孤立感に襲われたときに現れた一台の車
外は、異様なほど静かだったそうだ。風が木々を揺らす音だけが聞こえ、車内にいると自分の心臓の鼓動まで感じられた。
何度がエンジンをかけ直してみたが、警告灯は消えなかった。そして、30分ほどが経過した頃、遠くにヘッドライトの光が見えた。
「助かったかもしれない......」
中村さんの期待感は高まった。しかし、その車は速度を落とすことなく、そのまま通り過ぎてしまったという。
「本当に心細かったですね。あのときの虚しさは、今でも忘れられません」
再び暗闇の中に取り残され、不安はさらに大きくなった。それから約20分後、再び一台の車が近づいてきた。その車は、中村さんの車の後方に停車。車からは、中年の男性が降りてきた。
男性は窓を軽く叩き、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。事情を説明すると、「少し待っていてください」と言い、車から工具箱とジャンプケーブルを持って戻ってきた。そして、エンジン周りを確認しながら、原因を探ってくれたという。
「どうやら、バッテリー関連の不具合が原因だったようです。応急処置をしてもらうと、エンジンが正常な音を立て始めました。エンジンがかかった瞬間、全身の力が抜けました。本当にホッとしましたね」
男性は作業を終えると、「気をつけて帰ってくださいね」とだけ言い残し、自分の車へと戻っていったそうだ。
中村さんは、しばらくその男性を見送っていた。
「見ず知らずの人なのに、あそこまで親切にしてくれたことがありがたかったです」
無事に帰宅した中村さんは、修理の手配を考える余裕もないほど安堵し、泥のように眠ったという。
突然の車の故障は、場所や時間帯によって大きな不安につながる。とくに、夜間や山間部を走行する機会がある人は、バッテリー状態を定期的に確認するとともに、万が一に備えてロードサービスの連絡先などを事前に確認しておくことが必要だろう。