2024年 4月 26日 (金)

「安倍首相に頑張ってもらうしか...」 与党幹部がつぶやく理由

   「外交の安倍」。そんな言葉があるほど、安倍晋三首相にとって外交での「成果」は(賛否両論があるにせよ)セールスポイントの一つだ。

   しかし直近の世界情勢は、そんな首相を試すように、厳しさの度を増している。中間選挙を終えて来日したマイク・ペンス米副大統領が早速、「(日米間の)貿易不均衡はあまりにも長く続いている」と不満をぶちまけるひとコマがあるなど、トランプ政権の強硬姿勢に拍車がかかるとの警戒感が高まり、また日中、日露関係も絡むこの状況。安倍首相は果たして乗り切ることができるか――。

  • 13日、ペンス副大統領と握手を交わす安倍首相。その胸の内は(首相官邸ウェブサイトより)
    13日、ペンス副大統領と握手を交わす安倍首相。その胸の内は(首相官邸ウェブサイトより)
  • 13日、ペンス副大統領と握手を交わす安倍首相。その胸の内は(首相官邸ウェブサイトより)

ペンスの本音「FTAについて...」

   中間選挙後の米政権幹部との初の会談となった13日の安倍晋三首相とペンス副大統領の会談は、対中国をはじめとする外交・安保と、年明け開始の日米「物品貿易協定(TAG)」交渉が2大テーマだった。このうち対中国では日米が緊密に連携することで一致した。

   一方、日米の貿易問題については、会談後の記者発表で副大統領は「米国の商品やサービスは、あまりに多くの貿易面の障壁に直面し、日本市場で公正に競争できなかった」と述べた。米農産品への関税や、「非関税障壁」と批判してきた日本の自動車安全基準などが念頭にあるとみられ、「貿易協定がまとまれば、物品だけでなく、サービスなどの重要分野でも(貿易上の)条件を定めると確信している」と指摘した。

   日本は安倍首相が、サービスなども包括的に含む「自由貿易協定(FTA)交渉はしない」と「公約」してきた手前、モノの貿易に絞った「TAG」だと説明しているが、ペンス副大統領は来日前の12日、ツイッターに「安倍首相とFTAについて議論する」と投稿したように、事実上のFTA交渉にすることも含め、日本に対し、通商面では厳しい姿勢で臨んでくるのは必至だ。

   米側の姿勢は、中間選挙により、一段と硬化するとの見方が強いようだ。

読み切れない米国側の態度

   中間選挙は、上院が引き続き与党・共和党が多数派を維持する一方、下院は民主党が過半数を奪還するという大方の予想通りの結果になった。上下両院の「ねじれ」で、経済政策はトランプ政権の思い通りの法案が、民主党の抵抗で通らず、これまでのように、大胆な減税や財政出動はしにくくなる可能性が高い。

   そうなれば「トランプ大統領は、議会を通さなくても実行できる通商政策に力点を置き、支持者にアピールすることで2年後の大統領再選を目指すだろうから、貿易問題はより先鋭化する」(エコノミスト)などと予測する声が強い。

   実際の日米交渉への影響はどうなるだろう。年末に米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効する。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)も今国会での承認を経て2019年2月に発効する予定だ。

   例えば2つの協定により、オーストラリアや欧州から日本への牛肉・豚肉の関税が下がる。米農業界では、日本市場を奪われかねないとの懸念が強まっているとされ、日米交渉を早期にまとめようという圧力は強まる可能性がある。「だから、米国がより強硬になるか、日本の主張にも一定の配慮をして早期妥結を優先するかは読み切れない」(通商関係者)ところだ。

「具体的成果はほとんどない」(野党議員)

   他にも目配りの必要な要素はある。米中、日中関係の連立方程式が一つ。安倍首相は10月、7年ぶりに中国を公式訪問して習近平国家主席と会談し、関係改善に踏み出した。米中関係は、ペンス副大統領が10月4日の講演で「中国は陸・海・空で米国の優位を侵食しようとしている」と強硬姿勢に転換し、「新冷戦」が現実味を帯びつつある。その中で、安倍首相が日中関係改善をどう進めていくか、難しいかじ取りが求められる。

   外交テーマに急浮上した北方領土をめぐる日露交渉でも、仮に2島なりが日本に引き渡された場合に軍事基地をどうするかなど、安保条約との関係で日米間の調整が不可欠だが、どう進めるか、予断を許さない。

   「これだけ難しい局面で、経験豊富、世界に顔が利く安倍首相に頑張ってもらう以外にない」(与党幹部)との声の一方、「世界中飛び回るだけで、具体的成果はほとんどない」(野党議員)との批判も聞こえる。まさに、「外交の安倍」の真価が問われる局面に差し掛かっている。

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