兵庫県の斎藤元彦知事は2026年10月7日の定例記者会見で、以前の会見で「人殺しやないか、お前は」など発言したフリーランス記者に対し、「円滑な会見運営の観点から現時点で定例会見の参加を受けることは困難」と、参加を拒んだ。
この判断を巡って、この日の会見は紛糾。質疑応答では、すべての記者がこの問題について、知事の認識を質し、その他の県政課題に関する質問は出なかった。
斎藤知事はフリーランス記者を刑事告訴
フリーランス記者は6月3日の会見で問題の不規則発言を行った後、記者クラブは他の記者の発言を遮る不規則発言を理由に、一時参加を認めない措置をとった。その後、この記者が同様の行為があれば、以降の出席を辞退すると誓約したことを踏まえ、この記者が10月7日から出席する予定だったが、記者クラブと県が会見を共催する中、県側が記者の出席を拒んだ。
また、斎藤知事は会見を巡る発言に対して、この記者を名誉毀損容疑で兵庫県警に刑事告訴している。
記者の出席に対して具体的な基準示さず
斎藤知事は7日の会見の冒頭、「本日行事が本当に立て込んでいるため、申し訳ありませんが1時間程度で終わらせていただく」と宣言し、会見が始まった。
質疑応答では、記者からフリーランス記者の参加を拒否する法的根拠や、表現の自由に抵触するのでは、との知事の判断に異議を唱える質問が相次いだ。
斎藤知事は、
「当該者のこれまでの不規則な発言、そして不適切な発言を含め、総合的に勘案しまして円滑な会見運営の観点から、現時点で、定例会見の参加を受け入れることは困難であるという風に判断をした」
と説明。また、この記者が会見に参加できなくとも、オンラインで会見を視聴できることや担当部局で取材を受けることで、「取材の機会を確保している」と話した。
今回の判断は、法令や条例に基づいたものではなく、「総合的に検討した結果によるもの」と繰り返し、最終的に知事が判断したと説明。また、知事自身が不適切な言葉を受けたことに対して「個人的な感情」では判断していないとした。
加えて、「6月3日の会見では、知事に対して、極めて不適切な発言が不規則発言の中で威圧的、感情的対応をもって発せられた。会見上の外でも及ぶ行為が確認できた」と述べ、フリーランス記者の6月の発言については、
「一般的な社会通念に照らして、容認しがたく、他者の人格と尊厳を著しく傷つける一般的にも相当の精神的負担や心理的圧迫を受けるというものであり、極めて不適切な言葉だと思う」
「発言を容認するということは普通の感覚だと難しいと思う」
などと主張した。
一方、記者の出席に関しては「不規則発言や不適切発言の再発の懸念が十分に払拭されたという風に受け止められることが大事だと思う」と具体的な基準は示さなかった。
斎藤知事の発言を巡って、記者からは、
「こんな恣意(しい)的な運用で公平な県政はできるのか」
「知事は自らの説明責任よりも自らの感情が重いと判断しているように思われます」
などと厳しい指摘が続いた。
県の担当者の「見解」に知事が反論も
また、不規則発言について、会見に出席していた県の担当者が知事とは異なる「見解」を示す場面も。
記者が斎藤知事の発言の途中に、知事の発言に対して疑問を呈したところ、知事は「今、私が話させていただいてます。不規則発言です」と述べ、
「質問されている方以外の場面で、発言をされたということ、そして、私がしゃべっている間にも発言をして、これは不規則発言にならないのか」
と司会者に鋭い目配せしながら、見解を求めた。
司会を務める県の担当者は、
「ラリーの中で行われる、途中で意図としない質問に答えていることを言うのは、私は不規則発言とは言わないと思う。全然違うところから、質問している人とは違う人が言えば、不規則発言だと思う」
と応じた。
会見の最後、知事は司会者の回答に不服だったのか、次のように話した。
「これまでも私がしゃべっている時に、質問されている方が被せてきた場合には、司会者が何度もこっちがしゃべっているときには発言はお控えくださいということも、違う司会者が言っていますので、基本的にはやはりラリーの中であっても、こちらが発言しているときに被せてくるというのは、私は不規則発言だというふうに受け止めています」
記者から質問が飛ぶ中、知事は「次の公務がありますので、失礼します」と語り、会場を後にした。
フリーランスの記者は7日の会見後、自身のYouTubeで「極めて不適切な判断だと思う。無期限かつ明確な条件がなく、法的根拠もない。こちらとしてはどうすれば良いか分からない」と話した。また、法的な措置に関しては、弁護士に相談を行っており、検討しているという。
記者クラブは会見後、知事が恣意(しい)的に記者を選別するかもしれないという懸念があるとし、
「今回の判断は、記者クラブとして受け入れられません。開かれた知事定例会見を求めます」
と抗議する声明を出した。
専門家「外形的な基準満たさず、首長が不都合な人物を会見から追い出す効果」と指摘
言論法を専門とする専修大文学部の山田健太教授は、J-CASTニュースの取材に対し、今回の問題について次のように話す。
「日本では記者会見が『行政サービス』の一環であるとして、会見をする政治家の側が開催を拒否したり、出席者を選別したりして良いと認識していると思われる事例が後を絶たない」
「いうまでもなく記者会見は、国民や県民といった有権者・住民等に、行政の責任者が説明責任を果たす場であって、市民に代わって憲法で保障された『知る権利』を行使する記者に対し、取材の機会を保障することが求められている。少なくとも、恣意(しい)的な選別をすることなく、取材に応えることは公権力たる首長の政治的義務である」
県の記者参加を拒否する理由に挙げた「円滑な会見運営」については、
「外形的な基準を満たさず、首長が不都合な人物を会見から追い出す効果を発揮しうるだけに、関係する報道機関が一致して撤回させる必要がある」
と語る。