2019年 11月 13日 (水)

離脱「延期」でもドミノは止まらない ブレグジットに揺れる日本企業

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   日本時間2019年3月15日未明、英下院が延期動議を条件付きで可決したことで、「3月29日」とされてきた欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)の行方は、さらに不透明感を増しつつある。

   スムーズな離脱が成功するのか、合意なき離脱になだれこむのか、それとも――先が見通せない状況で、英国に拠点を置く日本企業は、「決断」を迫られている。

  • いまだ見通せない離脱の行方(Wikimedia Commonsより)
    いまだ見通せない離脱の行方(Wikimedia Commonsより)

「合意なき離脱」なら世界経済の不安要素に

   自動車メーカー3社が英国での生産終了や、将来の撤退の検討などを相次いで表明したのが代表だ。現実味を帯びる「合意なき離脱」となった場合、生産の混乱から英国経済が落ち込み、世界経済の新たな不安要素になる懸念が強まっていることがその背景にある。

   撤退を打ち出したのがホンダだ。2月19日、欧州で唯一の四輪車の生産拠点である英国南部スウィンドン工場での生産を2021年中に終えると発表した。同工場は1985年に設立、2018年は主力車シビックを約16万台生産したが、欧州向けが不振のため、北米に55%、日本などに10%を輸出。英国を除くEU域内向けが20%、英国内の出荷は15%に過ぎない。次期モデルの生産は北米などに移すとみられる。同工場では3500人が働いており、部品メーカーも含めた雇用や地域経済への影響は大きく、今後の労使や英国政府、地域との協議はもめそうだ。

   八郷(はちごう)隆弘社長は東京都内で開いた記者会見で、電動化の加速に対応できる生産体制の確立が目的だとして、「欧州での生産は競争力の観点から難しいと判断した」と説明。英国のEU離脱は「考慮していない」と、無関係を強調した。ただ、先の見えないEU離脱問題に産業界は苛立ちを募らせており、ホンダの決断をこうした脈絡で受け止める向きが多い。

トヨタだけで英国自動車の1割弱

   「ホンダ・ショック」冷めやらぬうち、今度はトヨタ自動車からも弾が飛び出した。トヨタの欧州統括会社「トヨタモーターヨーロッパ」のヨハン・ファン・ゼイル社長が3月6日、「合意なき離脱」となった場合、将来的に英国生産から撤退する可能性もあるとの見解を表明した。

   トヨタは英国中部のバーナストンに完成車工場、同ディーサイドにエンジン工場を構え、両工場の雇用は計約3200人に達する。バーナストン工場で2018年に12.9万台を生産し、英国の自動車産業全体の1割弱を占める。2019年1月に欧州で発売した「カローラ(旧オーリス)」の新モデルの生産を始めたばかりだ。

   トヨタの英国工場は部品の5割程度を、英国を除くEU加盟国から調達し、完成車の9割をEU加盟国に輸出している。EU域内の関税はゼロだが、ブレグジットで世界貿易機関(WTO)が定める10%になれば収益は大幅に悪化する。今後の英・EUの離脱交渉、関税交渉を見極めながら、次期モデルへの切り替え時期となる2023年に向けて判断していくことになるとみられる。

   2社より先、日産自動車も2月3日、中部サンダーランドの工場でスポーツ用多目的車(SUV)「エクストレイル」の次期モデルを生産する計画を撤回し、日産自動車九州(福岡県苅田町)で生産すると発表している。

   海外勢も、英国にエンジンの2工場を持つ米フォード・モーターが同12日のメイ英首相との電話会談で、EU離脱後の状況次第で、英国の生産拠点を海外に移す可能性を伝えた。独BMWも、小型車「ミニ」の生産を4月に約1カ月間休む方針に加え、生産を英国外に移す検討もしていると英メディアが報じている。

「まだ間に合う」英国に呼びかけた毎日新聞

   関連業界では仏タイヤ大手のミシュランが2020年半ばまでにスコットランドの工場閉鎖を表明済み。その他の業界でも、パナソニックやソニーが、英国にある欧州法人の登記上の本社あるいは本社機能をオランダに移す方針を示している。ロンドンの金融街シティでは、金融機関が拠点や資産を海外に移す動きが広がっている。

   大手紙は日本企業の英撤退などの動きを逐一報じている。社説でもホンダの撤退表明を受け、2月21、22日に日経、読売、毎日が社説、産経は「主張」で一斉に取り上げ、関心の高さを示した。「離脱は無関係だとするホンダの説明を額面通り信じるのは難しい」(毎日)と、いずれもブレグジットと関連させる内容だ。

   問題意識はほぼ共通。「英国の迷走は目に余り、関係する日本企業の困惑は深まるばかりだ」(日経)などと、企業の困惑を指摘し、このままでは「幅広い分野で、企業の『英国離れ』が加速するのは避けられまい」(読売)と警告。理由を「誰も望まぬ『合意なき離脱』に突き進む英国政治の混乱にほかならない」(産経)と批判する点でも共通する。

   前述したとおり、ひとまず英国は離脱を「延期」する方向に舵を切ったものの、これが認められるかは定かでなく、かつ一時しのぎなは明らかだ。展望は開けていない。「なぜ多くの外国企業が英国に進出したのか......巨大なEU市場への自由な入り口として魅力だったことが大きい。その魅力がうせたらどうなるか。残された時間は限られるが、まだ間に合う」(毎日)と、英政界のギリギリの対応を求めている。

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