なんで大阪やねん?!「世界の住みやすい都市トップ10」連続ランクイン! 英BBCも推す「外国人はなぜ大阪に住みたいのか」(井津川倫子)

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   英国の老舗経済誌「エコノミスト」が調査した「世界の住みやすい都市ランキング23年版」で、大阪が10位にランクインしました。この調査はコロナ禍の影響で中止をした2020年を除いて毎年行われているもので、世界中が注目する「恒例行事」になっています。

   今回、アジアの都市で唯一トップ10に入った大阪は、初登場した2018年から連続でランクインしている「人気の街」! そんな大阪の魅力に英BBC放送も注目しているようです。

   なぜ、外国人は大阪に住みたいのでしょうか?その背景を追ってみました。

「大阪は、家賃が手ごろで、外食が驚くほど安い!」の世界的評価に「なんでやねん?!」

   「世界の住みやすい都市」ランキングは、英誌「エコノミスト」の調査機関「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」がまとめています。

   世界173都市について、インフラ、医療、教育、政治・社会の安定性、文化・環境などの5つのカテゴリーに基づき、毎年2月から3月にかけて調査を実施していると公表されています。

   23年の調査で第一位に選ばれたのは、オーストリアの首都ウイーン。2年連続で首位を守ったウイーンは、100点満点中98.4点のハイスコアを獲得していますから、誰もが認める「住みたい都市ナンバーワン」だと言えるでしょう。そんななか、アジアでは唯一大阪がトップ10にランクインして話題になりました。

Osaka makes top 10 for the world's most liveable cities list
(大阪が、世界で最も住みやすい街で10位になった)
liveable:住みやすい

   同じく10位内にランクインした都市は、デンマークのコペンハーゲンやスイスのチューリッヒやジュネーブなどヨーロッパの3都市と、バンクーバーなどカナダの3都市やオーストラリアの2都市。ニューヨークなど米国の都市は一つもランクインしていませんから、アジアの都市として唯一10位に食い込んだ大阪の健闘ぶりが目立ちます。

   じつは大阪は、2018年にいきなり3位にランクインして以来、19年は4位、21年は2位と上位をキープしていました。この間、欧州や北米の人気都市がロックダウンの影響でランクを落としたことで大阪の順位が上がったとされていましたが、コロナ禍があけた22年も10位をしっかり死守。ライバルの東京がトップ10圏外(22年と23年は15位)に転落したことを考えると、大阪の人気が根強いことがよくわかります。

   さらに、今回、大阪は「政治・社会の安定性、教育、医療」の3項目で100点満点パーフェクトの評価だったと報じられています。「なんで大阪がパーフェクトなの?」「交通事故も多いと聞くけど...」といった声が聞こえてきそうですが、あくまでも「世界基準」の評価、つまり外国人の目から見た評価だという点がポイントです。きっと、私たちが見落としている大阪の魅力があるのでしょう。

   たとえば英BBC放送は、トップ10の中からわざわざ大阪を含む4都市だけを選んで、その魅力を掘り下げています。大阪在住外国人へのインタビューを通じて、「住んで実感した大阪の良さ」を紹介していますが、どんな「推しポイント」があるのでしょうか?

   他の都市と比べて大阪の「huge plus」(大きなウリ)だと強調していたのは「affordability」(価格の手ごろさ)でした。とりわけ家賃の安さが群を抜いているらしく、「水道代、インターネット代、管理費込みで家賃7万5000円」のアパートに住んでいるという、カナダ人の「大阪推しコメント」を紹介しています。

   大阪のどこに住んでいるのかは不明ですが、カナダのバンクーバーで同クオリティのアパートを借りると1.7倍くらいの家賃だそうですから、「世界基準」でみると、大阪の家賃はそんなに安いのかと驚きます。

   ほかにも、レストランなどで外食を「手ごろな価格」で楽しめることが大阪の魅力だとする英国人の「推しコメント」も紹介。美味しい食事を「at surprisingly budget-friendly prices」(驚くほど安い値段で)楽しめるとして、「大阪なら、毎日外食してもお財布の負担にならないよ」とアピールしていました。

