電車の座席で足を大きく広げたり、通路に荷物を置いたりすると、ほかの乗客の移動を妨げることがある。日本民営鉄道協会が公表した「2025年度駅と電車内の迷惑行為ランキング」によると、「座席の座り方(詰めない・足を伸ばす等)」は2位、「荷物の持ち方・置き方(鞄・傘等)」は7位だった。「座席の座り方」のうち、最も迷惑に感じる行為としては「座りながら足を広げる・伸ばす・組む」が45.7%を占めている。毎日の通勤で電車を利用している小野寺由佳さん(仮名・40代)はある日、大きく足を広げて座る男性と遭遇した。大きなバックパックを足元に置き、足を広げる男性この日、小野寺さんはラッシュのピークを少し過ぎた時間帯に、電車へ乗り込んだ。「それほど混んでいなくて、座席は半分くらい空いていました。私はドア付近に立って、スマホでその日の仕事の予定を確認していました」数駅進んだところで、大きなバックパックを背負った男性が乗車してきたという。「座るとバックパックを足元に置いて、さらに足を大きく広げていました。荷物と足で通路がかなり狭くなっていました」男性はその後、イヤホンをつけずにスマートフォンで動画を見始めた。その音は、少し離れていた小野寺さんにも聞こえるほどだった。すると、途中の駅から、高齢の女性が乗車してきた。「その高齢の女性が男性の前を通ろうとしたとき、体がぐらっと傾いたんです。とっさに手すりをつかんだので転びませんでしたが、見ていてヒヤッとしました」しかし、男性は女性のほうを見ることもなく、スマートフォンを見続けていたそうだ。「これは、一言言ったほうがいいと思いました。でも、逆ギレされたらどうしようとか、いろいろ考えてしまって......。結局、私は何もできませんでした」学生がひと言「こちらからどうぞ」小野寺さんが声をかけるべきか迷っていると、男性の斜め向かいに立っていた学生が動いた。「女性のほうを向いて、『こちらからどうぞ』と言いました」学生は体を半身にして、高齢女性が通れるスペースをつくったそうだ。「女性は『ありがとう』と言って、その横を通っていきました。学生は女性が通り終わると、何事もなかったように元の向きに戻ったんです」男性に注意したり、文句を言ったりしたわけではない。困っている女性に気づき、自分が少し動くことで通り道をつくっただけだ。その一連の動きが、小野寺さんには印象に残ったという。「私は『注意したほうがいいかな』とずっと考えていたのに、その学生が迷う様子もなく動いていました。すごく自然だったんです」知らない人に注意するのは勇気がいるし、トラブルになるリスクもある。小野寺さんは、必ずしも相手に直接言うことだけが方法ではないと思えたそうだ。
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