季節の変わり目、あふれる健康情報にどう向き合う? 「自分の体を観察する」という選択

厳しい暑さを経て、気温や天候が変わりやすくなる10月。体調の変化を感じ、食事や睡眠、運動などをあらためて見直す人もいるだろう。

一方、SNSを開けば、「これを食べればいい」「この運動が効果的」といった健康情報が次々と流れてくる。選択肢が増えた半面、「結局、自分には何が合っているのか分からない」と迷う人も少なくない。

合同会社MEYOUが運営する「からだ実験室」は、特定の健康法を正解として勧めるのではなく、自分自身の体調や生活の変化を観察しながら、自分に合う方法を探していく場だという。

季節の変わり目で体調管理を意識しやすい今、健康情報とはどう付き合えばいいのか。代表の藤林由子氏に、自分の体を知ることの意味について聞いた。

「正解探し」に疲れてしまう人たち

「これを食べれば痩せる」「この運動をすれば調子がよくなる」。

健康に関する情報は分かりやすいほど広まりやすい。

一方で、人によって生活習慣も体質も異なる。睡眠時間や仕事の負担、食事の内容、運動量、ストレスの感じ方も同じではない。

ある人に合った方法が、別の人にもそのまま当てはまるとは限らない。

藤林氏は、健康法を次々と試し、「続けられなかった」「効果が感じられなかった」と自分を責めてしまう人もいると話す。問題は、健康情報が多いことそのものではない。

「正解は外にある」と考え続けることで、自分自身の感覚や変化に目を向けにくくなることだという。

からだ実験室では、特定の方法を正解として提示するのではなく、まず自分の状態を観察することを重視している。体調はどう変化したのか。よく眠れた日は何が違ったのか。食事や運動を変えたとき、気分や疲労感にどのような変化があったのか。

そうした小さな違いを記録しながら、自分に合う方法を探していく考え方だ。

自分自身を「研究対象」にする

同事業では、参加者を「自分のからだの研究者」と表現している。少し大げさにも聞こえるが、やっていること自体は比較的シンプルだ。

食事、睡眠、運動、生活リズムなどを変えたときに、自分の状態がどう変わるかを見る。

一度試した結果だけで判断するのではなく、ある程度の期間続けながら、変化を観察していく。

藤林氏は、こうした試行錯誤を一人で行うのではなく、対話しながら整理することに意味があると話す。カウンセリングでは生活背景や本人の希望を聞き、特定の方法を一方的に勧めるのではなく、複数の選択肢を提示する。

そのうえで、何を試すのかは本人が決める。

また、パーソナルトレーナーが関わる「からだの仕組み探究部」なども設け、体の使い方や生活習慣を考える機会をつくっているという。医療機関や専門家との連携も進めているとしているが、こうした取り組みは医療行為そのものではない。

体の不調には病気が隠れていることもある。自己観察だけで判断せず、必要な場合には医療機関を受診することが前提になる。

「自分に合う」をどう判断するのか

自分の体を観察する考え方には、分かりやすい一方で難しさもある。体調は日によって変わる。

睡眠不足だったのか、食事の影響なのか、仕事のストレスなのか。複数の要因が重なっているため、「これをしたから調子が良くなった」と単純に判断できないケースも多い。

本人の感覚も一定ではない。

そのため、「自分に合っている」という感覚だけで、健康上の効果まで判断することには慎重さが必要になる。からだ実験室でも、こうした個人の試行錯誤を科学的な医療判断の代わりにすることを目的としているわけではないという。

むしろ、日常の中で変化に気づき、自分の状態を言葉にできるようにする。

医療機関を受診する際にも、「最近なんとなく調子が悪い」だけではなく、どのような変化があったのかを整理できれば、相談の材料にはなる。健康情報をすべて疑うのでも、すべて受け入れるのでもない。

一度立ち止まり、自分にとって必要かどうかを考える。その習慣をつくることが目的の一つだという。

ヘルスケア事業から子ども支援へ

MEYOUでは、個人向けのヘルスケアだけで事業を完結させない構想も持っている。

同社によれば、「からだ実験室」の参加口数が500口に達した段階から、収益の一部を子どもに関する活動へ充てる仕組みを予定しているという。

将来的には、参加者が「子ども相談室」の運営や支援に関わる構想もある。現段階では、あくまで今後の計画だ。そのため、すでに地域や子ども支援の仕組みとして機能していると評価する段階ではない。

ヘルスケア事業と子ども支援をどうつなげるのか。参加者が継続的に集まり、収益を確保できるのか。支援する側の人材をどう育てるのか。構想を実際の仕組みにしていくには、いくつもの課題がある。

一方で、健康を個人だけの問題として終わらせず、その先の社会との関わりまで考えようとしている点は、この事業の特徴の一つだ。

健康情報と少し距離を置く

健康に関する情報は、今後も減ることはないだろう。新しい食事法や運動法が紹介され、そのたびに「これが正解」と感じるものも出てくる。

しかし、すべてを試すことはできないし、誰かに効果があった方法が自分にも合うとは限らない。だからこそ、自分自身の生活や体調を見ながら判断する視点が必要になる。

「からだ実験室」の取り組みは、健康法そのものを提供するというより、健康情報との付き合い方を考える場に近い。

誰かの正解をそのまま借りるのではなく、自分で観察し、必要なら専門家にも相談しながら考える。情報が多い時代だからこそ、そうした一見遠回りな方法にも意味があるのかもしれない。


【取材協力】
合同会社MEYOU(からだ実験室)
代表:藤林 由子(通称アリス)
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