2026年8月6日、整備費2兆円規模ともいわれるアラブ首長国連邦(UAE)出資のAIデータセンター誘致をめぐり、秋田県がオンラインで開いた合同取材会。そこにリモートで現れた産業労働部の企業誘致推進監は、バスローブ姿でたばこをくゆらせ、画面の端には女性の姿もあった。当初この職員は「体調不良で自宅におり、着ていたのは寝間着だ」と釈明したが、実はこれがウソで、後日の再調査で、妻とは別の女性とラブホテルに滞在しながら取材会に参加していたことが判明した。8月14日、県は停職6か月と2階級降任の処分を発表した。この報道に、ネット上には「なぜ解雇ではないのか」「役所は処分が甘い」「民間企業なら解雇」などの意見が飛び交った。「停職6か月と2階級降任」むしろ重い部類公務員の懲戒には国家公務員を対象とした人事院の「懲戒処分の指針」があり、地方自治体もおおむねこれに準じた基準を持つ。懲戒処分は、軽いほうから戒告・減給・停職・免職の4段階に分かれている。免職に位置づけられるのは、公金の横領や窃取、暴行・脅迫を伴うわいせつ行為、放火・殺人・強盗、麻薬の所持や使用といった行為で、痴漢や盗撮、繰り返しのセクシュアルハラスメントは「停職又は減給」とされている。こうしてみると、世間の感覚では十分に"クビ相当"に映る行為の多くが、制度の側では最初から停職どまりに設計されているように映る。その背景には地方公務員法が定める身分保障がある。そこでは、公務員の免職は勤務実績の不良や心身の故障を理由とする「分限免職」と、規律違反への制裁である「懲戒免職」の2種類あり、法律や条例に定める事由による場合でなければ、職員の意に反して降任や免職はできないと規定している。秋田の事例の場合、職員の問題とされた行為は、職務規律違反と、当初の調査に対する虚偽説明だ。指針の量定に照らせば、停職6か月と2階級降任という処分は、むしろ重い部類に入る。民間企業でも、私生活の行為での懲戒解雇は難しいでは、今回の事例に対する「民間企業なら解雇」という意見は、正しいのだろうか。実は、労働契約が縛るのは原則として勤務時間中の事象で、私生活上の行為が懲戒や解雇の理由に直結しない。その典型が、1970年の最高裁判決で知られる横浜ゴム事件だ。工場の作業員が酒に酔って他人の住居に侵入して逮捕され、罰金2500円の刑を受けたことで、勤務先が作業員を従業員賞罰規則の「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した者」として懲戒解雇した。それを不服として作業員は訴訟を起こし、最高裁は「会社の組織、業務等に関係のないいわば私生活の範囲内」の行為で、刑罰が罰金2500円の「程度に止まった」こと、職務が「指導的なものでない」ことなどから、「会社の体面を著しく汚したとまで評価するのは、当たらない」として、作業員の勝訴が確定した。つまり民間企業も、みだりに私生活上の行為を理由として解雇はできない、ということになる。盗撮教師と盗撮巡査部長で処分が分かれた謎では、世間が公務員に対して「処分が甘い」と感じるのは、なぜなのだろう。それは、そのケースによって、どんな基準で、どの事実に基づいて処分を決めたのかがわからないからだろう。たとえば、同じ公務員が犯した性暴力事件に対する反応だ。埼玉県が2025年に公表した処分では、商業施設で女性を盗撮した36歳の男性教諭が懲戒免職となり、氏名まで公表されている。その一方、2025年に福岡県警の巡査部長が女性への盗撮などで書類送検されたケースでは、処分は減給6か月(のちに依願退職)ですんでいる。当初は「私的行為の減給処分は公表対象ではない」として、県警は処分そのものを発表しておらず、2026年1月に報道されて明るみとなったことで、波紋を呼んだ。同じような事件に見えても、なぜ処分が違うのか......公的な組織である以上、処分の理由と過程が不透明では、市民の不満をあおる結果が待っているのではないだろうか。
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