車を運転していると、事故だけでなく故障という思わぬトラブルに遭遇することがある。普段は問題なく走っていた車でも、ある日突然エンジンが不調になったり、バッテリーが上がったりするケースは珍しくない。とくに、夜間や人通りが少ない場所でトラブルが発生すると、不安は一気に大きくなる。JAF(日本自動車連盟)が2026年4月に公表した「JAFロードサービス主な出動理由TOP10」によると、最も多いのはバッテリーの故障だった。誰にでも起こり得るトラブルだからこそ、日頃からの点検や備えが重要といえる。今回は、深夜の山道で車が突然動かなくなり、孤立感を味わったという中村直樹さん(仮名・40代)の体験談を紹介する。エンジン警告灯が点灯...真っ暗な山道で突然の異変会社員の中村さんは、残業で帰宅が遅くなり、日付が変わる頃に車を走らせていた。自宅に向かうには、街頭の少ない山道を通る必要がある。普段から利用している道だったが、この時間帯となると車の往来はほとんどない。「早く帰って休みたいな」と思いながら運転していたときだった。突然、ダッシュボードにオレンジ色のエンジン警告灯が点灯した。「異変に気づいた直後に、車体がガクガクと震え始めました。アクセルを踏んでも速度が上がらなくて、車は徐々に失速していったんです」そのまま走り続けることは危険だと判断し、中村さんは路肩へ車を止めた。「エンジンはかかっているのに、明らかに様子がおかしいと思いました」中村さんは、自動車保険に付帯しているロードサービスへ連絡しようとスマートフォンを取り出した。しかし、画面には「圏外」の表示が出ていた。「そういえば、このあたりは電波が入りにくかったなと思い出しました」時計を見ると、午前0時を過ぎている。人家の明かりは見えず、通り過ぎる車もない。ハザードランプを点灯させて車内で待機したものの、不安は次第に大きくなっていったという。孤立感に襲われたときに現れた一台の車外は、異様なほど静かだったそうだ。風が木々を揺らす音だけが聞こえ、車内にいると自分の心臓の鼓動まで感じられた。何度がエンジンをかけ直してみたが、警告灯は消えなかった。そして、30分ほどが経過した頃、遠くにヘッドライトの光が見えた。「助かったかもしれない......」中村さんの期待感は高まった。しかし、その車は速度を落とすことなく、そのまま通り過ぎてしまったという。「本当に心細かったですね。あのときの虚しさは、今でも忘れられません」再び暗闇の中に取り残され、不安はさらに大きくなった。それから約20分後、再び一台の車が近づいてきた。その車は、中村さんの車の後方に停車。車からは、中年の男性が降りてきた。男性は窓を軽く叩き、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。事情を説明すると、「少し待っていてください」と言い、車から工具箱とジャンプケーブルを持って戻ってきた。そして、エンジン周りを確認しながら、原因を探ってくれたという。「どうやら、バッテリー関連の不具合が原因だったようです。応急処置をしてもらうと、エンジンが正常な音を立て始めました。エンジンがかかった瞬間、全身の力が抜けました。本当にホッとしましたね」男性は作業を終えると、「気をつけて帰ってくださいね」とだけ言い残し、自分の車へと戻っていったそうだ。中村さんは、しばらくその男性を見送っていた。「見ず知らずの人なのに、あそこまで親切にしてくれたことがありがたかったです」無事に帰宅した中村さんは、修理の手配を考える余裕もないほど安堵し、泥のように眠ったという。突然の車の故障は、場所や時間帯によって大きな不安につながる。とくに、夜間や山間部を走行する機会がある人は、バッテリー状態を定期的に確認するとともに、万が一に備えてロードサービスの連絡先などを事前に確認しておくことが必要だろう。
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