冷房による体の冷えや夏バテで、風邪かなというときがある。そんな場合、月1回以上AIを利用する人のうちAIに相談するという人が4割近くいるという。また、AIに「新型コロナ」を提示された人でも医療機関を受診した人は37.2%だった。
そうしたことが、塩野義製薬が行った「風邪症状時のAI利用と医療受診に関する調査」でわかった。この調査は、夏に流行する感染症に対する意識や対策の実態を把握するために実施された。
AIの相談内容で2番目に多い「体調不良時の症状や対応策」
調査は2026年7月10日~12日の3日間、インターネットで実施された。対象は、20~60代の男女10000人と、この1年以内に風邪症状を感じたときにAIに相談したことがある20~60代の男女1000人(性・年代別 各100人)。
AIを使う頻度については、42.7%が月1回以上と回答した。その月1回以上AIを使う人に相談内容を聞くと、「勉強や仕事の補助として、調べものやわからないことなどについての問い合わせ」が71.8%と最多。その次に多いのが、「体調不良時の自身の症状や対応策に関する相談」で46.7%。年齢別にみると、とくに20代(51.6%)、30代(53.7%)という若い層で、半数を超える人がAIに相談していることがわかった。
体調不良の中でも、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、倦怠感といった「風邪の症状を感じたときの症状や対応策に関する相談」をAIに投げかけるかを聞いたところ、全体の38.0%が相談すると答え、こちらも20~30代の半数近くが相談すると回答している。
風邪症状の場合、若い層は熱を測るよりまずAIに相談
では「風邪症状」を感じたとき、まずどんな行動をとるのか。ここ1年以内に、風邪かなと思って、症状や対応策をAIに相談したことがあると答えた1000人に質問した。すると風邪症状を感じたとき、最初にとる行動が「AIに相談する」で31.5%。症状を詳しく知るため「熱を測る」は22.3%で2番目なのが興味深い。世代間で傾向が違って、20代、30代は「AIに相談」がトップなのに対し、50代、60代は「熱を測る」がもっとも多かった。
さらに風邪の症状を感じたときに、「AIに相談したことがある」と答えた人の約7割が、「相談相手として、AIより医師の方が信頼できる」と回答。ただ、少ないとはいえ約2割が「あまりそう思わない」、約1割が「そう思わない」と回答しており、考えさせられる結果となっている。
AIに相談する目的についても詳しく聞いている。「自宅での対処法を知りたい」という回答がいちばん多く37.2%、「どんな疾患の可能性があるか知りたい」が34.5%。「相談して安心したい、不安を軽減したい」が31.5%、「医療機関を受診すべきか判断したい」が5番目で28.9%、「医療機関を受診しないですむ方法をみつけたい」は21.1%で10番目だった。
AIに新型コロナを提示されても「受診しない」が6割以上
やや心配な結果もある。それはAIから病気の可能性を提示された場合、どんな行動をとるかという問いに対する答えだ。
AIに相談して感染症の可能性を提示された人の内訳を見ると、「風邪」が62.1%、「インフルエンザ」が30.6%、「新型コロナ」が21.5%だった。ではその人たちが、その後どういう行動をとったのか。実際に医療機関を受診した人は、「風邪」の場合は20.6%、「インフルエンザ」は38.2%、「新型コロナ」は37.2%だった。インフルエンザや新型コロナの可能性が提示されているにもかかわらず、医療機関を受診しなかった人が6割以上を占めている。
「新型コロナ」の可能性を提示されたが、医療機関を受診しなかった結果、その後どうなったかを聞くと、「2~3日症状が続いた」が32.6%、「4~7日症状が続いた」が29.6%で、約6割が2~7日症状が続いたと回答した。
医師は「AIの情報で自己判断する人がいる」と危惧
さて、上記のような調査結果を医師は受け止めているのか。一般病院および医院、診療所、クリニックで治療にあたる医師100人に見解を聞いている。
まず、「生活者の日常にAIが浸透することによる患者さんの医療機関受診行動への影響」を聞いたところ、68.0%が「影響あり」と回答。具体的な影響としては、「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」と答えた医師が58.8%ともっとも多い。
次に、「風邪の症状を感じた患者さんが受診前にAIに相談すること」を医師はどう考えているかと聞くと、84.0%は「感染症は似ている症状が多いため、種類や重症度をAIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」と答えている。「いろいろな感染症の可能性が考えられるので、すぐに医療機関を受診してほしい」と答えた医師は、66.0%。受診前のAI相談は、「医療機関への受診遅れにつながる」と危惧する医師が58.0%いた。
では、医師が考える望ましいAIの活用方法とはどのようなものなのだろう。多い順に列挙すると、「受診すべき診療科や相談先の目安を知るため」(86.0%)、「生活上の注意点を確認するため」(86.0%)、「受診前に不安な点や質問事項を整理するため」(85.0%)。一方、望ましくないAIの使い方として6割以上の医師が指摘するのが、「薬を飲むかどうかの判断に使う」「疾患の自己判断のため」である。
体調管理のためにAIを利用することに関して、74%の医師は「有効である」と考えていることも明らかになっている。また、風邪の初期症状時において、「患者は、医師よりAIの方が相談しやすい」と76%が答えている。ただ、「AIの意見をうのみにせず、参考程度にしてほしい」(88.0%)、あるいは「AIに相談した内容を医師に伝えた方がよい」(72.0%)と注意を促している。
AI相談で受診せず病状が悪化したケースも
この調査を監修した、いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長は、今回の調査結果に次のようなコメントを寄せている。
「AIは早くて従順なアシスタントです。しかしながら、一般的な生成AIは、医療の専門家による診察や検査に代わるものではなく、提供される情報には限界があり、また、その責任をAIは負ってくれません」
伊藤院長によれば、AI相談で強く受診を勧めないからと様子を見た結果、病状が悪化して後日受診して新型コロナと診断されるケースがあるなど、ときに誤った情報や不正確な回答を示すことがあるという。さらにこう続ける。
「AIの回答だけで診断や治療方針を判断することには限界があります。特にCOVID-19やインフルエンザでは、発症早期の適切な検査・診断・治療が重要です。我々医師は、症状だけでなく、診察や検査で得られる多くの情報を総合して診断しています。生活者の皆さんには、AIを参考情報として上手に活用しつつ、気になる症状がある場合は、早めに医療機関への相談をご検討ください」
治療の鉄則は早期診断・早期治療。それが可能になるようなAI活用をしていきたい。