2024年 4月 26日 (金)

「消滅危機」から躍進の国民民主 独自路線の先に何を見る?玉木雄一郎代表に聞く【インタビュー】

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   衆院選で自民党や立憲民主党が議席を減らす中、いわゆる「野党共闘」に加わらず独自路線を取った国民民主党は公示前の8議席から11議席に増やした。玉木雄一郎代表がJ-CASTニュースの取材に応じ、特に経済政策を愚直に訴え、若者にも響いたことが奏功したとの見方を示した。

   「野党国対」の枠組みを離脱する一方で、維新との接近も指摘される。玉木氏によると「国民とは近距離、各党とは等距離」。与野党にかかわらず、政策単位で協力を求めていきたい考えだ。議席を減らした立憲については、共産党との選挙協力で「主張の現実性」などが「揺らいできている気がする」とも指摘した。改めて連携するとすれば、立憲が共産と「少なくとも政策的なものでは、ちゃんと一定の距離を置いて、現実路線でやっていく」ことが必要だとした。原油価格高騰への対策では、衆院選で追加公約として掲げたトリガー条項の凍結解除を引き続き訴える。憲法改正については、「自民党みたいにやたらめったら権力を広げようとする改正でも駄目だし、何でもかんでも『一字一句変えちゃ駄目だ』というのでも駄目」。憲法審査会を継続的に開いて議論を促進すべきだという立場だ。緊急事態条項についても「議論したらいい」とした。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)

  • J-CASTニュースの取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表
    J-CASTニュースの取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表
  • J-CASTニュースの取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表

経済政策にこだわって「見てくれている人は見てくれている」

   ―― 衆院選公示前には「もう消滅」「絶滅危惧種」など散々な言われようでしたが、8議席が11議席に伸びました。勝因をどう分析しますか。

玉木: 現職の6人は全員が選挙区で当選できましたし、比例でも5議席が取れたので、我々としては「よく生き残ったな」という思いです。一言で言うと、やはり国民の皆さんに有権者の皆さんに助けてもらったと思います。我々は結構愚直に政策を作って訴えて、特に経済政策に対しては、かなりこだわって訴えてきて、それでかなり手応えを感じることができたので、「見てくれている人は見てくれているな」というのが、正直な感想です。

   ―― どんな「手応え」でしたか。

玉木: 作ったパンフレットが足りなくなって増刷したぐらいなので、やはり公約を見たい、知りたいという声が結構あったのは事実です。衆院選では(自分が)一番長い距離を移動した党首らしいのですが、各演説会で必ず10代20代の若い人が集まってきてくれていました。やはりツイッターやユーチューブの「たまきチャンネル」などで発信してきたことの一つの効果だと思います。若い人に関心を持っていただけていますし、実際に各地の出口調査を見ても10代20代の支持は厚かったので、そういうところに届いていた、響いていたっていうのは、我々がむしろ勇気をいただきましたね。

   ―― 党のスケジュールは報道陣向けにもグーグルカレンダーで共有されていますが、長崎1区と茨城5区に壮大なリソースを投下しているように見えました。

玉木: 投下しました。絶対に、その1期生(17年10月の衆院選で初当選した世代。1年生、1回生)2人は負けられない、しかも共産党が候補者を立てている選挙区ですから、「そこで負けるわけにはいかん」と。そこで勝ってこそ自分たちの信じる政策や理念を訴え続けることができると思って、特に力を入れてそれぞれ3回ずつ(現地に)入りました。初日には長崎に行きましたし、最終日はマイク納めの時間まで茨城5区にいました。自分の選挙区にはほとんど帰っていないので、あの2つは絶対通さなければいけないと思っていました。結果が出て良かったです。

