2024年 4月 26日 (金)

ベルギーの乳児死亡裁判で浮上! グルテンフリー食の栄養度

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   ベルギーで生後7か月の乳児にグルテンフリー食のミルクのみを与え栄養失調で死亡させた両親の裁判が始まり、殺人による懲役刑が求刑されていると2017年5月16日(現地時間)英タブロイド紙のデイリー・メールなど複数の海外メディアが伝えている。

   グルテンフリーといえば健康食というイメージもあるが、実際には病気の治療食であり健康な人が食べてもなんらかの効果があるというエビデンス(科学的な証拠)は存在しない。

  • グルテンフリーでなんでも健康、になるわけがない
    グルテンフリーでなんでも健康、になるわけがない
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グルテンフリー食は栄養価が低い

   グルテンフリー食とはその名の通り「グルテン」というたんぱく質を除去した食品を食べることだ。グルテンは小麦やライ麦、大麦といった穀物に含まれており、パンのもっちりとした噛み応えや弾力を作り出すもとになっている。

   健康な人にとっては何の問題もない成分なのだが、「セリアック病」「グルテン過敏症(不耐症)」「グルテンアレルギー」といった病気の患者には危険な成分となるため、グルテンを除去したグルテンフリー食を治療食として食べる必要があるのだ。

   では今回死亡した乳児もこうした病気だったのだろうか。デイリー・メールはベルギーの検察当局の発表として「両親は自己診断で子どもがグルテン過敏症であると決めつけ、病院にも行かずライスミルクやキヌアミルクのみを与え続けていた」というコメントを取り上げている。今となってはわからないが、少なくとも医療機関で診断されたわけではないようだ。

   裁判で両親は子供に粉ミルクを与えたところ痙攣し始めたので、グルテンフリー食にする必要があると考えたと主張している。検察側はブリュッセルの大学病院に勤務する小児科医による「グルテンフリーの食品は乳児に必須のたんぱく質やミネラル、ビタミンが含まれておらず、仮に治療のためだとしてもこれらの栄養を補う食品を与えることが不可欠である」という証言をもとに、意図的に餓死させたに等しいとして懲役刑を要求しているようだ。死亡時に検死を行った検死官も体重が生後7か月の時点で4.3キログラムしかなく、胃の中は完全に空だったと証言し「十分な食事を与えられなかった餓死」と証言している。

   ここ数年、グルテンフリー食が健康食としてセリアック病などの患者ではない健康な人が食べることが流行しているが、健康効果があるという根拠はなにもなく、海外ではさまざまな学会から警鐘が鳴らされている。米国心臓病協会(AHA)は3月に「グルテンフリー食は食物繊維やビタミン、ミネラルが極端に少なく栄養価が低い」とし、病気ではないのにグルテンフリー食をたべることは制限すべきではないかと注意喚起を発表した。

   米国の患者団体である「セリアック病財団(Celiac Disease Foundation)」もウェブサイトで公開している患者のための食事プランの中で、「グルテンフリー食は栄養価が低いため、患者は栄養学の専門家と協力して食事を考える必要がある」と明言。足りない栄養を補うために食費にコストがかかり、患者の経済状態が悪化することが問題だとしている。

2型糖尿病リスクまで上昇する可能性

   栄養価が低いというだけでも健康食とは思えないが、AHAはさらにグルテンフリーによって病気のリスクも高くなるのでないかと推測。約20万人の食事と病気の記録を30年間追跡したデータを調査しグルテン摂取量と病気の関係を分析したところ、グルテン摂取量が少ないほど2型糖尿病発祥リスクが上昇しているという衝撃的な結果も発表している。これでは不健康食だ。

   理由はやはり栄養価の低さとされており、特に2型糖尿病の予防因子として知られている食物繊維の摂取量が低いことが原因ではないかとAHAはコメントしている。

   ネット上ではグルテンフリーの健康効果を主張する記述もよく見られるが、そこには何の根拠もない。あくまで病気の治療食であり、その治療食を食べている患者たちは栄養管理に細心の注意を払っている。「健康そうだから」というイメージだけで食事を選ばず、まずはバランスよく様々な食品から栄養を摂取するという当たり前のことをから見直すべきだろう。

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