2018年 12月 12日 (水)

鳥越俊太郎氏「電子マネー」断固拒否 日本のキャッシュレス化やっぱり道遠い?

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   「我々に電子マネーを強制するな!」――そんなタイトルの談話を世に問うたのが、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、御年78歳だ。「現金世代」の鳥越氏としては、「支払いはキャッシュじゃないと落ち着かない」。電子マネー社会の進展に、大いに疑問を呈した。

   ネット民からは冷笑を買ったこのご主張だが、とはいえ、鳥越氏のような人は、意外にも少なくない。政府も電子マネー社会、キャッシュレス化を強く推進しているが、なかなか思うように進んでいるとは言い難い。

  • 「現金派」宣言の鳥越俊太郎氏(2017年撮影)
    「現金派」宣言の鳥越俊太郎氏(2017年撮影)
  • 中国・深センの無人コンビニ。アプリを使って開錠し、スマホ決済で支払う(2018年8月撮影)
    中国・深センの無人コンビニ。アプリを使って開錠し、スマホ決済で支払う(2018年8月撮影)

「お釣りをもらって会話があるほうが...」

   談話が掲載されたのは、2018年10月1日発売の「週刊ポスト」(10月19日号)だ。「老年の主張」と題したワイド特集の一環で、他の「各界の重鎮」とともに、今の世の中に物申している。

   冒頭にも紹介したとおり、鳥越氏がやり玉に挙げたのは「電子マネー」である。キャッシュレス化が進む昨今、「現金派」の氏はようやく時折カードこそ使うようになったが、ガラケー派なのでスマートフォン決済はとてもじゃないが無理だ。

   編集部による地の文でも、ある映画館では、キャッシュレス専用レジがガラガラなのに、現金専用レジが長蛇の列、という光景が見られるとして、「『電子マネーの使えない年寄りは行列に並べ』と言われているのと同じである」と担当記者が憤慨する。

「(キャッシュレス化は)確かに便利だけれど、レジで直接、お釣りを渡してもらって会話があるほうが、生活が明るくなるでしょ」

   鳥越氏によるこんな訴えで、文章は締めくくられている。

   この記事が、小学館のネットメディア「マネーポスト」に3日掲載されると、ツイッターなどのSNSには辛辣な声が広がった。

高須院長(73)「鳥越さんが順応できないだけだよ」

「鳥越さん、ちょっと老害拗らせ過ぎですよ」
「言いたいことは分からなくもないけど、そーいう時代でしょ?」
「『時代についていけない我々に優しい世の中にしろ!世の進歩など知ったことか!』とわがまま意のまま鳥越俊太郎。お前だけの世の中ではない」
「永遠に貝殻だの石のお金でやりくりしてろ」

   鳥越氏の5歳年下、73歳の高須クリニック・高須克弥院長も、こうバッサリ切り捨てる。

「鳥越さんが順応できないだけだよ。わしの老人仲間はSuicaなしでは暮らせない。100万円くらいいっぺんにチャージできんのかのう」

   とはいえ、こうした意見は鳥越氏だけのものではない。

   博報堂生活総合研究所による2017年の意識調査では、キャッシュレス社会に「なった方がよい」とした人が48.6%だったのに対し、「ならない方がよい」は51.4%と多数派を占める。理由としては鳥越氏が上記記事で挙げているのと同じく、「浪費しそうだから」「お金の感覚がマヒしそうだから」「お金のありがたみがなくなりそうだから」といった理由が上位を占める。

   実際、経産省がまとめた「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%と、45.0%の米国、60.0%の中国などと比べ、主要国の中ではかなり低い。経産省の言葉を借りれば、「キャッシュレス社会の実現という点では、他国に遅れを取っているのが実情である」。

「おひねり」までQRコード化する中国

   キャッシュレス化社会、というと、しばしば比較対象に挙げられるのは中国だ。

   クレジットカードの普及が遅れた中国では、その代わりに「WeChat Pay」などのアプリを使ったスマホ決済が急速に広まっている。QRコードを読み取るだけと使い方は簡単、導入コストも安い。

   2018年夏の中国・深センの街では、中小の商店からコンビニ、大手チェーンにいたるまで、あらゆる場所でスマホ決済がファースト・チョイスだった。紙幣を取り出すと「あ~、現金ね」という顔をされる。ストリートミュージシャンへの「おひねり」までQRコードだ。「現金派」だったのは(少なくとも記者が見た中では)路上の「物乞い」のみだった。

   スマホ決済の普及は、新たな商機にもつながる。「自動販売機が当たり前なのは、治安がいい日本くらい」という話は、あなたも聞いたことがあるかもしれない。しかし中国でもキャッシュレスとなったことで、現金強奪のリスクが減少した。結果的に自販機はもちろん、スマホで開錠するシステムの「無人コンビニ」や、QRコードで料金を支払うと動き出す「有料マッサージチェア」など、日本ではなかなか見かけない業態が誕生している。

政権は「4割」目指すが

   こうした動きに乗り遅れまいと安倍政権は、キャッシュレス化の進展を目指している。経産省は4月、上述した決済比率を、現在の2倍にあたる40%まで引き上げるという目標を決めた。

   ビジネスチャンスとして、民間からも参入が続く。特に注目度の高いQRコード決済には、既発のLINEやNTTドコモ、楽天に加え、「Amazon Pay」(アマゾンジャパン)、「PayPay」(ソフトバンク・ヤフー)など、「大型新人」が相次いでデビューしている。

   とはいえ、時間はまだまだかかるとの見方が強い。中国ではニセ札が蔓延するなど、現金への不信感があったこともスマホ決済普及を後押ししたが、日本は逆に「リアルマネー」への信頼感が極めて高い。9月の北海道胆振東部地震に伴う大停電では、電子マネーが使用不能になる場面もあったが、天災の多い日本では、こうした事態への備えも課題となる。

   こうした壁を乗り越え、鳥越氏が電子マネーを使う日はやってくるか。

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