   ―― 特に長崎1区は自民党の対立候補が安倍晋三元首相の元秘書で「激戦区」だと言われていました。

玉木: やはり(選挙戦の)後半は手ごたえを感じてきました。正直、長崎1区は我々の事前調査では横一線だったんですね。だからテコ入れをして、本人(候補者の西岡秀子氏)も非常に頑張ったところもあるし、支援者の皆さんにも助けていただいて、最終的には(対立候補に)比例復活を許さないぐらい勝つことができたので良かったです。茨城5区は、調査では正直負けていました。共産党さんが立てて、「どうしても無理だろう」と言われていたところを一丸となって戦って、浅野(哲)候補も、選挙戦を通じて強くなったと思うんです。発するメッセージも非常に力強くなりました。本当に「代議士」になったな、という感じですね。

若い人が議員になれる道を開かないと、高齢者向けの政策ばかりに...

   ―― 当選した11人中5人が新人でした。これをどう評価しますか。比例票が後押しした、党名が浸透してきたという見方もできそうです。

玉木: そうなんです。20年9月に新たにスタートを切って1年ちょっとでしたが、これだけいろんな政党がある中で、認知度を上げていくのは大変なんですよ。ただ、選挙期間中は比較的平等に地上波でも取り上げてくれたりするし、政策についてもかなり注目していただいたので、こういう結果につながったと思っています。共産党を抜いて、一応野党第3党になったので、いろんなテレビなんかにも出来れば呼んでいただいて、我々の政策を国民の皆さんに知っていただくようなチャンスをいただければと思います。さらに、これまでと同様に、ネット上では「たまきチャンネル」やツイッターで、タイムリーに政策を発信していきます。

   ―― 9月15日に行われたポスターと主要政策の発表会見では、「給料が上がる経済」や「人づくり」を掲げて「若い人をエンカレッジ(激励)していく、そういう政党で我々はありたいと思っている」と話していました。投票率が高い高齢者向けの政策が優先されがちな「シルバーデモクラシー」が問題になる中、「若者向け」を明確にするのは珍しいです。選挙戦での印象的な若者からの反応などあれば聞かせてください。特に「若者に響いた」と感じた政策はありましたか。

玉木: 象徴的なのが、名古屋で「18歳被選挙権」に特化して演説をした時です。各党みんな「若者政策」と言いますが、力を入れていないんですよ。なぜかと言うと、当事者がいないからですよね。今はどんなに「若者のためにやります」と言ったって、早くて25歳にならないと衆議議員になれない。参院議員なら30歳。10~20代の声を反映する政治をやろうとすれば、そういう人たちが政治家になるのが早い。ですから、「18歳の選挙権を実現したけど、今度は18歳の被選挙権を衆議院に認めよう。早ければ『高校生衆院議員』とか『大学生衆院議員』ができる」というパネルを作って、賛否をシールで貼ってもらいました。若い人がいっぱい来てくれて、皆さん「賛成」に。一部反対もありましたけどね。そういう対話型の演説会をしたら、すごく若い人の反応が良かったです。ただでさえ数(人口)が減っていくし、若い人は数少ない時代ですから、政治的にはむしろもっと若い人を積極的に議員になれるような道を開いてあげないと、与野党各党、常に絶対数が多い高齢者向けの政策ばかりになってしまいます。若い人にもっともっと投票にも行ってもらいたいし、さらに自分がなったらいいと思います。そうすれば同級生が政治家だ、という機会もあるわけで、それが一番政治を身近に感じる機会になると思います。そういったことを話したら、結構興味を持って聞いてもらいました。

   ―― 演説会場に若い人は多かったですか。

玉木: そうですね、北海道では半分ぐらい高校生でした。17歳だと選挙権がありませんが、それでも来てくれて耳を傾けてくれました。そういう若い世代にきちんと響くような政策を言わなければいけないと、選挙活動を通じて逆に私自身気づかされましたね。出口(調査の結果を)見ると、実際に10~20代は比較的他の年代層に比べて、支持の層が厚かったです。

