2024年 5月 5日 (日)

【震災7年 明日への一歩】東電福島第一原発のいま 今も続く汚染水対策に知恵を絞る日々

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   J-CASTニュースは、東京電力福島第一原子力発電所をこのほど取材した。未曽有の事故から7年、現場はどう変わり、廃炉作業はどのように進められているのか、リポートする。

   多くの疑問の中で今回、取材テーマのひとつに据えたのが「汚染水対策」だ。1~3号機では、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすための注水が続いている。加えて、敷地の山側から流れ込む地下水や雨水が原子炉建屋に流入して「燃料デブリ」に触れた冷却水と混ざれば、それもまた汚染水に変わってしまう。

   その対策に、これまで様々な手を打ってきた東電。汚染水発生量は2年前と比べて4分の1まで減ってきた。

  • 東電福島第1原発。奥に1~4号機が見える(撮影・阿部稔哉、以下同)
    東電福島第1原発。奥に1~4号機が見える(撮影・阿部稔哉、以下同)
  • 地下水バイパス
    地下水バイパス
  • 地下水バイパス取材中の様子
    地下水バイパス取材中の様子
  • 何本もの配管が伸びていた
    何本もの配管が伸びていた
  • 配管に挟まれた凍結管の上部には、白く霜が降りていた
    配管に挟まれた凍結管の上部には、白く霜が降りていた
  • 4号機の目の前に、柵で囲われたサブドレンがあった
    4号機の目の前に、柵で囲われたサブドレンがあった
  • 東電福島第1原発。奥に1~4号機が見える(撮影・阿部稔哉、以下同)
  • 地下水バイパス
  • 地下水バイパス取材中の様子
  • 何本もの配管が伸びていた
  • 配管に挟まれた凍結管の上部には、白く霜が降りていた
  • 4号機の目の前に、柵で囲われたサブドレンがあった

深さ30メートルある井戸で地下水をくみ上げる

   取材陣を乗せたバスは、1、2号機が間近に見える高台で止まった。1号機建屋上部のむき出しになった鉄骨や、巨大な排気筒、作業用クレーンが目の前に迫る。記者が下車すると、目の前に井戸の設備が現れた。

「地下水バイパスです。地下水が建屋に入る前にくみ上げるためのものです」

   東電の広報担当者は、こう説明した。この地点は海抜33.5メートルの場所だが、井戸の深さは30メートルある。こうした井戸は全部で12基あり、南北に並ぶ原子炉1号機から4号機の建屋に沿う形で山側に設置されているとの話だ。

   汚染水対策として東電は「汚染源を取り除く」「汚染源に水を近づけない」「汚染水を漏らさない」の3つの基本方針を立てている。

   汚染水のうち、核燃料を冷やす注水は循環させ、外部に漏れないようになっている。雨水についても、敷地内の地表面を広くモルタルで覆って地面にしみこませない対策をとった。建屋から汚染水が漏れ出さないよう水位管理を行っているが、海側には遮水壁を作り、万が一、汚染水の漏えい事故が生じた場合にも、海洋に漏れ出ることがないよう対策を講じている。これらに比べ量的に桁違いに多いのが地下水で、汚染水対策の中心は地下水対策といっても過言ではないようだ。

   広報担当者が言った「地下水バイパス」というのは原子炉建屋より山側につくられ、高所から流れてくる地下水が建屋の地中に入る前に抜いてしまう仕組みで「汚染源に水を近づけない」役割を持つ。くみ上げた水を分析し、水質基準を満たしていると確認できたら港湾外の海洋へ排水する。

   バスはその後、高台を下りて原子炉建屋方面に向かった。建屋が建つ場所の海抜は8.5メートル。下り坂をゆっくり進むにつれて、自分たちが高い場所にいたことを実感した。4号機に最も近付いたとき、窓から見える銀色の箱状のものを広報担当者が指差した。「サブドレン」と呼ばれ、地下水バイパスと同様に、地下水を建屋流入前にくみ上げて汚染水化を防ぐ井戸のことだ。

   さきほどの地下水バイパスの12基の井戸と建屋との間に設置され、42基が稼働している。説明を受けて初めて井戸だと分かるような地味な外見だが、建屋の目の前に掘られていることからサブドレンも「汚染源に水を近づけない」役割を担っている。

   くみ上げた水は浄化、水質検査のうえ安全が確認されたら、こちらは港湾内に排水する。これだけの数の井戸を設置、稼働させて、さらに水質管理を厳格に行っていることから、対策の徹底ぶりがうかがえる。

凍結管の上部には白く霜が降りていた

   地下水対策の中でも大がかりなのが、陸側遮水壁だ。1~4号機の周り約1.5キロを「凍らせた土壁」でぐるりと囲み、地下水を迂回させて建屋から遠ざける。土を凍らせるための凍結管は地中約30メートルまで埋められているため見ることはできないが、その規模や様子を感じる場面があった。

   3、4号機に近い高台で降車した記者の目に、銀色をした何本もの配管が地面と平行してずっと先まで伸びている光景が飛び込んできた。この中に、凍結管の中を循環して周辺の地盤を凍らせる冷媒の通り道として使われるパイプがあった。

   配管が建屋の周りに張り巡らされていることを実感したのは、バスで建屋の近くまで移動した際だ。一時停止して車窓から眺めると、地面をはうようにパイプが走っている。その間に挟まるように、地中深くに刺さっている凍結管の上部が地上に出ているのが見えた。その部分は、霜が降りて白くなっていた。凍結管は約1メートル間隔に埋設され、全1568本ある。

   東電の評価シミュレーションによると、複数の汚染水対策により雨水や地下水に起因する汚染水発生量は、陸側遮水壁閉合前の2015年12月~16年2月平均が1日あたり約490トンだったが、閉合後の17年12月~18年2月22日平均は約110トンとなり、発生量は4分の1まで低減。これに廃炉作業に伴い発生する建屋への移送量を足しても、1日あたりの発生量は約140トンになる。

   廃炉への「中長期ロードマップ」では、2020年内に150トンを目標に掲げており、直近データではこれを下回っている。汚染水を、何とかコントロールしようという現場の知恵が、数字のうえでも現れている。

   ただし発表されたデータは、雨量が少ない時期のものでもある。その点を質問すると、広報担当者は「評価は年間を通して行っていく予定」と言った。

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