2025年の自民党総裁選、26年の衆院選で、高市首相の秘書から相談され、IT会社の代表が他候補に関するネガティブな動画を作成したと報じられている。サナエトークンを発端とする一連の報道について、どこに問題があるのか。高市首相とその秘書を取り巻く人々の素性とはどうか。藤井聡氏の話で分かりやすくなった全体構図報じたのは共同通信。高市首相の秘書は木下剛志氏、IT会社の代表は松井健氏だ。この案件は週刊文春も、これまで追ってきたものだ。これらに対し、高市首相は、6月8日には「私自身も私の事務所も、他の候補者の誹謗したり中傷したりということは私の流儀でもないし、決してやっていない。(中略)面識があるかについては、面識はない。実際にお会いして名刺交換をし、相手の所属や氏名をちゃんと承知していることはないということだ」とコメントしている。ここに来て、関係者の一人である藤井聡京大教授からも経緯の暴露があり、全体の構図が分かりやすくなった。まず、これまでの経緯を時系列で説明しよう。発端は25年春頃、藤井氏が松井氏を紹介されたことだ。25年秋頃、藤井氏は木下氏に松井氏の関心・連絡先を伝えた。その後、木下氏は松井氏がいたと思われるリモート会議に参加した。自民党総裁選ぶ後、木下氏から藤井氏に、リモート会議に出たが具体的に依頼するような提案はなかったとの報告があった。この時系列の整理は、松井氏の発言に照らして概ね間違っていない。では、一連の流れのどこに問題があるのか。まずは、高市首相の虚偽答弁・コメントの疑いだ。一部の識者には、木下氏と松井氏に「接触」があったから「面識」がなかったというのは問題という指摘がある。ただし、「接触」であれば、選挙戦ではそれこそ多数の人と「接触」はありえるので、どこで線引きするかという問題で、高市首相は常識的だ。次に、「高市陣営」から木下氏に「相談」があったので木下氏と松井氏の間に委任関係ができた、とする論者もいる。しかし、仮に木下氏がリモート会議に出たとしても、承諾していない以上、委任関係ができたとは無理筋だ。どうやって1日500本の動画を作るのかその次に公職選挙法での問題だ。松井氏は、与野党50人の陣営から動画作成の依頼を受け、うち20人に協力し、他の報道では作成動画は1万本という。しかし、この証言は怪しい。衆院解散決定1月19日から投開票2月8日まで20日間で1日あたり500本というのは凄い量だ。松井氏は、筆者が竹田恒泰氏から聞いた話であるが、これまでも仮想通貨に絡んで現金を億円単位で勝手に集め、竹田氏も危うくトラブルに巻き込まれそうになったようだ。ただし、公職選挙法の買収罪または利害誘導罪の適用の可能性はありえる。そのためには、サナエトークンについて、木下氏が密接に関係していたかどうかがポイントだが、今のところ、そのエビデンスはない。サナエトークンで一儲けしようと、高市首相の周りに人が群がったが上手くいかなくった中で起きた動画作成事件のように思える。++ 高橋洋一プロフィール高橋洋一(たかはしよういち)元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。
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