日常的にSNS投稿続ける「ネットどぶ板」が大事

   ―― 立憲民主党は比較的年齢が高い人の支持が多かったですが、自民、維新、国民の3党は比較的10~20代が多かった印象です。ところで、先ほどユーチューブの効果に関する話題がありましたが、11月10日の「岩瀬惠子のスマートニュース」(ラジオ日本)では、「『ネットどぶ板』が大事」だと話していました。この「ネットどぶ板」という用語自体は、19年の参院選で自民党の山田太郎参院議員が使っていたようですが、どんな「どぶ板」が奏功したとお考えですか。

玉木: 今回は、「急にネットやり始めた」という人は駄目ですよね。ネット選挙は実は手間がかかって、普段からコツコツと、「いいね!」が少なくても書き続けるとか、そういうことをやって初めて選挙中、本番にブレイクするんですよ。

   ―― やっぱり「にわか」じゃ駄目なんですね。

玉木: 選挙は日常活動が大事だと言いますが、ネットも日常活動が大事ですね。

   ―― 今はツイッター、フェイスブック、ユーチューブ、インスタグラムの4つで情報発信しています。それぞれに使い分けなどあるのですか。

玉木: それはありますね。フェイスブックは、どちらかというと後援会管理ソフトみたいなところがあって、例えば5000人程度の、ある程度コアな支援者をより強くしていく効果があります。インスタグラムもだいたい同じですが、少し年齢層が若めです。全国規模の選挙をするときには、やっぱりリツイートという拡散機能があるツイッターが一番。ただ、いろんな人が匿名で入ってくるので、炎上もしやすいです。ユーチューブは特定のファンをより強くしていくというか...。あとは動画なので、老若男女に届けられます。若い人は見やすいし、老眼になって字が読みにくい人は動画だったら見てくれます。これからは、短い動画が、かなり拡散力が出てくるのかな。ですから、ユーチューブのサムネイルを工夫したり、ユーチューブをツイッターで拡散する組み合わせもよく使って、そういうことが効果があったと思います。

   ―― ツイッターだと、いわゆる「クソリプ」もありますね。真面目に見ていますか。

玉木: 結構見てますけど大丈夫ですね。メンタル面が強くなりました。あまりにも酷いのはミュートしています。ブロックはしません。

   ―― 「クソリプ」を含めてさまざまな返信がある中で、「おっしゃるとおり」「これはどうしょうもない」など、割合はいかがですか。

玉木: ユーチューブをやり始めた時は、クソリプがほとんどだったんですよ。今はむしろ高評価をつけたり、非常に建設的な意見を書いてくる人が増えてきました。ある程度の時間かけて「平定」していかないといけないし、今はいろいろ落ち着いた状況になっていると思います。

   ―― チャンネル登録者数は6万を超えました。政策の解説や現場レポートのようなものなど、内容は多岐にわたりますが、どんな内容の反響が大きかったですか。

玉木: 意外にも国会論戦です。今は小さい政党になってしまったので5分ぐらいしかできませんが、その5分の菅さん(菅義偉前首相)との白熱論戦が15万回再生ぐらい結構回る(再生される)んですよ。やはりガチンコの国会での勝負を、国民の皆さんは結構ちゃんと見てくれているんですよね。

   ―― やはり王道が一番ですか。

玉木: もちろんスイーツ食べたりもやっていますが、でもやっぱり本業。党首討論、党首対党首の論戦ですよね。

「やはり信念とか政策は曲げちゃいかんなと思いましたね」

   ―― 国民民主党は議席を伸ばしましたが、逆に立憲民主党が議席を減らした理由を、どうみますか。この結果を振り返って、市民連合との政策合意にサインしなくて良かった、つまり「野党共闘」しなくてよかったという思いはありますか。

