沖縄本島北部のテーマパーク「ジャングリア沖縄」が2026年7月25日、開業1周年を迎えた。初年度の来場者数は約100万人、売上高は100億円を超える見通しだという。一定の成功を収めたように見えるが、運営会社の加藤健史CEO(最高経営責任者)は来場者数について「残念ながら、思うような数字に至らない結果」と不振を認めた。
当初は、沖縄美ら海水族館の年間入場者数約300万人の半分ほど、約150万人で採算が見込めると説明されていたが、それに届かなかった。しかも、来場者数の約100万人は併設のスパ利用者を含めており、数字以上の苦戦だったと言える。
約半数に「行きたくない」と言われる理由
ジャングリアは苦戦しているが、沖縄観光はむしろ好調だ。沖縄県が発表した2025年度の入域観光客数は1093万5800人で、前年度から9.9%増加し、過去最多を更新した。国内客は約799万人で過去最多、外国客は約294万人で過去2番目だった。
沖縄を訪れる人が記録的に増えているにもかかわらず、なぜジャングリアには「人が来ない」のか。
2026年7月に首都圏在住者800人を対象におこなったマーケティングリサーチ会社「リサート」の調査では、ジャングリアの認知率は約7割(68.5%)に達した。一方、ジャングリアを知っている人のうち「行きたい」と答えた人は26.5%、逆に「行きたくない」人は46.7%もいた。
行く気にならない理由は「沖縄まで行くのが大変」が44.7%で最多。「料金が高い」が29.2%、「沖縄では他の観光を優先したい」が23.6%、「内容に魅力を感じない」が23.1%と続いた。
東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなら、テーマパーク自体を旅行の目的にできる。だが、沖縄は航空券代や宿泊代を払って訪れ、海や那覇国際通り、首里城公園、沖縄美ら海水族館など多くのライバル観光地がある。
ジャングリアは「沖縄旅行のついで」に立ち寄るには使い勝手が悪く、「ジャングリアのために沖縄へ行く」ほどの吸引力もまだ確立できていない。
ジャングリアに「沖縄らしさ」は存在するか
料金差も無視できない。ジャングリアの1Dayチケットは大人6930円、子ども4950円。一方、同じ沖縄本島北部にある美ら海水族館は、大人2180円、高校生1440円、小中学生710円。大人料金を見れば、ジャングリアが3倍以上もするうえ、施設内での飲食費なども含めれば差はさらに広がる。
ちなみにジャングリアでは3時間程度の滞在を想定した「ふらっとチケット」を、大人2970円、子ども1980円で、9月30日までの期間限定で販売している。しかし、体験できる対象アトラクションは1回に限られる。
もう一つの壁は、「沖縄でなぜ恐竜なのか」が伝わりにくい点だろう。実際には絶叫系アトラクション、気球、ジップライン、ショーなどもある。それでも広告などで強く印象に残ったのは、恐竜に追われる「ダイナソー サファリ」だった。せっかく沖縄を訪れて、恐竜のアトラクションを体験したいという人がどれほどいるのか、疑問が残る。
美ら海水族館は、ジンベエザメやナンヨウマンタが泳ぐ巨大水槽をはじめ、サンゴ礁から深海まで沖縄の海を体感できる点が大きな特徴だ。「沖縄に来たからには行っておきたい」と思わせる魅力がある。
ジャングリアが売りにする「やんばるの森」は貴重な資源だが、多くの旅行者が期待する「沖縄らしさ」とは食い違う。沖縄県の過去の調査では、旅行の目的として「美しい海やビーチ」を挙げた人が45.8%だったのに対し、「森や川などの自然」は6.3%だった。
過去の調査ではあるが、沖縄旅行に求められる基本的なイメージが「海」であることは現在も変わらないだろう。その「ズレ」も、ジャングリアの年間来場者数が沖縄美ら海水族館の3分の1程度にとどまった一因と考えられる。
「満足度89%」でも客足が伸びない悲劇
皮肉なのは、訪れた人の評価は改善していることだ。運営会社の調査では、開業月のパーク満足度は69.2%だったが、2026年5月には89.2%まで上昇。待ち時間の短縮、新アトラクションの導入、暑さ対策などを進めてきた結果だ。
つまり現在の問題は、パークの中身ではない。開業直後に広がった混雑や待ち時間への不満、アトラクションの少なさといったネガティブなイメージばかりが先行し、改善後の状況があまり伝わっていないのだ。
運営会社は、2年目は「沖縄のみなさんと、次のジャングリアへ。」を掲げ、県民との関係を強めるという。ただ、地元で親しまれるには、料金や利用しやすさに加えて、パークが「沖縄に存在する意味」を示す必要がある。
ここからジャングリアはどう巻き返すのか。運営会社の筆頭株主としてパークを主導するマーケティング会社「刀」の森岡毅CEOら経営陣の手腕に注目が集まる。