要求する。これは最高のポリティカル・コレクトネスである。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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