玉木: やはり信念とか政策は曲げちゃいかんなと思いましたね。なぜかというと、選挙というのは、自分の腹に落ちる、納得できるメッセージを伝えないと、それは相手にも伝わらないんですよね。選挙は熱伝導だと思っているので、自分が一番熱い熱を発するためには、自分が訴えている事に自分自身が納得しておかないと、やっぱりどうしても弱くなるんです。「実は本当はこう言いたいんだけど、こうなんだよね」と伝えたものは伝わらないじゃないですか。ましてや、メッセージを受け取った人が、それを強いまま次の人に伝える、ということができないので、やはり信じたことを伝えるということが選挙では大事です。そういう意味では、構造、構図としては、共産党さんも立って(擁立して)、野党が一本化できないという苦しい中でありましたが、逆にそれを乗り越えるようなメッセージの強さ、思いの強さを発することができたことが、最終的には広がりにつながったと思いますね。

   ―― 市民連合との政策合意の、どの部分が受け入れられなかったのですか。

玉木: 3か所あって、ひとつは安保法制の「違憲部分を廃止」の部分ですね。もう今は現行法、自衛隊法などに溶け込んでいるので廃止はできないので...。おかしいところを法改正するのはいいですが、この「廃止」というのは、我々としてはなかなかサインできません。

   ―― 9月9日の記者会見では、「地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する」という部分も問題視していました。

玉木: 軟弱地盤が見つかったので、我々も一旦停止して検証するのは良いのですが、相手のある話を一方的に中止すると言えば民主党政権と同じ失敗をするので、これはちょっとできませんでした。

   ―― エネルギー政策では「再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する」とうたっていました。

玉木: (原発について)ゼロと決め切ってしまうと、カーボンニュートラルという新しい世界的な目標ができたときに、果たして代替エネルギーもまだ見つかってない中で無責任なことは言えないと...。主に安全保障とエネルギー政策、こういったところについて、どうしても納得・一致できなかったというのが一番の理由ですね。

共産党と組んだことで「立憲民主党の主張の現実性」が揺らいでいる?

   ―― そういう中で合意をした立憲は議席を減らし、福山哲郎幹事長は「夢にも思わなかった」と言っていました。

玉木: 今日(11月18日)も連合(日本労働組合総連合会)のあいさつで言っていました。本当に夢にも思わなかったんだと思いますよ。

   ―― やっぱり(共産党との距離の近さを揶揄して自民党が連呼した)「立憲共産党」問題が響いたのでしょうか。

玉木: 分析を冷静にしたらいいと思います。東京や神奈川のような都会では多少一本化の効果が出ていると思いますが、逆に地方だと明らかに(17年総選挙の共産党の得票数を)足した数より減らしている選挙区がありますよね、例えば石川の近藤さん(石川3区・近藤和也氏)や岐阜の今井さん(岐阜4区・今井雅人氏)のところとか...。1+1が必ずしも2になっていないところも多数あるので、その辺はやはり...。私は選挙区調整は否定しませんが、何のためにやるのかというところが見えなくて、単に有権者から「選挙で勝ちたいために足し算してる」と見られたところは、有権者に対するメッセージとしては弱かったのかなぁ、という気がしますね。

   ―― 今朝(11月18日)の記者会見では、立憲との連携の可能性について「(共産党と)これまでのべったりとした関係なら、連携はできない」と話していました。まさに代表選が行われているところですが、もし連携の可能性があるとすれば、共産党との距離感がキーになりますか。

玉木: 根っこは政策なんですよね、やっぱり。我々は、やはり政権の一翼を担いたいとずっと思ってますから...。そうなると外交・安全保障、あるいはエネルギー政策では現実的なものを言わないと、09年(に発足した民主党政権)と同じような失敗をしてしまう。そこにこだわるがゆえに、そうではない政策等を掲げている政党と一緒にやってることによって、立憲民主党の主張の現実性とか、偏り(の有無)とか、正直さといったことが揺らいできている気がするんですよね。だから共産党という政党が悪いということではなく、必ずしも現実的ではないことを党是としているところと組んでいることによって、立憲民主党も現実性のない政党と見られていると...。そこと組むことはできない。我々はあくまで政権を目指す、政権の一翼を担う政党としてやっていきたいと思ってますからね。ですから、共産党さんとは少なくとも政策的なものでは、ちゃんと一定の距離を置いて、現実路線でやっていくんだということが、形式的にも実質的にも確保されるのであれば、協力・連携ということは当然ありますが、逆にそうでなければ、非現実的なことを言う勢力とは(連携)できない、というのがこれはずっと前から一貫して申し上げているところです。

