2024年 4月 28日 (日)

スティーブ・ジョブズはなぜ「ミヤケ」を選んだのか?! 海外メディアが称賛する三宅一生氏の功績(井津川倫子)

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   世界的に活躍したファッションデザイナーの三宅一生氏が亡くなりました。時代を作った天才デザイナーに各国著名人が哀悼の意を示していますが、驚くのは海外メディアの報道ぶりです。

   ありとあらゆる言語で「MIYAKE」の死を悼むニュースが速報で流れましたが、とりわけ注目を集めているのが、Appleの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏との「ご縁」。

   ジョブズ氏の「ユニフォーム」ともいえる黒のタートルネックが、「イッセイミヤケ」ブランドだったことに、あらためて焦点が当たっています。世界を変えた二人の天才の「功績」を追ってみました。

  • スティーブ・ジョブズ氏が愛用した「イッセイミヤケ」に、海外メディアがあらためて注目(写真はイメージ)
    スティーブ・ジョブズ氏が愛用した「イッセイミヤケ」に、海外メディアがあらためて注目(写真はイメージ)
  • スティーブ・ジョブズ氏が愛用した「イッセイミヤケ」に、海外メディアがあらためて注目(写真はイメージ)

「MIYAKE」がなかったら、「スティーブ・ジョブズ」は存在しなかった?!

   三宅一生氏といえば、ブランド「イッセイミヤケ」を立ち上げ、世界的に活躍した国際的デザイナーです。

   森英恵氏や故高田賢三氏、山本耀司氏など世界で活躍した日本人デザイナーは何人もいますが、三宅一生氏は独特の「作風」で異彩を放ち、ユニークな存在でした。各国メディアが速報で訃報を流し、次々と配信される特集記事からも、海外で高く評価されていたことがわかります。

Issey Miyake, Japan's fashion maverick, dies at 84
(日本ファッション界の「異端児」三宅一生氏が84歳で亡くなった:米CBSニュース)

   CBSニュースは、公開中の大ヒット映画「トップガン・マーヴェリック」に例えて、三宅一生氏の非凡ぶりを伝えています。時代の先をいく型破りなデザイン性だけでなく、「イッセイミヤケ」ブランドがビジネス的に大成功を収めたことと、次々と記録を塗り替えている同映画の興行成績とを重ね合わせているのでしょう。

   なかでも各国メディアがフォーカスしているのは、スティーブ・ジョブズ氏の「ユニフォーム」とも称される黒のタートルネックです。稀代のカリスマ経営者と天才デザイナーとのつながりが、多様な視点で報じられています。

   「Here's the real story of Issey Miyake and Steve Jobs' iconic turtleneck」(三宅一生氏とスティーブ・ジョブズ氏の象徴、タートルネックの真実:フォーブス誌)といった特集記事のなかで、とくに詳しい分析をしているのが米ニューヨークタイムズ紙です。

   「Why Steve Jobs chose this designer's turtlenecks?」(なぜ、スティーブ・ジョブズはこのデザイナーのタートルネックを選んだのか?)と題した長文の記事で、二人の出会いから友情、同じタートルネックを100着オーダーしたジョブズ氏の「I have enough to last for the rest of my life」(死ぬまで着続けられるほどたくさん持っているよ)といったコメントなどを詳細に紹介しています。

   記事では、三宅氏のコンセプトは「clothes for living」(生活するための服)であり、見た目の美しさや奇抜さだけではなく機能性を重視していると指摘。「ファッションにあまり関心がない人々をファッショナブルに見せる」ことに成功しており、その好例がジョブズ氏だとしています。

   たしかに、ジョブズ氏の名前を聞いてまず頭に思い浮かべるのが、「定番ファッション」だった黒のタートルネックとデニム姿でしょう。

   黒のタートルネックがジョブズ氏を「world's most recognizable C.E.O.」(世界一、ひと目でわかる経営者)に仕立て上げたという専門家の意見を紹介して、「もしイッセイミヤケの黒タートルがなかったら、ファッションアイコンとしてのスティーブ・ジョブズは存在しなかっただろう」とまで言い切っていたのが印象的でした。

もしも、Appleの制服が「イッセイミヤケ」だったら...?

   報道によると、スティーブ・ジョブズ氏は、もともと社員向けの「ユニフォーム」を三宅一生氏に依頼する目論見だったのが、社員の大ブーイングを受けて断念。仕方なく自分の「ユニフォーム」だけをオーダーすることになったそうです。

   もし、時代の先端を走るApple社の社員に、ファッション界の「異端児」が「ユニフォーム」をデザインしていたら、どんなスタイルになっていたのでしょうか? ジョブズ氏の「ユニフォーム構想」が実現していたら、それこそ時代を変えるムーブメントになっていたかもしれません。

   ジョブズ氏が導入した「毎日同じ服を着る」という習慣は、無駄な時間を節約してビジネスに集中するといった、ビジネス上の「戦略」でもありました。オバマ元大統領やフェイスブック(現メタ)創設者のザッカーバーグ氏も、同じテイストの服を着続ける「ユニフォーム戦略」を取り入れていますが、ジョブズ氏のタートルネック姿ほどのインパクトはありません。

   ジョブズ氏の黒いタートルネックは、体形や着心地など、ありとあらゆる要素を計算してデザインされたともいわれています。シンプルなデザインでどこか洗練されていて、機能的で着心地がよい...。二人の天才が造り上げた「世界で一番有名なユニフォーム」は、この先もずっと、歴史を変えたデザインとして語り継がれることでしょう。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、世界中を駆け巡った三宅一生氏の訃報から、「人や業績をたたえる英語」を学びましょう。

World-renowned Japanese fashion designer
(世界的に有名な日本のファッションデザイナー)
world-renowned:世界的に有名な

Issey Miyake, famed for his pleated style of clothing
(プリーツ状の服で有名な三宅一生氏)
famed for ~:~で有名な

Known for his practical design
(合理的なデザインで知られている)
known for~:~で知られている

   個人的には、「イッセイミヤケ」の代名詞とされる「プリーツプリーズ」は、コンパクトでしわにならず、洗ってもすぐに乾く機能性と、洗礼されたファッション性を両立した「奇跡の服」だと思っています。

   海外で着ていると「ミヤ~ケ~、ワンダフル!」と必ず褒められる優れもの。普通の人をファッショナブルに見せる「MIYAKE」と、普通の人にパソコンを浸透させたジョブズ氏。二人の天才に共通する「哲学」が伝わってくるようです。

(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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