2024年 4月 26日 (金)

キヤノンの「強さと弱さ」が交錯 新・成長4事業の行方

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   キヤノンの決算が良い。2018年1月30日発表の17年12月期(17年度)連結決算(米国会計基準)は、純利益が前の期比61%増の2419億円となり、18年12月期(18年度)も2期連続の増収増益を見込む。だが、分野別にみると、キヤノンの強さと弱さが交錯し、先行き安泰とまでは言えないようだ。

   2017年度の売上高は前年度比19.9%増の4兆800億円、営業利益が44.8%増の3315億円、純利益が60.6%増の2419億円だった。最終増益は3期ぶりだ。

  • インスタ映えブームが追い風(画像はイメージ)
    インスタ映えブームが追い風(画像はイメージ)
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「インスタ映え」ブームを追い風に

   2018年度も、売上高が過去2番目の水準となる5.4%増の4兆3000億円、営業利益は26.7%増の4200億円、純利益は15.7%増の2800億円と予想している。

   1月30日の記者会見で田中稔三副社長は、2018年度の増収増益の前提について「現行事業を充実させ、新規事業を拡大する方針の土台が17年度にできた。それを確固たるものにするのが今年の課題だ」と述べた。

   田中副社長が語る「土台」の中身を細かく見ると、2017年度の業績を引っ張ったのは、なんといっても不振を脱した複合機などの「オフィス事業」と、デジタルカメラなどの「イメージングシステム事業」だ。かつて売上高に占める割合が合計9割に達した両事業は、17年度でもなお75%を占め、営業利益も8割を稼ぎだしている。17年度のオフィス事業は売上高が前年度比3.2%増の1兆8659億円、営業利益が6.6%増の1806億円、イメージング事業は売上高が3.7%増の1兆1362億円、営業利は21.8%増の1759億円とそろって好調。

   複合機はカラープリンターのラインアップ拡充などが奏功し、販売台数を伸ばした。デジカメは、「インスタ映え」ブームを追い風に2017年の市場全体が5年ぶりに前年比プラスに転換する中、同社もミラーレスの販売好調などが効いた。

医療機器と、産業機器、ネットワークカメラ、商業印刷

   他方、東芝メディカルシステムズ(キヤノンメディカルシステムズに社名変更)を6655億円で買収して新たに加わった期待の「メディカルシステム事業」は、売上高4362億円、営業利益225億円。「産業機器その他事業」も、半導体露光装置などが好調で、売上高が25.2%増の7317億円、営業利益は前期の7.5倍の568億円の黒字と好調だが、いずれも規模はまだまだ。

   2018年度について田中副社長は「その(17年度の)ペースで伸びるのは難しい。今年度は現行事業を慎重にみている」と言うが、複合機、デジカメの両事業で営業利益の8割以上を稼ぐ構図は変わらない。

   そもそも、キヤノンが近年進めてきたのは、複合機やデジカメ依存からの脱却だったはず。そのために、御手洗冨士夫・会長兼最高経営責任者(CEO)は新規の成長4事業を掲げている。医療機器と、産業機器、監視用などネットワークカメラ、商業印刷で、この間、M&A(合併・買収)に1兆円を投じて東芝メディカルなどを次々に傘下に収めてきた。実際、2017年度はこれら新規事業の売上高比率が24%と過去最高になった。しかし、営業利益の貢献度は2割に満たない。

   2018年度の部門別の売上高と営業利益の見通しは、オフィスが1兆9390億円(前年度比3.9%増)・2355億円(30.4%増)▽イメージングシステム1兆1530億円(1.5%増)・1930億円(9.7%増)▽メディカルシステム4700億円(7.8%増)・270億円(20.0%増)▽産業機器その他8390億円(14.7%増)・694億円(22.2%増)。

いかにスピード感を持って効率化していけるか

   期待の新規4事業では、メディカルは利益率が2017年度の5.2%から5.7%に高まるが、将来的に10%を目標にしており、いかにスピード感を持って効率化していけるか。キヤノンの生産技術を生かすことを含め、大きなポイントになる。

   産業機器などは売り上げの伸び率を一番高く見込んでいる期待の分野だ。有機ELパネルの製造装置の受注増などを見込むが、有機ELといえば米アップル社のiPhoneへの採用が製造装置の需要のベースにあり、iPhoneの動向次第という面がある。

   オフィス事業に含まれる商業印刷はチラシなど多品種少量の印刷に強いデジタル機の拡販をめざし、同分野で強いオランダのオセ社を7年前に1000億円で買収した。しかし、2017年度にオセを含め商業印刷の「のれん」の減損339億円を処理した。この分野は競合各他社も力を入れているだけに、期待通りの収益を上げていけるか、予断を許さない。

   キヤノンは2016年度に大幅な減収減益に陥り、17年度にリカバリーした。18年度は新規4事業でどこまで攻められるか。その行方が、次のステップの成否を左右することになる。

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