   ―― これまで国民民主党は、立憲、共産、社民各党と「野党国会対策委員長会談」という形で国会運営で連携してきましたが、11月に入って、この「野党国対」の枠組みから離脱することを表明しました。衆院選で議席が増えたので自力でやっていけそう、という判断ですか。

玉木: そうではありません。増えたと言っても11議席しかないですからね。他党との連携は必要ですが、あくまで政策本位でやっていく、ということです。政策を見たときに、「天皇をなくせ」だとか「自衛隊は違憲だ」とか「日米安保破棄だ」と言っているところとは組めないし、あるいはそういうことを言ってるところと組んでいるところとも組めないという...。やはり政策にはこだわりたいし、ましてや今回はそういう政策を掲げて選挙を戦ったし、共産党とも戦って得た議席ですから、そこはなかなか譲れないというか、筋を通したいということですね。

「国民とは近距離、各党とは等距離」

   ―― この1年間、一律の10万円給付など、国民民主党が言い出した政策を政府・与党が採用するケースが目立ちました。党勢拡大には、良い政策を訴えて納得してもらって仲間を増やすことが重要だと思いますが、各党に対して等距離外交的に政策を提案していく、ということになるのでしょうか。

玉木: やっていこうと思っています。我々は数の少ない政党ですから、協力できるところは協力していかないと、実現できませんから。野党、与党を含めて、実現できるところにはぶつけていきたいと思います。

   ―― 衆院選が終わって、日本維新の会と立ち位置が近い、という指摘が増えてきましたね。

玉木: (どこの党とも)同じです。等距離で、政策本位で協力を求めていけるところには求めていきたいし、維新さんも当然その一つの対象ですね。

   ―― 個別具体的な政策については、連携の可能性はあるということですね。

玉木: 向こうからは「身を切る改革」で協力してくれ、と言われていますが、こちらはガソリン価格の高騰に対して、トリガー条項の凍結解除が喫緊の課題だと思っています。維新の皆さんにご協力いただけるのであれば...。法改正が必要ですから、次の臨時国会は速やかに提出したいと思います。

   ―― 合流という話は、今は全然ないわけですよね。

玉木: 「どこまで政策が一緒できるか」ということもないのに、その先のこと(合流)がいきなり、はないです。皆さん面白おかしく言うから、「ありがたいな」と思いながら見てますけど...。

   ―― 衆院選の投開票日は立憲の開票センターを取材していたのですが、各社の中継で枝野幸男代表(当時)が維新と連携する可能性について問われて、維新は「自民党の補完勢力」だとして完全否定していました。維新は「ゆ党」と呼ばれることも多いです。維新との距離感によっては、国民民主党にも「補完勢力」「ゆ党」といった指摘が飛んで来そうです。

玉木: 私達は国民の補完勢力ですから。何かどこかの政党を補完するというよりも、国民にとって役立つことは、与党とも他の政党とも連携して実現に全力を傾けるということだけです。国民にとって良いことはする、国民にとって悪いことはやめる。

   ―― それが「等距離」ということですね。

玉木: そうです。国民とは近距離、各党とは等距離。

   ―― そういえば、さっき維新の足立康史衆院議員のツイートを見ていたら、「玉木雄一郎代表の事務所に立ち寄ったら、スタッフさんがケーキを出して下さいました。御馳走様でしたー!」って...。

玉木: 玉木事務所、どんだけいい事務所なんだって...。(笑)

