2024年 4月 26日 (金)

プーチンの狙いは本当に「院政」なのか 識者が読むいくつかの可能性

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   ロシアでメドベージェフ首相(54)が内閣総辞職を突然発表した。プーチン大統領(67)が演説で、大統領の任期規定変更を含む憲法改正案を打ち出した直後のことだ。日本や欧米のメディアでは、プーチン氏による2024年の大統領退任後を見据えた「『プーチン院政』への始動」(日本経済新聞)といった見方が広がっている。

   今回のプーチン演説と内閣総辞職の背後にあるプーチン氏の思惑とは何か。ロシアの情勢や安全保障政策に詳しい専門家に話を聞いた。

  • プーチン大統領の狙いとは(画像は政府インターネットテレビ、2016年12月の安倍晋三首相との共同記者会見の様子より)
    プーチン大統領の狙いとは(画像は政府インターネットテレビ、2016年12月の安倍晋三首相との共同記者会見の様子より)
  • プーチン大統領の狙いとは(画像は政府インターネットテレビ、2016年12月の安倍晋三首相との共同記者会見の様子より)

「院政」予測も

   プーチン大統領は2020年1月15日(現地時間)、年次教書演説の中で大統領任期規定の変更などを盛り込んだ憲法改正を行うべきだ、との考えを示した。メドベージェフ首相はその後、内閣総辞職を発表。時事通信などによると、メドベージェフ氏は理由について、「(改憲に向けて)大統領がすべての必要な決定を下せるようにしなければならない」と説明した。

   後任首相についてプーチン氏は、ミシュスチン連邦税務局長官を提案した(翌日、下院で承認)。また、メドベージェフ氏を安全保障会議の副議長とする考えも示した。

   こうした動きを報じたメディアでは、

「(略)権力維持に布石か」(CNN日本語ウェブ版、16日)
「ロシア、24年の『プーチン院政』へ始動(略)」(日経電子版、16日)

といった見立てを披露する記事が相次いだ。憲法改正の内容では、大統領権力を弱める(組閣の際の下院権限を強化する)狙いは、自身の後任大統領に権力が集中しないようにして、退任後の自身の実権を確保することにある、との解説も多く見受けられた。

   また、プーチン氏は大統領任期について2019年12月、現行憲法で「連続2期」までと規定している点について、「連続」を削除してもよいとの考えを示していて、今回の演説でも言及した。「連続」を削除すれば、通算2期までとなり、現在通算4期目のプーチン氏は、24年の任期満了以降は再登板ができなくなる。

24年以降は「大統領」就かないが...影響力は保持?

   プーチン氏が2000年に就任して以降の大統領は、氏が08年まで2期(当時の1期は4年)、08年からの1期(12年まで)は今回総辞職を発表したメドベージェフ氏が務めた(この間、プーチン氏は首相として実権を握る)。12年からプーチン氏が再登板し(1期は6年に)、18年から連続2期目(通算4期目)に突入、その任期は24年に切れる。従来規定のままなら、また後任大統領をはさんだ後で、早ければ30年にプーチン氏が返り咲くことができるが、「通算2期まで」と規定が変わればその可能性は消える。

   今回の内閣総辞職とプーチン演説の狙いはどこにあるのか。J-CASTニュースが1月17日、ロシア関係の多くの著書がある東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠・特任助教(ロシア安全保障政策など)に話を聞いた。小泉氏は2019年、著書『「帝国」ロシアの地政学――「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)で、第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)を受賞している。

   小泉氏によると、今回のプーチン演説の最大のポイントは、大統領任期に関する変更意向をはっきり言ったことで、任期切れの2024年以降は大統領職に就かない姿勢を示した、と考えてよい。

   2点目の大統領権限を弱める(組閣の際の下院権限強化)件では、24年に大統領職を引いた以降も政治的影響力を自身に残す意図が見受けられる。

   さらにもう1点、気になる論点としては、ロシアで高官になる条件に「25年以上連続でロシア国内に住んでいること」などを挙げたことで、これは海外留学組で西欧に近い考えのリベラル派の政治的ライバルを排除したい考えを示したものとみられる。

なぜこのタイミングに?

   以上のような「変更」案の背後にあるプーチン氏の思惑については、「院政」(日経)、「実権維持にらんだ布石か」(読売オンライン版、16日)といった報道が目立つ。小泉氏の見方はどうか。

「『院政』という言葉でイメージされるほど強い実権を全ての分野で維持しようとしているのか、それとも、例えば安全保障分野の長として睨みを利かすといった形を考えているのか、そこはまだ、はっきりとは見えてこない」

   つまり、現在のような強い権力を握り続けるつもりである可能性もあるが、後継者が育つ状況を見ながら自身が安全に身を引くための段階的な措置を取ろうとしているかもしれず、今後の見極めが必要だというわけだ。

   それでは、今回の内閣総辞職はどう見るか。2024年以降を見据えた動きとしては早すぎないか。小泉氏は2つの可能性を指摘した。

   1つ目は、憲法改正をして「2024年以降」に備えるためには3~4年が必要とプーチン氏が判断し、また首相には、実務的な能力に疑問符がつくメドベージェフ氏よりも実務家が望ましいと考えた、というもの。

   2つ目に考えられるのは、プーチン氏が後継を育てるために2024年を待たずに大統領職を引くことだ。プーチン氏の健康問題が関係している可能性も排除はできない。

   また、メドベージェフ氏については、昨今の支持率低下などを受け「更迭された可能性」(ザ・ウォールストリート・ジャーナル日本語ウェブ版、16日)を指摘する向きもあるが、小泉氏は、「後継」としての目はまだ消えていないと見ている。

   ロシア国内では経済低迷や年金改革への不満から政府への反発も強まっている。プーチン氏の思惑がどうあれ、希望通り事が進むかどうかは未知数だ。

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