TBS系の報道番組「サンデーモーニング」で、北方領土について、歌手の加藤登紀子さん(82)が「ロシアが領有」と発言し、直後に番組アナが「正しくは実効支配」と言い替えるシーンがあった。北方領土は、日本固有の領土とされているが、加藤さんは、色々調べたうえでそう発言したとして、番組内で修正はしなかった。TBSのコメンテーター起用については、何か問題はなかったのだろうか。「現実に求められているのは、領土ではなくて平和」2026年8月16日の放送では、ロシアのプーチン大統領が13日、北方領土の1つ択捉島を初訪問したことが話題として取り上げられた。番組では、日本がエネルギー調達の一部をロシアに頼るなど関係改善を進めていることを紹介した。そんな中での電撃訪問で、高市早苗首相がロシアに強く抗議したことを伝えた。コメンテーターとして出演した元外務事務次官の藪中三十二氏も、「高市総理が言われたように、断じて許容できない」と意見を述べると、司会者の膳場貴子アナが加藤さんにこう水を向けた。「加藤さんは、何を感じましたか?」すると、番組に出演した加藤さんは、自らが「知床旅情」を歌っていてその近さを感じているとしたうえで、こう答えた。「今、『北方領土に対して日本の要求は当然』とおっしゃったんですけど、私色々調べましたが、やはり現在北方領土はロシアが領有されているものなので。そこにプーチンが行くことに直接抗議できる立場に......まあ交渉、交渉中であるというのが日本の概念ですけど、ロシア側はそうではないわけなんで。やっぱり、ちょうどこの時期、今戦争が終わって敗戦81年ですけど。その戦争の最後の段階で、北方領土はいったんロシアの領有...当時はソ連ですけど、なっているということに対して一定の客観的判断は必要だと思うんですね」そのうえで、加藤さんは、「現実に求められているのは、領土ではなくて平和なんですよ」「こんなことのために、それがもっと難しくなっていくのは私も苦しいですね」などと持論を展開した。「起用予定については従来よりお答えしておりません」加藤さんの発言後、駒田健吾アナがすかさず間に入って、こう付け加えた。「加藤さんが『領有』という言葉をお使いになりましたけど、正しくは藪中さんのおっしゃる実効支配しているという形ですよね」一方、膳場アナは、「でも、おっしゃるとおりに、政治関係は悪化しても、個人レベルであるとか民間レベルの交流というのは、大切にしていきたいですね」と締めくくってしまった。加藤さんからは、「ロシアが領有」発言について、何らかの弁明もなかった。加藤さんの発言は、放送後にネット上で大きな話題になった。疑問や批判が多く、「歴史的事実を歪めて伝える」「国益を自ら投げ捨てるに等しい」といった指摘がされている。「TBSの認識を疑う」と同局の運営を疑問視する意見も出て、「サンモニが北方領土を否定し始めた」との極論すらあった。発言について、他にも認識のあやふやさを挙げる指摘が出た。加藤さんは、「戦争の最後の段階」でロシアが領有と主張したが、外務省サイトの北方領土に関する記述によると、日本の終戦後の1945年8月28日から降伏文書調印後の9日5日にかけて旧ソ連軍に占拠されたとされている。必ずしも、「戦争の最後の段階」とは言い切れないところがある。加藤さんは、その生まれ育ちからロシアとの関係は深いようだ。公式サイトなどによると、帝政ロシアが築いたとされる旧満州(中国東北部)のハルビン生まれ。ロシアの文化になじんだ父親の影響を受けた。68年には初の海外公演としてソ連を訪問したほか、旧ソ連で大ヒットした名曲「百万本のバラ」を自ら日本語に訳して87年に発表し、長年歌い続けている。とはいえ、「ロシアが領有」などの発言は、事実認識として根拠が乏しい。TBSが加藤さんにコメンテーターとして発言を求めたことに問題はないのだろうか。同局の広報室は26年8月17日、J-CASTニュースの取材に対し、「加藤登紀子氏の『領有』との表現につきましては、直後に番組キャスターのTBSアナウンサーより『正しくは実効支配』と訂正しております」と答えた。加藤さんにコメントを求めた妥当性や今後も起用を続けるのかについては、「コメンテーターの起用予定については従来よりお答えしておりません」とするに留まった。(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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