2018年 8月 22日 (水)

「草の根」国際交流に黄信号? 民泊「上乗せ規制」の思わぬ余波

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   一般住宅などの空き室に旅行者らを有料で泊める「民泊」の2018年6月全国解禁を前に、住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく関連事業者の登録・届け出が3月に始まった。政府は、20年の東京五輪・パラリンピックをにらみ、宿泊施設不足解消の決め手と位置付けており、シェアリングエコノミーの代表格として期待が高い一方、住民とのトラブルなど住環境悪化を懸念して自治体による「上乗せ規制」も多い。いかに上手に広げていくか、模索が続きそうだ。

   物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して、民間の埋もれた資源を有効に活用しようというシェアリングエコノミーは、米国を起点に世界で急拡大している。プロのドライバーではない一般人が自家用車で配車サービスを行う「ライドシェア」と並び、民泊はその代表格とされる。

  • 上乗せ規制の余波(画像はイメージ)
    上乗せ規制の余波(画像はイメージ)

ビジネスチャンスに期待感

   民泊は基本的に旅館業法で禁止されており、法の規定を満たして許可をもらうほか、国家戦略特区の一部自治体が試験的にはじめていた。しかし、海外からの旅行者の急増による宿泊施設不足、安い宿泊先の需要拡大を受けて、実態は法律よりはるかに先を進む。仲介業者のサイトに登録されたものだけで全国に5万件の民泊があるが、そのほとんどが違法な「ヤミ民泊」とされる。ここまでくると、いまさら取り締まるのは難しいことから、ルールを決めて合法化し、悪徳業者は排除しようと、2017年成立したのが民泊法なのだ。

   法制定により、2018年6月15日から年間180泊までを上限に認められることになった。事業者は届出が必要になり、宿泊者名簿の作成やチェックイン時の本人確認などが義務づけられる。問題がありと判断すれば、都道府県などの監督自治体が営業停止を命令でき、無届け営業への罰金の上限は3万円から一気に100万円に引き上げられる。

   ビジネスチャンスが広がる期待は大きい。例えば京王電鉄は国家戦略特区制度で民泊営業が認められた大田区内で2017年2月、地上6階建ての賃貸マンション1棟全体で民泊を開業。楽天は、不動産情報サイト「ライフルホームズ」を運営する「LIFULL」と共同で民泊仲介の子会社を設立、仲介だけでなく民泊参入を検討する法人・個人向けに内装や集客・清掃などの運営代行パッケージも提供する。民泊仲介サイト世界最大手の米Airbnb(エアビーアンドビー)は不動産情報サイト「SUUMO」を運営するリクルートグループと提携し、空いている賃貸物件を民泊に活用する。政府の規制改革会議では民泊の経済効果10兆円台との試算もが示されている。

自治体が「上乗せ」規制

   一方、現状では、各地で住民とのトラブルなど問題も続発している。基本的にネットの仲介サイトを通じた貸し借りで、貸主がいないマンションの1室などが民泊になるケースが多い。特に外国人の宿泊者が多いことから、ゴミ出しのマナーを守らない、夜中に騒ぐなどのトラブルが社会問題化している。例えば、外国人客が多く訪れる東京都新宿区への民泊に関連した苦情相談件数は2013年度の3件から、16年度は246件、17年度は1月までの10か月ですでに305件に達している。大阪でバラバラ殺人の舞台になったように、犯罪に悪用されやすいという問題も、クローズアップされている。

   このため、法律に「上乗せ」する形で各種の規制をかける自治体が多い。民泊は「生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において」、自治体による法律を超える制限を認めている。

   目立つのは住宅地での規制。兵庫県や神戸市、同県尼崎市は住居専用地域や学校周辺を中心に年間を通じて原則禁止する。都内では全国に先駆けて条例を成立させた大田区が住居専用地域や工業地域などで通年禁止。世田谷区は「住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」を制定し、同区の面積の78%を占める住居専用地域で月~金曜の宿泊(月曜正午~土曜正午の利用)を禁止するので、利用できるのは週末の2泊(土曜正午~月曜正午)と祝日だけになる。中野区も同様に月曜正午~金曜正午の利用を禁止する。

   観光地では京都市が、住居専用地域での民泊は町家で営業する場合や家主が物件内に居住するなどの例外を除き、冬の閑散期の60日間のみに営業を限定。金閣寺や南禅寺、下鴨神社などの観光名所の多くは住宅地に散在しており、周辺ではほぼ営業できなくなる。

   2月に政府がまとめたところでは、都道府県や政令市、中核市、東京特別区など全国144自治体が民泊の所管権限を持ち、都道府県に権限を委ねるところを除く102自治体が実際に事務を担う見込み。このうち制限しないのは33自治体だけで、44自治体が区域や期間を条例で制限する意向で、残る25自治体は模様眺めという。

「外国人排斥」につながりかねないとの危惧も

   住民の「自衛」も進む。マンション管理業協会(東京都港区)が加盟365社を対象に実施した2月4日時点の調査では、民泊を禁止するのは分譲マンション管理組合の80.5%にのぼった。騒音などを嫌うというだけでなく、トラブルでマンションの価値が下がるのではとの不安も背景にある。

   ただ、法律や条例で規制しても、ヤミ民泊を根絶できるかは微妙だ。大手仲介サイトなどがヤミ民泊を排除しても、取り締まりの難しい海外の仲介サイトを使うケースも、すでに出ているという。

   一方で、外国からの観光客のマナーが良くないことで、「外国人排斥」につながりかねないとの危惧もあり、国際交流NPO関係者は「東京五輪を控えて、日本人の真の国際かが問われる」と指摘する。実際、例えば自宅でもてなすように海外からの観光客を迎え、いわば草の根の国際交流をしていても、「住居専用地域」というだけで条例の網にかかり、宿泊できなくなるケースもあるなど、規制すれば事足りるわけではない。

   平穏な生活を乱されたくないという地域住民の素朴な感情は大切にしつつ、いかに国際化、さらに経済効率と折り合いをつけるか、民泊が日本人に問いかける問題は、思いのほか大きいのかもしれない。

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