2024年 4月 27日 (土)

「軽率に参加したい」の「軽率」どんな意味? SNSで新たな用法、国語辞典編纂者がニュアンス解説

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   「軽率」という言葉の用法がツイッターで話題になっている。きっかけは、日本経済新聞社の校閲グループによる解説ツイートだった。

   投稿では、近年「軽率に」が「気軽に」といった意味で用いられていると紹介。しかしSNSでは、この用法に違和感を訴える声もある。

   J-CASTニュースは、「軽率に」という言葉の用法などについて、2人の識者に話を聞いた。

  • 「軽率に参加したい」の「軽率」どんな意味?(写真はイメージ)
    「軽率に参加したい」の「軽率」どんな意味?(写真はイメージ)
  • 日経 校閲の解説ツイート
    日経 校閲の解説ツイート
  • 「軽率に参加したい」の「軽率」どんな意味?(写真はイメージ)
  • 日経 校閲の解説ツイート

「気軽とはちょっとニュアンス違うと思う」

   日本経済新聞社の校閲グループが運営するツイッターアカウントは、日本語に関する豆知識の紹介などで人気を博する。2023年4月26日、「もっと軽率に参加したい」という例文を紹介し、次のように解説した。

「軽率は主に『軽はずみ』ということを表しますが、近年は例文のように『気軽』といった意味で使うこともあります。この使い方を、みなさんはご存じでしたか」

   実際にSNSでは、「軽率に○○くん(俳優の名前)が好きになりました」「まだ見たことない人に軽率に○○(作品名)見てほしい」といったやりとりが飛び交う。

   しかしツイッターでは、「気軽とはちょっとニュアンス違うと思う」「気軽と置き換えると意味が変になる」などと日経校閲の解説に違和感を訴える声が上がった。

   インターネット上で「軽率に」という言葉はどのような意味を持つのか。ITジャーナリストの井上トシユキさんは取材に対し、次のような推察を述べる。

「私自身は(前出のような)『軽率に○○したい』もしくは『軽率に○○して欲しい』といった用法を見聞きしたことはありませんが、『気軽に』と比べてネガティブで、必要以上にへりくだっている印象を受けます」

   ツイッターでは、「軽率に」を用いているというユーザーから、「後ろめたさが表れている」「元の語義に近い意味合いで使ってる」といった声もあがっている。

国語辞典編纂者「SNSでの使われ方には、もっと細かいニュアンスがある」

   「軽率」の意味について、国語辞典編纂者の飯間浩明氏はJ-CASTニュースの取材にこう解説する。

「『軽率』の『軽』は軽々しいということ、『率』は急に、にわかにということですから、全体では『よく考えないで行う様子』『軽はずみ』という意味になります。明治時代の和英辞典『和英語林集成』の説明を引用すると『Careless, trifling, heedless』(不注意な、軽薄な、思慮のない)と書いてあります。ケアレスミスの『ケアレス』ですね」

   一方、日経校閲のツイートでは、SNSで最近使われるのは「『気軽』といった意味」と解説されている。このことについて、飯間氏は自身の反省も含めて答えた。

「実は、私の携わる『三省堂国語辞典』第8版(最新版)でも、『軽率』の(2)の意味として『〔俗〕気軽』と記したんです。元の意味の『軽はずみ』と明確に区別するため、こう説明しました。日経新聞の校閲もなるべく端的に説明しようとしたのでしょう。ただ、今のSNSでの使われ方には、もっと細かいニュアンスがあるのは確かです」

   SNSの用法には「気軽」以外のニュアンスがあるのか。飯間氏はこう答える。

「これは多くの人が指摘するとおりですね。単に『気軽』というだけでなく、『軽はずみなのは重々承知だけれど』という弁明の意味も含まれています。たとえば、『軽率にどこか行ってみたさある』というのは、『気軽に出かけたい』という意味に加えて、『後先も考えないで』という、まさに『軽率』の元のニュアンスが含まれています。『軽率に惚れる』とも言いますが、これは『気軽に惚れる』とは言い換えにくく、『うっかり惚れてしまう』というような意味合いがありますね」

2014年に新用法について言及

   飯間氏自身も2014年に「軽率に」の新用法についてツイッターで言及していた。この時と現在とで意味や用いられるシーンに変化はあったのか。

「新用法に気づいたのは、確かにこの頃でした。『最大公約数的な意味は「気軽に」で、そこに「気軽でスミマセン」的な照れがあるとみました』とツイートしています。これは、先ほど説明したことと基本的に同じです。『気軽でスミマセン』という弁明というか、照れも感じられます。意味用法はこの10年間で大して変わっていないでしょう。この意味について、辞書でもっと詳しく説明してもいいと、現在では思います」

   日本経済新聞の校閲グループは「気軽に」の近年の用法について、どのような人がどんな文脈で用いることを想定してツイートしたのか。広報室は取材に対し、次のように回答した。

「例文の使い方をする人について特定層は想定していません。『軽率に』の意味をめぐる様々な声は、貴重なご意見として承ります」
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