大阪メトロは2026年7月17日、大阪・関西万博で来場者の輸送を担ってきた電気自動車(EV)バスでトラブルが相次ぎ、使用停止になった問題で、購入の経緯に関する調査報告書を公表した。同日に放送された情報番組「かんさい情報ネットten.」(読売テレビ)はこの問題を計約45分間にわたって取り上げた。番組では、独自に入手した大阪メトロの稟議書や、販売元の「EVモーターズ・ジャパン」(福岡県北九州市、EVMJ)の内部会議の映像からずさんな導入の経緯があったことを報じた。万博期間中に計832件の不具合、うち運行支障が243件この調査結果を受けて、当時大阪メトロの社長だった河井英明会長ら役員3人は、EVバス購入に関する一連の経営責任を明確にするため、辞任・降任する人事が発表された。大阪メトロは大阪・関西万博の期間中、会場内外や大阪市内の輸送を目的にEVバス190台を導入。しかし、停車後に動き出したり、ブレーキが利かなかったりするトラブルが相次いだ。同社の調査報告書によると、万博期間中に計832件、うち運行支障が243件起きたとし、「公共交通としては使用不能と判断せざるを得ず、当社は約67億円もの特別損失を計上するという重大な損害を招いた」と指摘している。国土交通省は、2025年9月にEVMJに対し、総点検を指示。全国で販売した317台のうち3割以上で「ブレーキホース」の損傷などが確認された。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは、読売テレビの取材に、「総点検で見つかった不具合は3割だが、異常なぐらい多い。自社で目視点検した結果なので、実際にはもっと多いのでは」と指摘した。また、万博前の24年4月の購入決定時点で、大型・小型EVバスや充電器に不具合が確認されており、EVバスの自動運転化の改良を依頼していた会社からブレーキ抜けやステアリングの想定外挙動、モーター・コントロール・ユニットの故障などが立て続けに起きたことが既に指摘されていた。当時の社長は「すべての責任はWisdomMotor」特集では、問題に関わった関係者の声を放送した。EVMJの関係者は、不具合について、「後輪の車輪同士をつなぐ『付け根の溶接』が外れてしまい、『もう、これだめだね』っていうところだった。他にも何が起きてもおかしくないと現場サイドでは思っている」と証言した。EVMJは、バスの製造を中国の新興バスメーカー「WisdomMotor」に委託していた。23年8月に行われた社内会議の映像によると、投資家とみられる男性が、「聞いて一番怖いなと思ったのは、EVMJ製のインバーターでないものが載った状態で納車されていることを聞きまして」と追及すると、当時の社長とみられる人物は「前のインバーターを載っけたときから認証権を取ってないんですよ。イギリス向けの認証はとっているんですよ。『それでいいんでしょ』とWisdomMotorは思っていたんですよね」と釈明。そして、「極端に言えば、並行輸入の場合、製造メーカーは僕らではないですから、Wisdomが製造メーカーになって、すべての責任はWisdomMotorが書類に対して負わなければいけないことになっている」と述べた。国交省の担当者は「インバーター(電力を変換・制御する部品)の変更は車両認可に関する審査に影響していない」と説明するも、ナレーションで「ただ会社の安全性の意識は十分だったと言えるのか」と問いかけた。中国メーカーの関係者は、「EVMJが我々を選んでから、たくさんの部品を指定したいと要求してきた。問題は、当時EVMJが部品の選択を間違ったことにある。指定された駆動モーターは、別の中国メーカーのものだが、我々がよく使うものではない。そのモーターは中国で市場シェアが大きく値段も安い」と主張した。「EVMJは確実にEVバスを調達できる唯一の企業」番組では、なぜ大阪メトロがEVバスをEVMJから購入したのか、として、独自に入手した22年10月の大阪メトロの稟議書と紹介した。「来年度に最終組み立てラインを国内に建設し、最終組み立てから出荷までを完全に国内工場で行い、EV車の量産化が可能」「自社で車両の仕様を決め、車両の開発・製造をしており、車両トラブルにも対応できる」「短期間に国産バス量産が可能であることや今後、路線バスの導入・運用に対する対応が可能であることから、EVMJは確実にEVバスを調達できる唯一の企業」などと記載されていたと放送した。また、横須賀ゆきの解説委員は、調査報告書の一部を抜粋して、「万博輸送は『EVバス』という意識が強固に確立」「国内大手メーカー検討も断られ、技術・納期を満たすのはEVMJだけだった」「子会社の大阪シティバスは反対していた」「河井社長(当時)にリスクを伝えたが、取締役会で検討せず」と「漫然とEVMJに丸投げしているという構図を見えてきた」と話した。そして、国、大阪府・市の40億円以上の補助金が計190台のEVバス導入を後押ししたのでは、と指摘。「普通の手続きなら、試験的に導入となるところが、補助金がいっぱい入ってくるから、たくさん買ってしまおうという動機になってしまったのでは、と報告書でも書いてある」と語った。赤堀順一郎弁護士は、「損害賠償としては、不具合のある車が納入されている以上、民法の契約不適合責任ということで、返還なり賠償なり請求できるのですが、民事再生法で債務がカットされ、ほとんど返ってこない可能性が高い」と解説した上で、中国企業の資産を日本の法律で差し押さえることについて「かなり難しい。新興のバスメーカーがかなり歴史の浅い会社で、それほどの資産、40億や67億(の規模)を回収するのは非常に困難を極める可能性が高い」と厳しい見通しを示した。
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