2024年 5月 3日 (金)

全国紙5紙の発行部数1450万部、15年で約半減 値上げの波も...デジタル転換の現在地は

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   新聞が斜陽産業で「崩壊」の危機にある、と指摘されるようになって久しい。J-CASTニュースが「新聞崩壊」と題して識者のインタビュー連載を掲載したのは2008年末のことだ。

   それから15年。全国紙5紙(朝日、毎日、読売、日経、産経)の部数は、ほぼ半減した。特にコロナ禍を経た直近の5年では3割以上減少し、そのペースは加速している。多くの新聞社は電子版へのシフトで生き残りを図るが、有料会員の増加ペースは鈍っており、紙の減少を埋めるには至っていない。

  • 新聞の部数は右肩下がりが続いている(写真はイメージ)
    新聞の部数は右肩下がりが続いている(写真はイメージ)
  • 大手紙の部数は15年前からほぼ半減した。グラフは日本ABC協会が公表しているデータからJ-CASTニュース編集部が作成
    大手紙の部数は15年前からほぼ半減した。グラフは日本ABC協会が公表しているデータからJ-CASTニュース編集部が作成
  • 新聞の部数は右肩下がりが続いている(写真はイメージ)
  • 大手紙の部数は15年前からほぼ半減した。グラフは日本ABC協会が公表しているデータからJ-CASTニュース編集部が作成

日経の部数は303万2703部→158万6324部、獲得した有料会員数は89万7000

   日本ABC協会がまとめた23年上期(1~6月)の平均販売部数は5紙合計で1450万6261部。15年前(08年上期)の2720万5747部と比べると53.3%の水準だ。5社のうち、産経、毎日、朝日の3社は5割を割り込んだ。 5年前(18年上期)の5社合計の部数は2122万9328部。今は、その68.3%の水準だ。

   紙媒体が右肩下がりだが、電子版はどうか。全国紙で有料会員数を公表しているのは日経・朝日の2社のみだ。

   日経は電子版を10年3月に創刊。17年1月に、創刊から6年10か月で有料会員数が50万人に達したと発表している。それから6年11か月後の23年12月の発表では、有料会員数は89万7000。増加のペースは鈍化しているものの、増えていることがうかがえる。もっとも紙媒体の部数は、電子版創刊時の10年上期は303万2703部で、直近の23年上期は158万6324部。紙媒体の減少分を電子版が埋めるには至っていない。

朝日の有料会員は横ばいの様相

   朝日は、日経のビジネスモデルを踏襲する形で「朝日新聞デジタル」を11年5月に創刊。当初は無料の旧サイト「アサヒ・コム」を存続させたため、有料会員が伸び悩んだ。そのため、12年1月にアサヒ・コムを「朝日新聞デジタル」に統合。この時点での有料会員は約6万人だった。

   最近も、有料購読をうながす大きな動きがあった。朝日新聞デジタルは、有料プラン以外に、個人情報を登録すれば会員記事が月5本まで読める「無料会員」制度があったが、22年8年、廃止に踏み切った。有料プランに一本化して収益力を高める狙いがあるとみられるが、その効果が現れているかは未知数だ。

   23年1月から、朝日のコンテンツがどれだけの人に届いているかを示す「朝日新聞メディア指標」を公表している。指標は「朝刊販売部数と朝日新聞デジタル有料会員の合計数」「朝日ID会員数」「月間ユニークユーザー(UU)数」「LINE友だち登録数」の4つで、このうち収益に直結するのが「朝刊販売部数と朝日新聞デジタル有料会員の合計数」だ。過去に3回公表しており、「383.8万+30.5万=414.3万」(22年12月)、「376.1万+30.5万=406.6万」(23年3月)、「357.3万+30.3万=387.6万」(23年9月)と推移している。紙媒体は右肩下がり、電子版の有料会員数は横ばいの様相だ。

   なお、朝日新聞デジタル創刊時(11年上期)の紙媒体の部数は778万5884部だった。

読売は紙を主体に生き残り図る「新聞withデジタル」

   特異なのが読売新聞だ。本格的に電子版を始めたのは19年2月だが、他社と違って電子版を単独で購読することはできず、紙媒体購読者向けの付帯サービスだと位置づけている。この背景のひとつに、他の4社と比べて紙媒体の減少がゆるやかなことがある。読売の23年上期の部数は642万4774部。15年前(1002万5101部)の64.1%、5年前(851万2674部)の75.5%の水準だ。「新聞andデジタル」ではなく「新聞withデジタル」をうたっており、あくまで紙を主体に生き残りを図る考えだ。

   ここ数年、山口寿一社長は賀詞交換会や入社式のスピーチで、読売のあるべき姿として「唯一の全国紙」という言葉を繰り返している。部数の回復が望めない中でも、体力勝負で消耗戦に勝ち抜いていく狙いが透けて見える。

   ただ、創刊150年にあたる24年には、読売は大きな判断を迫られそうだ。購読料値上げの問題だ。

   日本製紙は23年4月納入分から新聞用紙を1連(4000ページ分)当たり300円値上げしている。値上げ幅は1割強で、新聞社の経営を直撃した。これを受けて朝日が朝夕刊セットで月額4400円(税込)の購読料を5月1日から4900円に引き上げている。6~8月にかけて毎日、日経、産経が追随した。値上げ幅は11~14%程度。

   そんな中でも読売は3月25日の朝刊1面の記事で「少なくとも1年間」値上げを見送ることを発表していた。値上げは短期的には収入増につながる一方で、部数減を加速させる原因にもなるため「痛し痒し」。あと3か月ほどで、他社に追随するか態度を表明することになる。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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