2019年 1月 24日 (木)
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ノルマが「ブラック」に陥る境界線 その商品「悪徳」「暴利」じゃないですよね(大関暁夫)

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   札幌市内の不動産仲介チェーン店舗で、室内に消臭スプレーを一斉に大量噴霧したことでガス爆発が起き、多数のケガ人が出る騒ぎとなりました。

   関係者が事後調査を進める中で、大量噴霧した理由が、問題のスプレー缶は1本1000円でそれを使用した作業費込み1万円のサービスに、本社からノルマが課されていたことやノルマ達成に向けてサービスの獲得はしてはいたものの実際に実施されないケースが多かったこと、スプレー缶が未使用で大量に残っている場合、本社の点検でそれが発覚して怒られることを恐れたことなどにあったと、わかってきました。

  • そのノルマ、大丈夫ですか?
    そのノルマ、大丈夫ですか?

「ノルマ=ブラック」は言い過ぎか?

   「この不動産業者ブラックですよね」。ちょうどこのあたりの裏事情が発覚した翌日にお目にかかった知り合いの社長は、ガス爆発の件に話が及ぶやいなや、断罪するかのように言いました。

   ひと言で「ブラック」と断罪するのは簡単なことなのですが、問題はこの不動産業者のどこにブラック要素が潜んでいたのか、自社にその芽はないと言えるのか――。この手の機会には、そこはしっかり押さえておかなくてはいけないのではないかと、瞬間的に思いました。

   「ノルマ」という言葉にはどこか悪いイメージが潜んでいるのですが、言い換えれば目標のことであり、これをすべてブラックと言ってしまうのは問題があります。

   もし問題があったとすれば、ノルマを達成せんがために不正をしないとなかなか達成できないような状況になっていなかったか否か、あるいは不正が横行する理由としてそもそもノルマを課された商品販売、サービスやセールスがノルマを課すにふさわしいものであったか否か、という点に着目して問題点を検証する必要があるように思えます。

   2018年、スルガ銀行で問題になった不正融資問題は、そのわかりやすい一例です。銀行融資は、商品そのものは決してブラックな商品ではありません。しかし、担当者に収益性の高い不動産関連融資に関する大きな目標が貼られ、健全な利用者に対して貸付をしているだけでは目標に達することができない。

   そんな状況下で、借りたいけれども通常の審査では通らないような借入申し込みに対して、所得資料の改ざんなどをして融資し、目標をクリアすることが当たり前になってしまっていた、という状況は明らかにブラックであると言えます。

ノルマを課していた商品そのものが「ブラック」だった

   問題が発覚したスルガ銀行が公表した対応策は、単に融資審査の厳正化を徹底するということだけでなく、不動産関連融資そのものの取り扱いをやめるというものでした。

   これはどういう意味かといえば、売り方、ノルマの課し方だけに問題があったのではなく、不動産関連融資そのものにノルマを課すということに問題があったのだと銀行が認めた、という意思表示であったと言えます。

   すなわち、無理を強いなければ売れないような商品、あるいは明らかな金儲け主義の商品にノルマを課して、結果的に無理な販売をしていたと認めたわけなのです。

   今回、ガス爆発を起こした不動産仲介業者はどうかと言えば、消臭サービスというものが無理なノルマを課さないと売れない商品だったのではないか。さらには、そもそも原価1000円の商品を作業費込みとはいえ1万円で販売するというのは、金儲け主義の片棒を担がせることにノルマを課していたのではないか、ということになるのです。

   すなわち、本件ブラックの根源は、ノルマを課していた商品そのものがブラックだったのだと思えるわけです。

こちらが売りたいものは利幅が大きい

   以前、OA機器販売代理店H社の社長から、こんなお悩みを聞きました。

「うちを辞めて、うちよりも大手の同業他社に転職した社員が、うちのことを『あの会社はブラックだ』と、ふれ回っているらしい。その理由が『常に大きなノルマを負わされて社長に尻を叩かれるから、どうしても騙しに近いような売り方をすることになる』というもの。しかし、私は騙して売れなどと指示したこともないし、それはそういう売り方になる本人の問題であってうちはブラックじゃないと思うのだが、どうだろうか」

   この時も、私が社長に申し上げたのは、「普通じゃなかなか売れないもの(悪徳なもの)、常識外に利益率の高いもの(暴利なもの)を売ることにノルマを課していませんね」という確認でした。

   社長はしばらく考えて、「少しだけだが、販売目標を課す商品の見直しは必要かもしれないな」と言いつつ、次のような気づきを得たようでした。

「確かに普通じゃなかなか売れないものは、ニーズが薄いからに相違ない。それでもその商品にノルマを課すのは、こちらがぜひ売りたいと思うほど利幅が大きいからであって、それは顧客ニーズの薄いものを売りつけて大きく儲けさせてもらう、という売り方になってしまう恐れがあります。さらに行き過ぎてしまえば、ブラックと言われてもそれは否定できなくなるでしょうね。社員が目標に押されて誤った売り方をしかねないものには、目標を貼ってはいけないということですね。今一度、自戒の念を込めて見直します」

   繰り返しになりますが、ブラック化の最大の根源は「普通じゃなかなか売れないもの(悪徳なもの)、常識外に利益率の高いもの(暴利なもの)を売ることにノルマを課すこと」です。

   1000円のスプレー缶を1万円で販売することにノルマを課していた札幌の不動産仲介業者の一件で、ブラック関連の忘れてはいけないポイントを思い出させてもらいました。自社のノルマもその観点から、今一度点検してみるのがよろしいかと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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