「日本よりも物価の安い国はほぼない」GACKT発言は本当か 東南アジアと日本の生活費比較で分かった現実

   歌手のGACKTさんが、東南アジアを「安い」と思い込む日本人に警鐘を鳴らし、ネット上で議論を呼んでいる。

   「日本より物価の安い国はほぼない」といった発言をしていたが、実際はどうなのか。

  • GACKTさんはマレーシアを拠点にしている(2024年9月撮影)
    GACKTさんはマレーシアを拠点にしている(2024年9月撮影)
  • シンガポール
    シンガポール
  • GACKTさんはマレーシアを拠点にしている(2024年9月撮影)
  • シンガポール

「日本の経済は、本当にびっくりするぐらい落ちている」

   GACKTさんは2026年6月13日、自身のYouTubeチャンネルで「日本人は、これ一番イケてない感覚なんだけど、東南アジアの人たちを下に見ている傾向がある。物価が安いものだとも思っている」と切り出し、

「でも実際に行ったら分かる。もう日本よりも物価の安い国はほぼない」

と語った。

   自身が拠点にしているマレーシアの物価は「まだマシな方」だそうだが、

「他の国とかはすごく物価が高い。もう台湾なんてえぐい。韓国も高い。シンガポールなんかはえげつない。タイなんかも高い」

   日本人が「東南アジアだったら安いだろうな」という感覚で行けば、「えらい目に遭う」と警告した。

   さらに海外在住者の視点から、次のような見解を示した。

「むしろ(東南アジアより)日本の方が安いぜっていう。日本の経済は、本当にびっくりするぐらい落ちているからね。日本だけに住んでいると、そこまで感じないかもしれないけど。海外に住んでいて外から日本を見ると、結構やばいなと思うからね」

   これに対して、SNS上では「本当に日本は安くなった」という趣旨の賛同が相次いだ。

   その一方で、現地在住者や旅慣れたバックパッカーなどからは「東南アジア全体が日本より高いわけではない」「さすがに言い過ぎでは」と疑問視する声も出ている。

「ビッグマック指数」日本と東南アジアを比べると

   では本当に、東南アジアに日本より物価の安い国は「ほぼない」のだろうか。データで検証してみよう。

   まず参考になるのが、英誌「エコノミスト」が考案した「ビッグマック指数」だ。マクドナルドのビッグマック価格をドル換算で比べることで、各国の購買力などの目安を測る指標として知られている。

   2026年のデータでは、日本のビッグマックは3.03ドル(約490円)。これに対し、シンガポールは5.78ドル(約934円)、タイは4.30ドル(約695円)、韓国は3.74ドル(約605円)、マレーシアは3.39ドル(約548円)で、いずれも日本より高い。

   一方で、ベトナムは2.89ドル(約467円)、フィリピンが2.84ドル(約459円)、インドネシアが2.52ドル(約407円)、台湾は2.47ドル(約399円)。ビッグマックの価格で見る限り、日本より安い国は複数ある。GACKTさんは台湾について「えぐい」と表現していたが、この指標ではむしろ安い部類に入る。

   もっとも、ビッグマック指数は大まかな指標でしかない。国によってサイズや税率などが異なり、マクドナルドは地域によって「高級な外食」として高価格帯で扱われていることもある。さらに、価格競争や材料への補助金の有無によっても価格が変動する。

「生活費指数」日本は韓国や台湾より低い

   そこでもう一つ、各国の生活費などを比較できる生活情報データベース「Numbeo」の2026年版「Cost of Living Index by Country」を見てみよう。米ニューヨークの生活費を「100」として各国の生活費を数値化したものだ。

   このデータでは、日本の生活費指数はニューヨークの半分以下となる47.5。アジア圏では、シンガポールが87.7、韓国が61.6、台湾が49.7など、日本を上回っている国がある。

   しかし東南アジアだけに目を向けると、タイが38.0、ミャンマーも38.0、カンボジアは34.8、マレーシアは34.0、フィリピンは30.1、ベトナムが26.4、インドネシアが26.1と、日本を下回る国が目立つ。

   ビッグマック指数にしても、Numbeoにしても、データ上では「日本より物価が安い東南アジアの国」は少なからずあることを示している。

日本ではガソリン補助金や電気・ガス料金支援が

   ただし、GACKTさんの感覚が大きく外れているとも言えない。

   裕福な海外在住者や一般的な旅行者は、都市部や観光地のホテル、空港、ショッピングモール、レストランなどを利用する機会が多く、そうした場所ではどの国でも現地の平均より高い価格になりやすい。円安の影響もあり、日本と同水準のサービスを受ければ、肌感覚として「かなり高くなっている」と感じるだろう。

   さらに、富裕層の場合は都市部の不動産高も感じやすく、平均的な生活費指数とは別の実感が生まれやすい。

   また、日本の物価は政府の財政支援によって抑えられている面もある。実際、国によるガソリンの補助金や電気・ガス料金支援は、家計負担の急上昇を和らげてきた。一方で、インドネシアのルピアやフィリピンのペソなど、東南アジアにも日本のように通貨安に悩む国はある。単純に「上昇する東南アジア」と「沈む日本」という構図だけでは語れない部分もある。

   GACKTさんの発言は、統計的に見れば「東南アジア全体には当てはまらない」と考えられる。しかし、かつて日本人の固定観念になっていた「東南アジアは日本よりずっと安い」という昔ながらの思い込みに対する警鐘としては鋭い。

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