「妊娠中でも若い人は立つべき」という忘れられない一言
しかし、安心したのも束の間。もう一人の女性が、こう言ったのだ。
「でも、妊娠中でも若い人は立つべきよね」
山田さんは、まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。思わず相手を見ると、女性は気まずそうに視線をそらし、その後は旅行の思い出話を始めたという。
山田さんは、目的の駅に着くまでの時間がいつも以上に長く感じられたと振り返った。
「周囲の目線まで気になってしまって、居心地の悪さをずっと感じていました」
あの日から時間がたった今でも、当時の出来事を思い出すことがあるという。一方で、「自分が誰かに席を譲る立場になった時は、年齢だけで判断せず、体調が悪そうな人や困っている人に声をかけたいという気持ちは変わりません」と話す。
妊娠初期や持病、治療中など、外見からは分からない事情を抱えながら優先席を利用している人もいる。優先席では見た目だけで判断せず、一人ひとりにさまざまな事情があることを想像する姿勢が、誰もが利用しやすい環境につながっていく。