2024年 4月 26日 (金)

ボクシング「体重超過」なぜなくならない? 興行優先、処分の軽さが選手の甘えに...

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   ボクシングの世界戦で王者が体重を超過する失態を犯した。

   WBC世界スーパーミドル級タイトル戦が2020年8月15日(日本時間16日)に米コネティカット州で行われ、デビッド・ベナビデス(米国)がロアメール・アングロ(コロンビア)を10回TKOで下した。ベナビデスは前日計量でリミットを約1.3キロオーバーし、再計量に臨むことなく王座をはく奪された。

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体重超過は国内でも問題視

   本来ならば王者ベナビデスの防衛戦として行われるはずだった一戦は、前日の段階で王座が空位となったため挑戦者アングロが勝利した時のみ王座が移動するというイレギュラーなものとなった。試合は正規リミットを1キロ以上もオーバーしたベナビデスが序盤からアングロを圧倒。10回TKOでデビューから23連勝(20KO)としたが、なんとも後味の悪い結末だった。

   ボクシング界では世界的に体重超過が深刻な問題となっている。世界最高峰の舞台であるはずの世界戦ですらたびたび体重を超過する選手がみられる。海外ではノンタイトル戦での体重超過は後を絶たず、日本国内でも体重超過は問題視されている。減量が仕事のひとつであるボクサーがなぜリミットを守ることができないのか。選手の考えが甘いと言ってしまえばそれまでだが、ボクシングの持つ興行的な側面がひとつの要因となっているだろう。

   プロの世界において一方の選手が体重を超過してもカードそのものが無くなるケースは稀である。世界戦ならばなおさらだ。世界戦のケースでいえば、王者が体重を超過すれば王座をはく奪、挑戦者が超過した場合は挑戦資格を失う。前述のように変則的なタイトルマッチになる場合もあれば、ノンタイトル戦に変更されることもある。これに加えてファイトマネーの減額、統括団体がペナルティーを与えるケースもある。

比嘉は復帰までに2年を要する

   日本では世界王者が体重を超過して王座をはく奪されたのは過去に1例だけで、2018年4月の世界戦でWBC世界フライ級王者・比嘉大吾(当時・白井具志堅)が体重超過により王座をはく奪された。日本ボクシングコミッション(JBC)は比嘉に対して厳しい姿勢を見せ、ライセンスの無期限停止処分の厳罰を科した。その後、処分が解除されたが、復帰のリングに上がるまで約2年を要した。

   日本国内で行われた世界戦で王者が体重を超過して王座をはく奪された事例を紐解くと、古くは1974年にまでさかのぼる。WBA世界フライ級タイトル戦で王者チャチャイ・チオノイ(タイ)が当日計量でリミットをオーバーし王座をはく奪された。王座が空位となり、タイトル戦は予定通りに行われ、挑戦者・花形進(横浜協栄)が6回KOでチャチャイを破り新王者となった。

   1998年にはWBA世界フェザー級タイトル戦が東京・代々木第二体育館で行われ、フレディ・ノーウッド(米国)が挑戦者・松本好二(ヨネクラ)を10TKOで破った。この試合の前日計量でノーウッドはリミットを800グラムオーバー。最終的に減量を放棄し、余力を残したまま試合を迎えたノーウッドはリング上でパワフルなボクシングを展開し松本を圧倒した。

ネリの体重超過は試合放棄に等しい愚行

   このような世界王者による体重超過のなかでも悪質とみられるのがルイス・ネリ(メキシコ)だろう。2018年3月に行われたWBC世界バンタム級タイトル戦の前日計量で約2.3キロオーバー。再計量まで2時間の猶予が与えられたが、結局リミットを約1.3キロ超過して王座をはく奪された。世界戦の計量で2キロ以上オーバーするのは試合放棄に等しい愚行で、ネリに敗れた山中慎介(帝拳)の無念は計り知れない。

   ボクシング界で体重超過がなくならないのは、失態を犯した選手に対する処分の甘さがひとつの要因として挙げられる。ネリの例でいえば、統括団体のWBCは当初、無期限の資格停止処分を発表したが、後に6カ月間の資格停止処分に変更された。ボクサーによっては試合間隔を半年ほど開ける者もおり、ネリに対するWBCの処分は甘いと言わざるを得ないだろう。

   また、体重超過をファイトマネーで調整しようとするプロモーターの存在も選手の甘えにつながっている。海外でよくみられるのは、一方の選手が体重を超過した場合、プロモーターが契約体重に切り替え、対戦相手にファイトマネーの増額を提示して試合を成立させるパターンだ。ノンタイトル戦ならば、体重超過を犯した選手に与えられるペナルティーはせいぜいファイトマネーの減額か口頭での注意くらいで、ライセンス停止処分などの厳罰がほとんどないのが現状だ。

   世界王者の体重超過は決してあってはならないことだが、今回ベナビデスが減量に失敗した経緯には新型コロナウイルスの影響があったようだ。ベナビデスいわく、これまで減量するために利用していた施設の使用が出来なくなり、減量に苦しんだという。約1.3キロ超過したばかりに王座を失ったベナビデス。2018年には薬物検査でコカインの陽性反応が出て王座をはく奪されており、これに続いての王座はく奪となった。

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