   ―― 足立さんとは時々ツイッターでやり合っていますが、今回は小選挙区で当選したこともあって、一緒に仕事をする機会が増えるかもしれませんね。

玉木: そうそう。「偉そうなこと言う前に、ちゃんと(小選挙区で)通れよ」って言ってたら「玉木さんに嫌みを言われることを避けるためだけに頑張ってきた」とか言ってました。(笑)

   ―― 他党との関係で言えば、22年夏の参院選で2人以上が改選される「複数区」全てに公認候補を擁立する方針を発表し、波紋を広げています。記者会見でも言っていたように、「衆院選でもっと候補者を立てておけば、さらに取れた」という反省があるわけですよね。

玉木: (候補者を)立てたところには票が出ているので、比例票を稼ぐ意味でも、立てられるところは基本的に立てていきたいです。(他党と)調整することは否定しませんが、調整を前提にやっていると、擁立が進まないんですよね。その反省です。まずは有為な人材がいたら希望するところで立ってもらう、ということで公募していかないと...。「ここは公募するけど、ここは駄目ですよ」では公募できないですからね。

   ―― 11月15日の「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」(ニッポン放送)では、参院京都選挙区(改選数2)に関するやり取りがありました。主に自民、立憲、共産の3者で争う構図で、22年夏に改選を迎える立憲の福山幹事長は11月9日の定例会見で、

「京都は共産党さんが強いので必ず立ててくるし、自民党も立ててくるし、状況によっては維新さんが立ててくることもあると思っており、私は大変厳しい選挙になると考えている」
と話していました。対応は、府連の前原誠司会長に一任ですか。

玉木: 京都はいろいろ微妙ですが、基本的には京都府連、現場の意見を最大限に尊重して決めていきたいと思います。ただ一般論で言うと、できるだけ多くの選挙区で立てていきたいと考えています。

維新が協力求める「身を切る改革」、どう対応?

   ―― 10月分の文書交通費が新人議員に対して100万円支給された問題は、どう取り組みますか。「日割り」にする方向性では与野党が一致した感がありますが、それ以外に、どのような形で制度を見直していきたいですか。今朝の会見では寄付ではなく国庫返納できる制度が必要だと主張していました。

玉木: 寄付は変だと思いますね。やっぱり多額の寄付をしたら、(寄付された側が)その政党に対してシンパシーを持つようになるから、ちょっとどうかなと思いますね。だから国庫返納が筋です。もっと厳密に言えば、経費だということであれば、使った分だけ領収書で請求すればいいわけです。逆に言うと、使途が明確であれば「1日だけ働く」ということであっても、全額出してもいいと思います。

   ―― 仮に支給の対象になった1日で、実態がある形での活動があって領収書があれば支給は問題ない、ということですよね。

玉木: その1日でチラシを刷って手紙を有権者に出して...というのであれば、別に1日で100万円でもおかしくありません。日割りもひとつだし、今回は与野党がそのようにまとまろうとしているので、それで構いませんが、本来であれば、やっぱり使った分だけ領収書を添付して「その分だけ認めるので、使い残しがあったら返す」というのがいいと思っています。経費計上を認めてくれたらいい、と言っています。逆に言うと、働かない人はいらないし、働く人にはもっと出してもいいと思います。

   ―― このあたりの提案が党としてのアクションになるのは中長期的な課題ですか。

玉木: 今回我々としては3つ法改正しようとしています。一つは、すでにまとまろうとしている日割りです。(今回は新たに議員になった人への支払いが問題になったが)議員辞職した際には、辞職した月も日割りの支払いを導入すべきだと思います。次が議員辞職時を含めて国庫への返納を可能とする、ということです。そして、3つ目使途の公開。領収書を添付した上で...、これは他の政党交付金などと一緒です。

   ―― 先ほど指摘があったように、真面目に活動すれば印刷代はかかるものなので、単に削ればいい、というものではないですよね。維新が求めている「身を切る改革」も、何が削れるかは精査が必要そうですね。

