2024年 4月 27日 (土)

「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか」 現役漫画家が解説するその背景

   テレビドラマ化もされた「セクシー田中さん」などで知られる漫画家・芦原妃名子さんの訃報を受け、漫画家の新條まゆさんが「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか。そしてなぜうざがられてしまうのかということを解説してみたい」とXで持論をつづった。

  • 新條まゆさんのX(@shinjomayu)。「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか」について解説した
    新條まゆさんのX(@shinjomayu)。「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか」について解説した
  • 実際の投稿(新條まゆさんのX(@shinjomayu)より)。長文でメディアミックスと漫画家の関係について解説した
    実際の投稿(新條まゆさんのX(@shinjomayu)より)。長文でメディアミックスと漫画家の関係について解説した
  • 新條まゆさんのX(@shinjomayu)。「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか」について解説した
  • 実際の投稿(新條まゆさんのX(@shinjomayu)より)。長文でメディアミックスと漫画家の関係について解説した

メディアミックスは「リスクもないですし、楽」

   新條さんは小学館の「少女コミック」でデビューし、『快感?フレーズ』『覇王?愛人』などのヒット作を多数生み出した人気漫画家だ。小学館との間では、過去にトラブルが起きたことがある。新條さんは08年6月8日付のブログ(現在は削除済み)で、小学館で連載してた際に、編集者らから考え方がおかしいとして1回だけ休載させられたと告白。小学館の仕事を辞めたいと告げると、それまでの出版物を絶版にすると言われたという。新條さんは、「もうHな漫画は描きたくなかった」などとつづっていた。

   こうした背景から、新條さんは芦原さんをめぐる事案にも多数言及している。

   芦原さんのドラマ化をめぐる騒動などについて、発刊元の小学館が経緯などを社外発信する予定はないと社員に向けて説明していた、と2024年2月7日にスポーツ各紙が報じた際には、「小学館声明なしか...残念ですね」として自身の経験に絡めて振り返っていた。

   12日には、「なぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか。そしてなぜうざがられてしまうのか」として、漫画作品のメディアミックスに伴う問題についてつづった。

   現在のエンタメ界においては動きやすさや売上といった面でメリットが大きいため「アニメ制作会社、テレビ局、漫画配信会社、ゲーム会社などがオリジナル作品を作って、自社で著作権を得たい」という流れがあるという。

   一方で「魅力的なキャラとストーリー」を作り上げるのは難しいため「リスクもないですし、楽」だというヒット作のメディアミックスが多くなるとした。

「セリフが違うのではなくてキャラが違ってくるからです」

   新條さんは失敗例を挙げつつ、キャラクターに説得力を持たせるための工夫を説明。その上で、「漫画家は一人のキャラが物語を紡ぎ始めるスタートラインに立つまで膨大な生い立ちを作り込んで、スタートラインに立たせます」。「生まれた家柄、両親の性格、子供の頃のエピソード どうかすると本一冊書けるほど用意する時もあります」という。

   その上で、原作者が「セリフ一つにダメ出しをする」理由について「状況は全く違うことをわかってほしい」と強調した。

「『このキャラならこういうセリフを言うだろう』の許容範囲を逸脱し始めるとやはり、口出ししたくなります。セリフが違うのではなくてキャラが違ってくるからです」

   メディア側との意見のすり合わせがうまくいかないと「『とにかく一言一句違わないで。そうすれば楽だから』ってことになる」「ここには『原作とちょっとでも変えたら許さない』という意志はない」と単なるこだわりではないと説明。

   「クリエーターには尊敬の念と信頼があるので脚本家にもそういう気持ちで臨みます」としつつ、限られた時間の中での監修には限界があるとした。

「こういう『これは違う、これも違う』ということが続くと、『ああこの人は、うちの子の育て方が理解できないのだ。だったらマニュアル通りにやってくれれば間違いないって伝えよう』ってことになるのです。さらには『自分がやったほうが早い』と...」

「原作者には監修料というのを発生させて共にいいものを作るチームづくりを目指してもらいたい」

   「キャラ作りのそもそもの工程や作業、想いなどが伝わっていなければ、ただ『口うるさい』と言われてしまいます」として、「みんなが顔を突き合わせて、定期的に想いのすり合わせをする必要がある」と訴えた。

   続く投稿でも、「魅力的なキャラとストーリーを紡げる人とそれができなくて乗っかる人との間には元々理解し得ない大きな溝がある」と説明。一方で、漫画家だけでなくメディア側にも寄り添い「話し合いの場で、乗っかる人たちもすべての打算を吐き出すべき」とした。「この俳優をこう使いたい、こう売りたい、こう魅せたいなど...耳を傾けない漫画家はいないと思います」とし、漫画家としては「許諾した以上は本当に楽しみなんですから」と前向きな気持ちで取り組んでいるとした。

   漫画作品のメディアミックスの今後について、「是非、原作者には監修料というのを発生させて共にいいものを作るチームづくりを目指してもらいたい」と主張した。

   新條さん自身もかつて作品がゲーム化された際、話し合いの場を設けたことで「たくさんのリスペクトが生まれました」という。

   出版社に対しても、「編集部の方も原作者の意向をただ伝えるのではなく心のケアをして、最大の味方でいつつもバランスを持って、時には話し合いのセッティングをしていって欲しいと思います」としている。

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