「ニデック問題」監査法人に責任はないのか、41年間も同じ法人が担当

   上場継続か、それとも上場廃止か。モーター大手のニデックの経営が風雲急を告げる中、監査法人の対応にも焦点が当っている。毎年の決算にお墨付きを与える役割がある監査法人だが、「いったい何をしていたのか」とその責任を問う声が出始めた。

  • モーター大手のニデック問題(画像はイメージ)
    モーター大手のニデック問題(画像はイメージ)
  • 41年間同じ監査法人が会計監査を担当
    41年間同じ監査法人が会計監査を担当
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記者会見に異例、監査法人の同席

   2026年10月1日に京都市内であったニデックの会見は「このような形態は聞いたこともない」(大手監査法人の元幹部の公認会計士)というほど異例だった。

   会見には、新社長になる戒田理夫氏らのほか、PwCジャパン有限責任監査法人の久保田正崇代表執行役も同席し、同じ壇上に並んで記者団に向き合っていた。

   会計監査を担う監査法人は、その企業から独立していることが条件だ。守秘義務も課せられている。このため企業の監査についてマスコミの取材に応じることも、独自に記者会見を開くこともまずない。記者から「異例というか珍しい。どういう意図なのか」との質問が出た。

   これに対し、ニデックの南井正之常務執行役員(コンプライアンス担当)が答えた。PwCの監査意見が2026年3月期を含め2年連続で「意見不表明」となったことに対し、「できる限りの状況を正しく的確にお伝えしたい」と述べた。PwC側とも相談して決めたことも付け加えた。

「不適切な会計処理に携わった役職員が今も関与している」

   異例ではあるが、過去にこの形態が検討されたことはある。金融庁が設置した「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」は、2019年1月にまとめた報告書の中で、意見不表明などの場合、株主総会のほか「企業が設ける対外的な説明の場に監査人が同席しての説明などが考えられる」といった案を示している。意見不表明自体がまれだが、今回の対応はこれに沿った形とも言える。

   会見でPwCの久保田氏は厳しい面を見せ、不適切な会計処理に携わったニデックの役職員が今も関与している可能性を指摘し、「このような状況では信頼できない」と述べた。

監査法人に対して「説得しやすい相手」

   PwC側にも責任があるという見方もある。青山学院大の八田進二名誉教授は、監査法人は企業に助言や提案といった指導する役割があることから、「指導機能を発揮できていない。2期連続の意見表明は異常事態といえる。監査意見を表明する役割のあるPwCがそれを履行できていない責任がある。一旦、監査を降りるべきではないか」と話した。

   日本公認会計士協会は10月2日、PwCの意見不表明について、「資本市場の信頼性の観点から遺憾な事態であります」とのコメントを出した。業界の自主規制団体として対応していくという。

   会見では、ニデック、PwCともに今の体制で監査を続ける意向を示し、「コミュニケーションをとりながら進めている」「同じ目標に向かって進んでいる」などと前向きだった。しかし、これに対しても、監査法人の独立性という点で疑問視する専門家もいた。

   記者からはこれまでの責任を問う質問も出た。今年2月に公表されたニデックの第三者委員会報告書では、ニデックがPwCを「説得しやすい相手」などと軽視している姿勢が記されている。

   今後、ニデックはPwC側から関係監査に対する適正意見を得ると同時に、10月下旬に内部管理体制報告書を東京証券取引所に提出する。東証はこれをもって上場維持か廃止か、もしくは猶予期間を設けることも考えられる。有価証券報告書によると、再編前の時代も含めると41年間も同じ監査法人が会計監査を担っていた。

(経済ジャーナリスト 加藤裕則)

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