玉木: 今、コロナで(歳費を)2割削減していますから、当面はこれを継続する。(2割削減の根拠になる改正歳費法が)10月で切れていますから、2割削減を続ける(ための法改正をする)というのは賛成です。あと、(維新が掲げる「身を切る改革」には)企業団体献金を禁止しろ、と言う項目がありますが、パーティー券を認めたら結局は企業が買ってくれるので、「パーティーはOKだけど企業献金は駄目だ」という差は、よく分からないですよね。(企業団体献金を)やめるのであればパーティーもやめる、ということですが、それで本当に政治活動が回るのか...。あんまりパフォーマンスになるようなことはやめて、政治活動の透明化に資するような形の改革はしたらいいと思いますね。私なんかは、ものすごく透明にしていますよ。例えば、ウェブサイトに連結決算ベースの収入と支出を公開していますが、各議員、こういうのを出せばいいんですよ。

   ―― 喫緊の課題が、燃油価格高騰に対する対応です。国民民主党は、ガソリン平均価格が3か月連続で1リットル当たり160円を超えた場合、25.1円の課税を翌月から停止する「トリガー条項」の凍結解除を訴えています。これに対して、政府は1リットル170円を超えた場合、元売り事業者に5円を上限に補助金を出すことを検討しています。この案について、記者会見で「しょぼすぎて衝撃」だと言っていました。

玉木: なんだそりゃ?という感じです。もう、びっくりですね。

   ―― 一方で、松野博一官房長官は「トリガー条項」凍結解除について、11月16日午前の会見で

「発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱や、国・地方の財政への多大な影響などの問題があることから、その凍結解除は適当ではないと考えている」
と答弁しています。

玉木: 値段が下がると思ったら下がるまで買い控える、ということですが、(政府の検討では)5円下げようとしてるわけです。それも買い控えが起きるので一緒ではないでしょうか。

   ―― 下げる額によって買い控えの度合いがどう変わる、といったことを説明しないと、分かりにくいですね。ある意味「ブーメラン」に思えます。

玉木: 何か役所から言われたのを理解せず読んでるだけな気がしますね。ブーメランになっている気がします。

   ―― こういった状況で、どのようにして凍結解除を訴えていきますか。

玉木: この話は、追加公約として選挙中から言っていた唯一の政党なんですよ。(政府・与党は)「遅くなるから駄目だ」と言いますが、12月に法改正すれば早ければ1月1日から下げられます。(政府が検討している)1リットル当たり5円の補助金を出したとしても、それで元売りが(小売り価格を)下げるかどうか分からないじゃないですか。しかも170円が発動基準。それに対してトリガー条項は160円。結局政府が言っている対策は、発動する気ないから発動基準が高すぎるし、かつ「しょぼい」。やる気ないんですよ全く。助ける気もない。

   ―― 原油価格の高騰は、首都圏で電車に乗って生活していると意識しにくい面がありますが、車が足になっている地域への影響は大きいですね。

玉木: そうです。大きく影響を与えます。我々が新たに提案しているトリガー(条項の凍結解除)はガソリンの25円10銭に加えて軽油も17円10銭下がります。相当、地方経済を助けることにつながる思うのでぜひ実現したいし、世論を喚起していきたいですね。

第53条の改正が「与野党納得しやすい」

   ―― 最後に憲法改正についてうかがいます。野党の中でも憲法改正に関する考え方は分かれています。与党含めて「改憲派」と言われる勢力でも、改正すべきだとする部分は様々です。国民民主党としては、どの部分を改正すべきだと考えますか。まずは憲法審査会を開くところからですか。

玉木: 今まで何をやってきたかというと、「開く、開かない」で大もめしてきたわけですよ。でも少なくとも、定例日(木曜日)に会議を開きましょうよ、と(思う)。何のために定例日があるのでしょうか。審査会を開いて、賛成の人は賛成の意見を、反対の人は反対の意見を言う。賛成の中でもいろいろな改正の項目が違うから、それをそれぞれに言って、国民の皆さんに何が論点か争点かを分かっていただくということが、これは立場の別を越えて、国会議員の果たすべき役割なんじゃないかなと私は思いますよ。

