限りなく「祈り」に近い「魂の歌」 下地勇に参った!

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『3%』
下地 勇/2008年1月23日発売
TECI-1168/2500円
IMPERIAL RECORDS


   これはあくまで私見だが、音楽には2種類あると思っている。ひとつは聞き手を想定する音楽、ひとつは想定しない音楽。聞き手を想定するのは、普段耳にする巷に溢れる「商品としての音楽」といえるかもしれないが、聞き手を想定しない音楽という概念は、どちらかというと「宗教的な祈り」に近いものかもしれない。風呂場で鼻歌を歌う場合も、客は想定しないが、歌う本人は満ち足りるだろう。それはある種の祈りと宗教的カタルシスに近い。

   イヌイット、アメリカインディアン、マオリといったシャーマニズムを根底に生きた人々の歌や音は、聞き手を想定しない音楽の代表的なものだろう。

   シャーマニズム的な音楽というものは、商品としての歌・音楽の中にも時折顕れてくる。そしてそれは、衝撃を伴う。魂の音などと言われたりする。要するに歌っている本人はそんな意識はないのだが、その音楽を聴いた人々の中で、音が単なる音ではなく、心振るわせるバイブレーションとなって伝わるとでも言えばいいのか。例えばどんな音楽だといわれても、答えようがない。ひとり一人違うものだろうから。

   ただ、筆者にとって衝撃を伴ったCDがある。シャーマニズム的というと怒られるかもしれないが、限りなく祈りに近い音。

   下地 勇の『3%』がそれだ。下地は宮古島出身のギタリストでありヴォーカリスト。しかも彼は、宮古島固有の言葉で歌う。内容は言語としては伝わらないのだが、イマジネーションはビンビン伝わる。宮古島固有の言葉で歌うのだが、メロディーやリズムは、ブルースだったりボサノバだったりフォークだったりカントリーだったりする。ロックでもある。詞の内容も、対訳風に標準語訳がついていて理解は出来るが、むしろ見ない方が良いくらいのもの。

   下地の歌は、時にはまるで風、時にはまるで嵐のように心に入り込んでくる。入り込んで離れていかない。正直、参った!


【3% 収録曲】
1.3%
2.信念の道 西へ
3.アヤスキ・ミドゥン
4.誇り
5.新品上等伝説
6.イヌツ
7.Yapai Yapai(アルバム・バージョン)
8.Interlude 1
9.ヤドゥバス
10.Mr.カマの苦労
11.製糖屋
12.The二者択一
13.ヤドゥバス・リターン
14.俺は歌っている
15.待つの木物語
~ボーナス・トラック~
16.おばぁ(2007シングル・バージョン)


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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