2019年10月末の離脱予定日まで、あと3週間あまり。英国の欧州連合(EU)離脱騒動に新しい動きが出てきました。英首相官邸が「EUは英国との合意に否定的だ」と語ると、EU側は「ばかばかしい責任のなすり合いはやめろ」と応酬。双方が折り合うメドが立たないなか、メディアは「いよいよ激しい戦いに突入した!」と盛り上がっています。「ジョンソンよ、バカなゲームはやめろ!」新たな動きは、EU離脱をめぐる英ジョンソン首相と独メルケル首相との電話会談が発端でした。メルケル首相側が「プライベートな会話」だとコメントを拒否する一方で、英首相官邸が「英国が示した妥協案にメルケル氏が難色を示した」と語ったのです。ANo10sourcehassaidaBrexitdealis"essentiallyimpossible"afteracallbetweenthePMandAngelaMerkel(英首相官邸筋は、アンジェラ・メルケル首相との電話会談の後、「離脱条件の合意は本質的に不可能」だと語った)No10:英首相官邸、ダウニング街10番地essentially:基本的に、本質的に英首相官邸筋によると、メルケル首相は英国が提案した離脱案に対して「overwhelminglyunlikely」(まったくあり得ない)と強く否定したとのことですが、EU側では「メルケル首相がそんな言葉を使うとは思えない」との疑念が噴出。ユンケル欧州委員長がツイッターで、「ジョンソンよ、ばかなゲームはやめろ」と激しく非難するに至りました。What'satstakeisnotwinningsomestupidblamegame(大事なことは、ばかげた非難合戦に勝つことではない)atstake:大事なこと、危機に瀕していることblamegame:非難合戦、責任のなすり合いユンケル委員長は続けて、「大事なことは、国民の安全や利益とヨーロッパと英国の未来だ」と投稿。まさに正論そのものの反論に、英国内からも「ユンケルの言うとおりだ」といった声が相次いでいます。「激しい舌戦」に沸くメディア英メディアによると、「非難合戦」は名門オックスフォード大学の弁論部で鍛えたジョンソン氏の「お得意の手口」だそう。しかも今回は、「EUに拒絶された被害者」を装うことで責任逃れをしようという計算だと分析しています。英国民に「EU側の非」を印象づけたいジョンソン英首相。あの手この手で、巧みに情報戦を仕掛けてくることでしょう。国際政治のトップレベルで繰り広げられる生々しい舌戦に、メディアは「いよいよ激しい戦いに突入した」と沸き立っています。WearenowenteringthemostintenseroundoftheBrexitblamegame(いよいよ我々は、EU離脱交渉をめぐる非難合戦で、最も激しい戦いに突入した)intense:激しい、強烈なround:回戦それでは、今週の「ニュースな英語」は「blamegame」を取り上げます。「blame」(非難する)と「game」(ゲーム)を組み合わせて、「非難合戦」「責任のなすり合い」という意味で使います。Playtheblamegame(罪のなすり合いをする)「Don't」を使って、「~するな」という言い方です。Don'tplaytheblamegame(罪のなすり合いをするな)「Stop」を使うと「~をやめろ」というニュアンスになります。Stopblamegameoverairpollution(大気汚染に関して罪のなすり合いをやめろ)欧州委員長のユンケル氏は、「Quovadis?」ということばを、ジョンソン英首相に投げかけてツイッターを締めくくっています。「クォ・ヴァディス」とはラテン語で「(あなたは)どこに行くのか?」という意味。ジョンソン氏が、そして英国がどこに向かっているのか......。まだまだ「blamegame」は続きそうです。(井津川倫子)
記事に戻る