2019年 10月 15日 (火)

「良い食材だから買っている」 日本料理店「ピアシス」がこだわる「福島づくし」

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   東京・JR新橋駅の烏森口を出て間もない桜田公園のそばにある日本料理店「ピアシス」。この店の特徴は何といっても、置いてある日本酒の全てが福島県産という点だ。

   東日本大震災の衝撃が色濃く残る2011年11月から、「福島酒援・食援」と銘打ち、福島県を支援する姿勢を貫き、営業を続けている。日本酒に合わせ、食材の多くも福島産をそろえてメニュー作りに励んできた。高品質な素材から生まれる上質な料理を堪能すべく、訪れる客は後を絶たず、連日、「満員御礼」の状態が続いている。

日本酒では金賞の数が6年連続最多の福島県

   「福島県民の皆さんですら、なかなか手に入れられないお酒もあるんですよ」と、自信を見せるのは、店長の田中葉子さん。

ピアシス新橋店で店長を務める田中葉子さん
ピアシス新橋店で店長を務める田中葉子さん

   店内のカウンター付近には、インターナショナルワインチャレンジで2018年のチャンピオンに輝いた「奥の松・あだたら吟醸」や、2015年のチャンピオンに輝いた「会津ほまれ播州山田錦純米大吟醸」をはじめ、約70種類の自慢の酒が所狭しと並ぶ。福島県公認の「福島酒アンバサダー」の称号を持つ田中さんは、震災から半年後となる2011年9月に福島県内にある酒屋を視察。その際に、酒屋の従業員の言葉に心を打たれたという。

   「東京電力福島第一原子力発電所から30キロメートル圏内にある福島県広野町にある酒屋を訪問しました。その際、被災された酒屋の女将さんが『賠償金はあっても、自分たちの力で代々伝わる酒屋を続けたい』と強く願っていることを知りました。そこで、我々に何が出来るかということを考えた結果、この酒屋から福島産の酒を買うことにしたんです」

   福島の酒の長所を田中さんに聞くと、「味の良さはもちろん、作っている人の良さが出ていると思います」という言葉が返ってきた。

店長自慢の福島の日本酒。真ん中は2015年インターナショナルワインチャレンジでチャンピオン輝いた「会津ほまれ」醸造の播州山田錦純米大吟醸
店長自慢の福島の日本酒。真ん中は2015年インターナショナルワインチャレンジでチャンピオン輝いた「会津ほまれ」醸造の播州山田錦純米大吟醸

   福島県の日本酒は2013年~18年にかけて、6年連続で全国新酒鑑評会で金賞受賞数が日本最多となっているが、その金賞についても、田中さんの口からは仕込みの現場を見てきた人ならではの感想が飛び出した。

   「蔵元を回っていると、皆さん、本当に酒造りが好きで、『好きでやっていたら、たまたま金賞を取っちゃった』という感じの蔵元すらあります。ゆえに、商売下手な感じはします(笑)。商業的なことはあまり気にせず、『良い酒なのでどんどん飲んでくれ』という思いを強く感じました」

「福島料理」は目立たないが、食材はピカ一

   6年連続で金賞が最多を記録するなど、酒づくりのレベルの高さを見せつけている福島県。その酒と一緒に食される料理に使われる食材はどうなのだろうか。

   「東京には福島をメインにしている飲食店は少ない。『北海道料理』と言われればジンギスカンなどがパッと思いつきますが、『福島料理』と言われてもピンとこないでしょう。確かに、目立つ料理は少ないですが、その一方で、福島産の食材は実に品質が良く、本当に、どれもおいしい」

   目を輝かせながら福島産の食材の長所を語る料理長の濱田憲一さん。数あるオススメ食材の中でも特に自信を持って出しているのが福島牛だという。  福島牛は、磐梯山や猪苗代湖、あぶくま高原など、県内各地で生産されている黒毛和牛だ。1998年には「全国肉用牛枝肉共励会」で日本一となる名誉賞に輝き、その名を全国にとどろかせた。その後も様々な賞を受賞し、知名度は着実に向上してきている。

ピアシス新橋店で料理長を務める濱田憲一さん
ピアシス新橋店で料理長を務める濱田憲一さん

   「福島牛はサシが入っているにもかかわらず重たくないので、その上品な味わい深さが特長です。また、福島は荏胡麻味噌(えごまみそ)が名産品なので、それで作ったソースを福島牛の低温調理のローストビーフに添えました。さらに、季節もので言うと、春はアスパラガスが柔らかくて美味です。あと、果物ではイチゴや桃ですね。福島は寒暖の差あり、良質な水ありなので、作物を育てるには最高です」

   常磐もののヒラメやメヒカリなどもオススメだという。また、濱田さんは、復興が進む福島産の食材を使う際の思いについても語ってくれた。

料理長イチ押しの低温調理によるローストビーフ
料理長イチ押しの低温調理によるローストビーフ

   「福島への支援が目的で始めたことですが、購入した当初から、品質の高さを感じていました。つまり、支援のために買っているというよりは、今は良い素材だから買っている。それが、結果的に支援になっているという状態なんです。

   福島では生産者の皆さんが、いまだ残る風評被害を払拭すべく、本当に丁寧に検査をしたうえで出荷している。そういう細やかさが作物を育てる際にも反映されていて、作物の品質が高いです」

さらなる広がりを見せる「支援の輪」

   「支援」という、どこか上から目線な話ではなく、あくまで「品質が良いから買っている」という姿勢で店の運営を続けている田中さんと濱田さん。その姿勢は店の外にも及んでいる。

   「うちの社長は『いったんご縁が出来ると、ご縁がご縁を呼ぶ』とよく言うんです。実際、1件の地元の酒屋さんとの出会いがきっかけとなって、ご縁が広がって『福島酒援』がはじまり、そこから、もっと福島の酒を知ってもらうべく、近年はイベントを開くようになりました」

   2015年から『がんばっぺ福島!応援の集い』というイベントを年1回開催。毎回約700人を招いて福島産の酒と料理を振る舞う。イベントで出す料理は料理長が3か月前からメニューを立て始め、直前の数日は調理場に泊まり込みで作る気合の入れようだという。また、ピアシス新橋店を経営する社長の浅野正義さんによると、2016年からは店のすぐそばにある新橋駅前の「SL広場」で、「ふくしまの酒まつり」を開催。第3回(2018年)は54の蔵元が170銘柄を出品し、3万8000人の来場者で賑わった。

   震災から8年。福島県産の品質が良い食材を使った美味しい料理とお酒でご縁をつなぎ、ピアシスは「福島酒援・食援」を続けていく。

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