   もちろん、「夜中でも女性一人で家に帰ることができる(米国人女性)」といった安全性も大阪の魅力だと紹介していますが、これまでと比べて「物価の安さ」を推す声が目立ちます。欧米を中心に歴史的なインフレで生活コストが高騰している都市が多いなか、円安効果もあって日本での暮らしに「手ごろ感」が広がっていることは間違いないでしょう。

   外国の人にとっては、ちょっと狭いけど快適な家に安く住むことができて、毎日のように安くて美味しい食事を楽しめて、夜遅くまで飲んで帰っても安全な街――。そう聞くと、外国人が大阪に住みたいという気持ちが理解できる気がします。円安のメリットを享受できない我々日本人はともかく、外国人にとって大阪は「パラダイス」なのかもしれません。

大阪の人は、ちょっと押しつけがましいけど、コミュ力は抜群!

   ここ数年の「住みやすい街ランキング」を見ていると、ニューヨークやボストン、ロサンゼルスといった米国の大都市や、ロンドンやパリのような人気観光地は上位に入っていないことに気がつきます。日本の都市でも北海道や京都、神戸はランク外ですから、「行ってみたい都市」と「住みやすい都市」は違うのでしょうか。

   「住みやすい都市」上位に選ばれた街は、比較的コンパクトなサイズです。トップに選ばれたウイーンもそうですが、歩いて回れるほどの規模感で、大きなデパートやオフィスビル群はあまりありません。地下鉄やバス、電車などの公共交通機関が充実している点も、ランキング常連都市に共通している特徴です。

   また、劇場やコンサート会場、美術館など文化施設が多いなど、歴史を身近に感じられる環境が評価される傾向にあるようです。ちなみに、大阪は、「京都や奈良などの古都に気軽に行ける」点が高く評価されていました。

   さらに、ウイーンのカフェ文化や大阪の「粉もん文化」のように、手ごろな価格でおいしいものを楽しめる点も重要な要素のようです。もしかしたら、「高くてまずい」が代名詞の英国の機関が調査していることも、関係しているのかもしれません。

   個人的には、外国人にとって一番の大阪の魅力は、関西人のコミュニティー能力の高さだと思っています。相手が誰でも物おじせずに、関西弁を駆使して会話をしようとする押しの強さは天下一品!

   実際、英BBCは、「大阪の人は、ちょっとintrusive(押しつけがましい)けど親切で人懐っこい」という、大阪在住の英国人のコメントを取り上げていました。相手が英語をしゃべっていようがおかまいなく、ぐいぐい関西弁で話かけるくらいの押しの強さが、「世界基準」ではちょうどよいのだと思います。

   また、「エコノミスト」の調査が、冬に行われていることも大阪にとってプラスに働いていると推測します。夏の蒸し暑い時期や梅雨の時期に調査をしてみたら、違う結果になっていたかもしれません。暑さはともかく、日本の湿気は耐えられない外国人の方は多いことでしょう。

   来年も大阪が「住みやすい街」上位をキープできるかどうかわかりませんが、「京都に近い」「食事が美味しい」「コミュ力が高い人が多い」といった大阪ならではのテッパン要素に円安の効果が加わると、「向かうところ敵なし」の雰囲気が漂います。

   逆に、物価上昇や円安に悩む私たちにとって、「住みやすい街」はどんどん少なくなっているのでしょうか。少し悲しい気持ちになってきました。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「affordable」(価格が手ごろ)を使った表現をご紹介します。ビジネスの場面でもよく使う言葉です。

The best affordable performance cars
(手ごろで性能が良いおススメの車)

More remote workers are willing to move to find affordable housing
(多くの在宅勤務者は、より手ごろな物件を求めて引っ越しをしたいと思っている)

This is an affordable price!
(これはお手頃な価格ですね!)

   「住みやすい都市」の顔ぶれは、世の中の動向を反映して毎年少しずつ変わっています。最近では、ストライキやデモが多発する都市や紛争が続いている都市は順位を下げていますから、「こんな街に住んでみたい!」という憧れだけでない様子。

   台風や災害が多い我が国ですが、「世界基準」では上位にランクインするのですね。世界を見る視野が、少し広がった気がしました。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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