2024年 3月 19日 (火)

悩める店長「不調の部下を休ませて通院させたい!」

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   社内トラブルの対応にあたっては、すべてを人事部が対応することはできない。各部署の管理職による日常のマネジメントの中で、問題を大きくせずに解決を求められる場面も必要だ。今回は「部下に対応するノウハウが足りない」と嘆く現場の店長からの相談を紹介する。

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真面目でプライドが高い部下が「診察」を拒否

――私は、衣料品小売チェーンで店長をしています。これまでマネジメントといったら、売上・利益の数字と人員の管理が中心だったのですが、最近は従業員の個人的な悩みの相談を受けたり、声を掛けて様子を聞いたりすることが増えています。ただ、そういう対話は正直得意ではなく、これでは店長が務まらないなと悩んでおります。

   実は半年ほど前から、ある部下の様子がどうもおかしいということは、うすうす気が付いていました。それまで皆勤賞を続けてきたのに、遅刻をしてくるようになったり、ときには体調不良で休む日も出てきました。

   仕事も正確で、ほとんどミスをしない男だったのですが、以前はなかったようなミスをしたり、仕事の優先順位をつけられずに混乱することも見受けられるようになってきました。ときには髪形や服装が乱れたまま出社することもあります。本当に、そんなことはこれまでなかったのですが・・・。

   心配になったので、意を決して「何かあったか?元気なさそうだけど」と聞きましたが、「いや、何でもありません。大丈夫です」の一点張り。仕事量を軽減しようと分担の見直しを持ちかけると、「いや、できます。ここで外されては自分のプライドが許しません!」と、涙ぐみながら強く主張してきました。

   そのとき、自分に悩みを打ち明けてくれないのなら、専門の病院でカウンセリングや診察をしてもらったりした方がいいなと思いました。そこで、「少し休みを取ったらどうか」「会社が提携している病院に行ってみては」と言ったのですが、首を振って従う様子がありません。自分としては部下の心をほぐして、なんとか休ませたいのですが、どうすればよいものでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
「病気か否か」ではなく「仕事に影響が出ている部分」に着目して専門家へ

   言わずもがなですが、この手の対応には、まずは「相手の言うことに耳を傾ける」ことが原則です。むやみに「気分転換してみれば?」と提案したり、「誰にでもそういう頃がある」と体験を話したり、「憂さを晴らそう!」とお酒の場に誘うことなどは、こういう段階では良い影響を与えません。まずは相手に「認めている」などポジティブな要素を伝えた上で「最近、よく眠れてる?」と尋ねるのがよいでしょう。寝つきが悪いとか、短時間で目が覚めてしまうとかいう事実があれば、それをきっかけに休みや診察を勧めることができるからです。

   それでも勧めが受け入れられない場合には、仕事上に影響が出ている問題(遅刻やミスなど)を確認し、改善目標が達成できなかった場合には、医療機関やカウンセリングや相談窓口などの専門機関への受診を約束しておくことが効果的です。例えば「この1ヶ月間は遅刻ゼロを目標にしよう。もし、達成できなかったら体調不良が心配なので、身近な医者に診てもらって不調な点がないか相談してみよう」といった流れです。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「金銭」と「雇用」への不安を軽減させる説明をする

   メンタル不調を抱える人が休職勧告に従わない理由は、プライドなどのほかに「金銭」や「雇用」に対する不安を抱えていることも考えられます。管理職はこの2点について自社のルールを人事部に確認し、本人に丁寧に説明しておけるようにしましょう。まず「金銭的不安」については、休職中は無給という会社が大半ですが、もし一定額の手当が出る制度があれば、それを伝えます。また、会社からは無給であっても、病気休業中には健康保険から「傷病手当金」(標準報酬日額の3分の2)が支給されることを説明してあげてください。これで安心する人もいるでしょう。

   また、「休んだら辞めさせられるのでは」という不安に対しては、健康を取り戻せば職場に復帰できることや、上司自身がそれを望んでいることを伝えましょう。配置転換の話は、職場復帰したものの完全に復調していない時点で検討すればよいことです。ただし休職前に、念のため就業規則の「休職」に関する規定(どのくらい休職が続くと解雇となるか等)を確認してもらうことは重要です。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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