「家族葬 10.45万円~」。そんなテレビCMを流していた葬儀会社に、消費者庁が待ったをかけた。消費者庁は2026年9月18日、「小さな森の家」の屋号で家族葬サービスを展開する「金宝堂」に対し、景品表示法違反(有利誤認)に基づく措置命令を出した。問題になったのは、25年3~5月に地上波で放送されたCM。「1日1組 貸切ホール」「お得なプランがこの価格から」などとし、「家族葬10.45万円~(税込)」と表示していた。しかし消費者庁によると、貸し切りホールで家族葬を行うには、わずかな場合を除いて30万8000円以上が必要だった。「40万円から」が250万円、仕方なく契約同社は公式サイトに掲載した文書で、今回の措置命令について、「テレビコマーシャルで表示していた『10.45万円(税込)』という価格は、ホールを使用しない火葬式プランの料金であり、当該価格を表示した画面にはその旨も注記しておりましたので、当社としてはお客様を誤認させる意図は全くございませんでした」と釈明。その一方で、「しかし、今回の措置命令を受け、価格を訴求する広告においては、その価格がどのサービスについてのものであり、いかなる条件の下で適用されるものであるかが、お客様にとって一見して明確に理解できるものでなければならないという点を、改めて強く認識するとともに、深く反省しております」と謝罪した。葬儀料金をめぐるトラブルは全国で多発している。国民生活センターが24年2月に公表した事例では、「家族葬約40万円から」という広告を見て葬儀社に依頼したところ、「お宅はこのプランではできません」とオプションを次々に追加され、見積額が300万円近くまで膨らんだケースがある。最終的には250万円のセットプランを勧められ、仕方なく契約したという。さらに26年6月に公表された事例では、ネット広告にあった「50万円」のプランを希望した遺族に業者から120万円のプランが提示され、驚いた遺族がキャンセルを申し出ると、「葬儀をしないなら葬儀場に運んだ遺体の搬送費20万円を請求する」と告げられた。しかも広告には、依頼に至らなかった場合は搬送費を取らないとの記載があった。別の事例では、ネットで「家族葬50万円」と表示していた業者に依頼したところ、140万円のプランを案内され、さらに会食などの追加費用も加わって総額200万円を超えたとのケースが紹介されている。同センターが26年6月に公表した集計では、25年度の葬儀サービスに関する相談917件のうち、「高価格・料金」は482件で52.6%。半数を超えている。悲しみの中で次々と迫られる決断なぜ、これほど料金トラブルが起きやすいのか。最大の理由は、遺族に時間的、心理的な余裕がないことだろう。悲しみの最中でありながら、遺体を速やかに搬送して安置場所を確保し、短期間で葬儀の形式、ひつぎ、祭壇、生花、参列者への案内など多くのことを決めなければならない。そうした状況で葬儀の料金が広告より高かったとしても、仕方なく受け入れてしまう人は多いだろう。また、国民生活センターによると、プランやオプションなどの費用項目の複雑さもトラブルの要因になっているという。加えて、葬儀は頻繁に利用するサービスではない。消費者側が適切な「相場観」を身につけるのは難しく、しかも「故人のため」と考えれば、葬儀プランやオプションのグレードを下げることにも心理的な抵抗が生じやすい。業者の増加、弔い方の多様化で激化する競争一方、料金トラブルの背景を考える上で見逃せないのが、葬儀業界の競争激化だ。東京商工リサーチが25年9月に公表した調査結果によると、主要な葬儀会社505社の24年度売上高は4051億5200万円と前年度から4.6%増えた。市場は拡大しているが、24年に105社が新設された一方、休廃業・解散66件、倒産8件の計74件が市場から退出。新規参入が退出を上回る状態が続いている。同社は、家族葬の普及で葬儀単価の低価格化が進み、一日葬や直葬など弔い方も多様化する中、シェア争いがさらに激しくなると指摘している。競争が激しくなれば、過度な利益追求に走る業者が出てくる恐れが高まる。もちろん、多くの葬儀社は適正な料金と説明で遺族に向き合っていることだろう。それでも今回、地上波CMを放送するような企業で、表示された最低価格と実際に必要な金額に3倍近い開きがあったことは事実。全国で多発する料金トラブルも含め、消費者にとって看過できない問題だ。故人を送る場で、最後に残るのが料金への不信や後悔ではあまりにやりきれない。葬儀費用がプランなどによってある程度変わるのは仕方ないが、表示した価格と実際に必要となる金額が大きくかけ離れるような広告は、改めて見直す必要があるだろう。
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