   ―― その上で、改正するとすればどこですか。

玉木: 私は第53条の改正をすると、与野党納得しやすいのかなと思っています。例の臨時国会に関する「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。 いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」という規定です。期限が入っていないので、「20日以内に開く」といった期限を入れるとか...。あるいは結婚の規定(第24条)で「両性の合意のみに基いて」と書いてあるところを、同性婚ということを、解釈ではなく明示的に認める意味でも「両者の合意」というふうに書けば、リベラルの方も納得してもらえると思いますからね。みんな「解釈改憲は駄目だ」と言うじゃないですか、いつも。そうであれば、文言通り解釈改憲が駄目だというなら「両性の合意」だったら異なる性の人しかできなくなるので同性婚は無理になってしまいます。「一応あんなのは解釈で読めるんだ」と言いますが、「解釈で読める範囲が広まっちゃいけないんじゃないの?」とも言うんだから、ちゃんと書けるなら書いてあった方がいいですよね。

   ―― 第53条について言えば、自民党が野党時代の12年に出した改憲草案には、「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない」とありますね。あの草案は、受け入れがたい内容ですか。

玉木: 第53条だけに限って言えば、いいんじゃないでしょうか。

   ―― 「第53条に限れば」ですね。あの草案そのものは、なかなか受け入れられないですか。

玉木: ああ、無理です。

   ―― 緊急事態条項とか...。

玉木: 緊急事態条項だって、議論したらいいと思いますよ。9条も同じですが、規定がないこと自体がやはり問題で、今回(のコロナ禍)みたいにいたずらに私権制限しちゃうじゃないですか。

   ―― 法改正せずに根拠不明なまま多数の「お願い」をする、と...。

玉木: 私権を制限するのであれば、こういう条件を満たしましょう、例えば経済的な補償があるとか、あるいは「移動するのが駄目」と言ったときには働けなくなるから、リモートワークやオンライン教育の環境を整えるとか、経済社会環境を整えるといったことを、きちんと憲法上の義務として権力を行使する側にかけていくとか...。あるいは、一時的には行政権が強くなるので、立法府や裁判所に事前の承認を得たり事後的に報告したりするとか...。全体として三権で、チェックが働いてバランスが取れるようにすることが大事です。だから、緊急事態条項が危ないのではなく、緊急事態条項もないまま、何かあったら無限の行政権の権力行使が行われてしまうような状況に既になっていることが、やはり問題です。

   ―― 「お願い」が拡張してきましたからね。

玉木: ですから、(緊急事態条項の検討を)するのはいい、と。ただ、「ここまでですよ」とか「やった以上はこういう報告を国民の代表たる立法府にしなさい」とか、そういうことをきちんと、権力の特例的な行使に関する条件整備のようなことに関する議論をきちんとしておくことは、私は否定しません。とにかく議論をしっかりやったらいいのではないでしょうか。賛否はいろいろありますが。

   ―― やはり、「まずは議論の場を」といったところでしょうか。

玉木: そうですね。自民党みたいにやたらめったら権力を広げようとする改正でも駄目だし、何でもかんでも「一字一句変えちゃ駄目だ」というのでも駄目で、その権力をいかに統制するかという、建設的で前向きな議論を冷静にする文化を育んでいかなければならないと思います。

玉木雄一郎さん プロフィール
たまき・ゆういちろう 衆院議員、国民民主党代表。1969年香川県生まれ。東大法学部卒。93年旧大蔵省入省。2009年の衆院選で香川2区から初当選し、現在5期目。旧民進党幹事長代理、旧国民民主党共同代表を経て18年9月から同代表。20年9月に分党を経て新国民民主党設立、代表に就任。


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