2019年 1月 19日 (土)

パチモンから覗く中国・深セン 「Supreme姿のクリリン」から「親指サイズ携帯」まで

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   スマホカバー、スマホカバー、スマホカバー。右を見ても左を見ても、前を向いても後ろを向いても、視界に入るのはフックにかけられたスマホカバーばかり。

   フロアにひしめき合うのは、四畳半ほどのスペースの小さな店舗。その数は何十にもなる。それがすべて、スマートフォン用のカバーを売る業者だ。

  • 深セン・華強路で販売されていた「パチモン」スマホカバー
    深セン・華強路で販売されていた「パチモン」スマホカバー
  • 「Supreme」は大人気。ほかにも無数のパチモンが
    「Supreme」は大人気。ほかにも無数のパチモンが
  • 偽ミニスーファミ。正規ソフトから正体不明のハックロムまで
    偽ミニスーファミ。正規ソフトから正体不明のハックロムまで
  • とにかく小さい親指サイズ携帯
    とにかく小さい親指サイズ携帯
  • 華強北。写っている建物はいずれも電気街だ
    華強北。写っている建物はいずれも電気街だ

最先端とパチモンが併存

「ハウマッチ?」

   その店の一つでカバーを手に取り、カタカナ英語で問いかけた。20代の女性店長が電卓を叩く。10元(約160円)だ。OKすると、机の上のWeChat Pay(微信支付)のQRコードを指差された。傍らでは、店長の娘らしき子どもが遊んでいる。

   2018年8月、中国・深センの電気街「華強北(フアチャンベイ)」の光景である。

   香港の対岸にある深センは、中国を代表するIT都市として知られる。「華強北」はその心臓部ともいえる電気街だ。

   電気街、というと、秋葉原を思い浮かべるかもしれない。確かに似ている。昔ながらのパーツ街や、裏通りにあるガジェット系のショップと雰囲気が近い。ただ、規模がとにかくデカい。

   一画にはショッピングモールほどの大きさの建物が何軒も立ち並び、その中にぎっしりと小規模な業者が入居、電子部品からPC、スマホ、家電、ドローン、おもちゃに至るまで、ありとあらゆるデジタルガジェットを売る。店舗数はなんと、1万を超えるという。

   そこには最先端の製品が集まる。一方、いわゆる「パチモン」も横行している。

   上記のようなスマホカバー店街は、その典型だ。「宝格通信市場」では、3フロアがスマホ用のカバーを扱う小店舗で埋め尽くされている。だが、売り場には、笑ってしまうほどあからさまなパチモンが少なくない。

   たとえば、人気ブランドの「Supreme(シュプリーム)」のロゴが描かれたカバーは、数えきれないほど見かけた。ある店で売られていたのは、「Supr」の4文字とともに、ルイ・ヴィトンのロゴがあしらわれたカバーである。ブランド効果なのか、25元(約400円)という強気の値段だ。

セラムン、クレしん、まる子などが人気

   日本のアニメキャラもいる。人気どころは、ドラゴンボール、セーラームーン、クレヨンしんちゃん、ドラえもん、ちびまる子ちゃん。最近の作品は少なく、ONE PIECEとNARUTOくらいだ。単に既存の画像をパクるのではなく、アレンジを加えているものが多いのが目を惹く。

   たとえば「ドラゴンボール」のクリリンがSupremeを着ていたり、「セーラームーン」の月野うさぎがインスタグラムをやっていたり。画像を流用するにしても、目元だけをアップにするなど、その編集はかなり大胆だ。中には、別作品のキャラ同士が一つの商品に描かれていることもある。

   公式では「ありえない」改変や組み合わせである。著作権者としてはたまったものではない。だが結果的に、現代アート的ともいえる、ある種のオリジナリティーが生まれている。

収録本数競い合う「偽ミニスーファミ」

   スマホ・通信のファーウェイやZTE、ゲーム・ITのテンセント、ドローンのDJIなどが本社を置き、いまや国際的な先端都市となった深セン。そこで今なお出回るパチモンたちには上記のスマホカバーをはじめ、ある種のイズムが感じられる。パクリだろうがなんだろうが、先行製品にはない(できない)ものを加えて客の心をつかんでやる、という商魂であり、過剰なまでのサービス精神である。

   たとえば偽「ミニスーファミ」だ。デザイン、収録ソフトはまったくのコピーだが、せめて収録作数(オリジナルは21本)では負けまいとしたのだろう。ある商品は300本。後発と見られる別の商品は620本。さらに最後発らしき商品は「621本」収録をうたう。ただし入っているソフトはいずれもファミコンで、「ボンバーマリオ」や「マリオ10」など、かなり怪しいタイトルで水増しされているが......。

   別の売り場では、アクションカメラが大量に店頭に並んでいた。業者は様々だが、いずれも見た目はGoProそっくりだ。マウント(アクセサリー)も共用できる。ここまで来ると、もはやひとつのプラットフォームだ。値段も、高機能をうたうモデルで180元(約3000円)と、比べ物にならないほど安い(性能は推して知るべし)。

「華強北」走り回る子どもたち

   同じフロアで見つけたのは、「L8STAR」なるブランドの携帯電話「BM10」である。携帯研究家の山根康弘氏がすでに紹介している通り、デザインはノキアの復刻版「3310」とうり二つである(別の売り場ではノキアのロゴが入った同型機を見かけた)。

   が、このBM10がすごいのは縦幅68mm――成人男性の親指ほどのサイズという点だ。これでBluetoothにも対応し、スマホとひもづけて受信機代わりに使うこともできる。パチモンといえばそれまでだが、「超小型化」という突き抜けた改変の結果、少なくとも大手メーカーには「ありえない」製品となった。

   深センが中国政府により経済特区に指定されたのは、1980年のことだ。それから40年弱。2018年8月にはファーウェイ・ZTEが米政府から締め出され、同じ月には「テンセント・ショック」が世界的な混乱を招くなど、深センから誕生した国際企業たちは今、岐路に立たされているようにもみえる。

   そんな中でも、野放図に売られ続けるパチモンたち。中国語ではパチモンを「山寨(ゲリラ)」と呼ぶが、まさに非正規軍的なエネルギーが、まだ深センには漂っている。

(J-CASTニュース編集部 竹内 翔)

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