簗和生農水相が大炎上状態だ。自民党を支持しなかった自治体への「予算大幅カット」発言と、それに対する釈明が火に油を注ぐ結果となり、過去の言動も掘り返される始末となった。裏金問題の「前科」がありながら閣僚に抜擢し、選挙応援では「私の大事なやなちゃん」と大絶賛した高市早苗首相の任命責任が問われるのは必至だ。
衆院選投開票日に地元紙の取材を拒否
簗氏は2026年5月に地元の栃木県で開かれた会合で、那須烏山市と那珂川町の2026年度の道路予算を「大幅にカットしました。那須烏山市については前年比で64%減、3分の1にしました。そして那珂川町は54%減にしています」と発言し、この音声が流出し、週刊文春や週刊新潮が報じた。2月の衆院選では栃木3区から出馬したが選挙区では敗れ、比例で復活当選している。この際、那須烏山市と那珂川町の首長は、当選した保守系無所属の対立候補を応援していた。
10月2日午前に農水相として開いた記者会見で簗氏は「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄について、大臣としてのコメントは控えたい」と独自の主張を展開。報道陣から追及を受けるも、同様のフレーズを約20回にわたって繰り返し、SNSでは「壊れたテープレコーダー」とあきれられる事態となった。
しかし、同日夕方に議員として開いた2度目の会見では「報道で書かれているので、そういう発言をしたのだと思う」「誤解を招くような言いぶりだった」と釈明。進退については「しっかりとその職責を果たしてまいりたい」と述べ、辞任は否定した。
この態度に痺れを切らしたのか、地元紙である下野新聞が同日夜、問題となった音声の大部分をウェブに公開した。新たに「私に頼らない、私がいらないということで無所属の議員を応援するのであれば、私が取ってきた予算をなんで受注するのか、とはっきり言ってやりました」という、さらに強烈なワードを発していたことが判明。SNSでは「誤解を招くとかいう生ぬるいレベルじゃない」「もうこの記事だけで辞職もの」と、さらなる批判の声が噴出し始めている。
簗氏は衆院選の投開票日に下野新聞の取材を拒否している。投開票日翌日の同紙記事によると、
「簗氏は理由を『選挙期間中を含めて公正公平な記事の扱いがなされていない』などと秘書を通してコメントを出した」
という。
簗氏の発言に対し、身内である自民党からも冷ややかな反応が見られる。宮沢洋一参院議員は10月2日に放送されたBS-TBSの番組「報道1930」で「あれだけ大勝ちした選挙で小選挙区で勝てなかったというので、大変悔しい思いをされたんじゃないかなという気がします」と苦笑いしながら評した。
「無所属や野党では3区の予算はカット」...後援会が動画でPR
この騒動を受け、簗氏の過去の言動も掘り返されている。2月の衆院選期間中、簗氏は街頭演説でも「政権与党の議席がなくなった地域の予算というのはごっそり削られます」「遠慮なしに予算を削れるんです」「この地域についてる予算がガクっと減りますよ」と発言していた。後援会のYouTubeチャンネルも、わざわざ動画のタイトルに「無所属や野党では3区の予算はカットされる」との文言を入れて強調していた。
会見では「誤解」と釈明した簗氏。だが、普段から同様の考え方を持っていたことを裏付ける内容に、SNSでは「『記憶』にはないが『記録』にはある」「恫喝の証拠映像」などの声が相次いでいる。
簗氏は12年に初当選した、いわゆる「安倍チルドレン」の1人。21年、自民党党の会合で性的少数者に対して「生物学的に自然に備わっている『種の保存』にあらがってやっている感じだ」と発言。26年9月18日の就任会見ではこの件について問われるも「公の場での発言は差し控える」と説明を避けていた。さらに旧安倍派の裏金事件では、5年間で計1746万円の不記載があり、党から役職停止6か月の処分を受けた過去がある。文科相に就任した関芳弘衆院議員とともに、改造内閣で「裏金議員」としての初入閣となっていた。
社会学者の古市憲寿氏は自身のX(旧Twitter)で、簗氏の発言を「一言でいえば、政治家として最低だと思う」と一刀両断。「『選挙で支持しない住民には不利益を与えてもいい』と言っているのと同じだから。不倫とかのスキャンダルとは次元が違う」と指摘した。元衆院議員の米山隆一氏は、簗氏が選挙区で反自民系の候補ではなく保守系無所属の候補に敗れたことから「自分が負けたら関係ない自治体に予算報復をすると言う事です」と分析した。
一方で高市首相は2月の衆院選でも簗氏を熱烈に応援していた。「とにかく私の大事なやなちゃん。私の知恵袋のやなちゃん。いなかったら大変、本当に大変です」などと演説。4月を最後に新たな投稿がない簗氏の公式Xは、首相と並んだ応援演説の様子をトップに固定しており、じわじわと政権にダメージを与えるような形となっている。臨時国会が10月5日に召集されるが、高市首相にとってはいきなり爆弾を抱えたままでのスタートになりそうだ。